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私の好きな映画のシーン(43)『狼たちの午後』

 「雷太。あの、アルの目の演技は、現場で作ったんだよ」と故ピアソンさんが教えてくれました。祇園で呑んだ夜でした。それだけ。それ以上語ることもなく、そして私から聞き返すこともない会話でした。
 「狼たちの午後」の脚本家でアカデミー賞を受賞され、当時はアカデミー協会の元会長として来日して頂き、映画についてかなり話をしましたが、約20年経過し一番心に残った言葉が、この言葉でした。
 それまで、何度も見たはずの「狼たちの午後」でしたが、ピアソンさんと語らったあと改めてこの作品を見ると、確かに「目の演技」が凄まじいことが分かりました。「ゴッド・ファーザー」に繋がるアル・パチーノの目の演技です。
 映画製作にまつわる様々な技術が発展しましたが、人間が何かを作り出すことはアナログでしかなく、だからこそ深く広く、大変で面白いのだと思います。浅く薄い優しさや正義話、テクニックだけの話ではなく、その面白さを語れる映画人が増えることを願っています。
 本作では、一緒に銀行強盗に入った親友(ネタバレするので?です)が救急車に運ばれる時のアル・パチーノの「目」のシーンが心に焼きついています。大好きなシーンです。故フランク・ピアソンさんと、また、映画の話をしたいという叶わぬ夢を抱いています。
 最後となりますが、原題は"Dog Day Afternoon"で「真夏の一番暑い午後」という意味だと思います。中嶋雷太

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