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プレ・プロダクション・ノオト(14)

本日(2月24日)、映画『Kay』と『終点は海』(両監督:鯨岡弘識)の併映劇場公開情報が解禁された。4月9日から、東京・下北沢トリウッドで、日本凱旋劇場公開となります。両作品は鏡像関係となる物語で、二作併せて見て頂ければ、ある世界観が浮かび上がってくるはずです。先ずは観て頂ければと願うばかりです。配給は私、Raita Nakashima's Cinemaです。さて、気候はどうやら春。三月になると思い出すのが数十年前の東京・神田の居酒屋。集英社の雑誌編集長たちと呑み語らっていた。時折、寒風が吹いていたが、薄手のコートを背もたれにかけ、日本酒をかなり呑んでいた。ほろほろ酔い気分で酩酊しガラガラ引き戸を開けるや、神田の町はすっぽりと雪化粧をしていた。音一つせぬ神田の街がそこにあった。真夜中の一瞬のドカ雪は、体内のアルコールを一気に蒸発させ、望洋と生きていた先ほどまでの自分がきっぱりと洗い流されたようだった。十数年前の京都・祇園のバーで知人のホルン奏者と呑み語らっていた。何種類かのスコッチ・ウィスキーを楽しんだあとドアを開けるとぼた雪が大量に舞っていた。雪に霞む祇園の夜は幻想的で、夢の国に迷い込んだようだった。「映画のような」という形容詞があるが、心から感動する情景、数秒前の私からすっぽり脱皮したような心情になる映画には昨今出会っていない気がする。普段着の観客が日常を脱ぎ捨て、生身の魂をみつめるような情景とは何だろう。それは、たぶん、何でもない筆致だが、その画に込められた監督のみが耕してきた何ものかなのだと思う。さて、鯨岡弘識監督の『Kay』と『終点は海』をご堪能ください。中嶋雷太 オフィシャル・サイトは、https://kaytosea.studio.site/


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