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ワードローブの森の中から(60)「猛暑が続くから、ビーサン」

 以前にもビーサンの話を綴ったことがあるような気がしますが…。今回はビーサンのお話です。
 今夏は猛暑日が続き、朝昼夕夜お構いなしにスコールのような雨が突如降り、深夜になっても30度近い気温でエアコンはつけっぱなしです。
 にも関わらず、せっかくの夏なのに、しかも三年余りの新型コロナ禍のマスク生活が終わった夏なのに、何故だか海に行きたいとは思わず、気づけばお盆が終わっていました。
 振り返れば、その年々の夏の気象状況次第で、服装もかなり変えてきました。<冷夏>ではTシャツの上に開襟シャツか薄手のパーカーを羽織り、綿パン。足下はニューバランス。<平均的な夏>だと、Tシャツ一枚かタンクトップの上に開襟シャツで半パン、足下はニューバランスかキーンのサンダル。そして今夏のような<猛暑続きの夏>はTシャツに半パン、足下はビーサンになります。
 しっくりとくるビーサンがなかなか見つからないのがビーサンだと諦めていたのですが、数年前の秋、キャンプ帰りに立ち寄った大型スポーツ店でバーゲン・セールしていたのがadidasの黒のビーサンでした。この値段ならと気軽な気持ちで購入し、秋冬春を超えた次の夏、日常使いに履いてみると、このビーサンがピタリと私の足にはまり、それ以来お気に入りのビーサンとなりました。
 そして、<猛暑続きの夏>の今夏、フル稼働となり、私の足の甲にはビーサン焼けがクッキリと浮かんでいます。
 突然の豪雨が予想されていても、傘を片手にビーサンを履き、ふらふらと朝カフェに向かいます。ひとたび豪雨になると、ニューバランスやキーンのサンダルだと、足裏や指先がグチュグチュとなり不快感を感じたまま帰宅することになりますが、ビーサンなら大丈夫で、濡れれば濡れたで平気でいられます。
 足の不快感から開放されると、「今日も不安定な天候です」と暗いトーンの天気予報士の声も馬耳東風で、猛暑を楽しもうかとさえ思ってしまいます。
 さて、問題はここからです。
 足下の開放感に慣れてしまった私は、靴下を履きニューバランスを履くのがどうやら億劫となっています。季節は秋へと変わり、半パンからデニムやカーゴパンツになり、上着も長袖シャツやロンTになると思うのですが、問題は履き物です。
 このビーサンの開放感に慣れてしまった私が、どのタイミングでビーサンを脱ぐのか…。
 昔、湘南に住んでいる知り合いのおじさんが「海の男は冬でもビーサンさ」と教えてくれたことがありますが、そのときは冗談だろうと思っていたものの、今年は、このままゆくと、木枯らし一号が吹くまではビーサンのままかもしれません。
 足下だけ真夏の男、ですね。
 木枯らし一号が吹くころに、足下だけ真夏男がいたならば、それは私だろうと思います。中嶋雷太

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