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『アンの青春』読了

旧ブログから引っ越し。
『アンの青春』
ルーシー・モード・モンゴメリ著
松本侑子訳
集英社文庫(平成17年09月25日)
H281113-H281203
 愚にも付かない感想を書くより、抜き書きをして、自分への覚え書きとしたい。
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「私は、人生に美しいものを加えたいわ」アンは夢見るように言った。「人に知識を与えることには、さほど興味はないの。もちろんそれは何よりも崇高な目的だけど、でも私は、私がいることで、より楽しいときを過ごしてもらえたら嬉しいの。私が生まれていなかったら、決して味わえなかったさりげない喜びや幸せを、まわりの人に感じてほしいの」
81頁
♯アンの面目躍如。
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「そうよ」アンは穏やかに言った。「でも、マリラが義務から子どもをひきとるなら、私も義務から縫い物をするわ。好きではないことをしなければならないというのも、ほどほどなら、ためになるわ」
84頁
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朝ごとに、すべては新しく始まり
朝ごとに、世界は新しく生まれ変わる
アンは服を着ながら歌った。
143頁
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「誰だろうと理想どおりにはいかないものですよ」アラン夫人はため息をついた。「でもね、ローウェルも言っているわ、『失敗は罪ではない、低い志こそ罪である』と。私たちは理想をかかげ、それを果たすように努力しなければならないの、たとえ一度もうまくいかなくても。理想のない人生は、虚しい営みでしかないわ。理想があるからこそ、人生は偉大ですばらしいものになる。アン、あなたの理想をしっかり持ってね」
185頁
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「そうね、でも私たちはみんなあやまちをしますよ、だから失敗はもうすんだことになさい。間違ったら反省し、そこから学ぶのは大切だけど、未来にひきずってはいけないわ」
186頁
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「アンにはぜひ大学へ行ってもらいたいわ。でも、進学できなくても、不満に思ってはいけませんよ。人はどこで生きようと、結局は、自分だけの人生を生きるのです。大学は自分らしい生き方を手助けしてくれるだけですよ。人生は広くもなれば狭くもなる。それは、人生から何を得るかではなく、人生に何をそそぎこむかにかかっているの。人生は豊かで充実したものですよ――ここで生きようと、どこで生きようとも――、人生の豊かさと充実にむかって、どう心を開くか、それを学びさえすればいいのよ。」
187頁
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「ニワトリの羽をむしるのは嫌いだけど」アンはマリラに語った。「手先がしているだけだもの、気持ちは別なところにあるから助かるわ。手はニワトリをむしっても、心は天の川(ミルキー・ウエイ)をさまよっているのよ」
「どうりで、いつもより羽が床に散らかるこった」マリラが注意した。
197頁
♯アンとマリラの対比が微笑をさそう
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「すばらしい考え方ね」アンは夢中になって言った。「美しい生き方が、その人の名前を美しいものに変えるのね。最初はきれいな名前に思えなくても――やがてまわりの人たちは、その名を聞くだけで、優しく心地よい気持ちになって、名前がもともとすてきじゃなかったことなんて、考えもしなくなるんだわ。ダイアナ、どうもありがとう」
270頁
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 マリラは、デイヴィにかまわず話を続けた。「ずっと気になっていたんだが、スティーヴン・アーヴィングとラヴェンダー・ルイスはどうして仲違いしたんだろう。二十五年前はちゃんと婚約してたのに、突然、破談になったんだよ。何があったか知らないが、よほどひどいことがあったんだね。それからアーヴィングは合衆国へ行ったきり、一度も帰っちゃ来ないんだから」
「後になってみると、全然たいしたことじゃなかったかもしれないわ。人生は、小さなことのほうが、大きなことよりもずっと厄介をひきおこすのよ」人生への深い示唆が、ふとアンにひらめいたのだった。それは経験をつめば得られるわけではなかった。
273頁
♯この洞察には本当に感心した。
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「アン、そんなに気の毒そうな顔をして……まだ十七歳だから、そんなに同情してくれるのね。だけど、心配しなくていいのよ。胸がやぶれるような失恋はしたけど、私は幸せよ。満足しているわ。もし失恋で本当に心がはりさけるというなら、スティーヴン・アーヴィングがもう帰ってこないとわかったときは、たしかに胸がはりさけそうだったわ。でもね、胸がはりさけるといっても、実際は小説みたいにひどいことにはならないのよ。歯痛みたいなものよ。アンなら、そんなたとえはロマンチックじゃないと思うでしょうね。とにかくたまにはずきずき痛んで眠れない夜もあるけど、その合間は何ごともなかったように、人生や、夢や、こだまや、ピーナッツ・キャンディを楽しめるの。アンたら、今度はがっかりして……私に興ざめしたのね。ついさっきまでは、私が悲劇的な過去に苦しみながら、精一杯隠して、人前ではにっこりしていると思っていたんでしょう。だけどそれが現実の人生のどうしようもないところであり、もっともすばらしいところでもあるの。人生は、人をみじめなままにしておかないの。たえず慰めようとするの、たとえ不幸な気分にひたって感傷的になろうと思っても、人生は私たちを明るくするのよ。」
284頁
♯すばらしい。
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「アンはとっても優しいね。今日、ミルティ・ボウルターが石板にこんなことを書いて、ジェニー・スローンに見せたんだよ。
『薔薇は赤い、スミレは青い
砂糖は甘い、あなたは優しい』って。
ぼくもアンのことを、こんなふうに思っているんだよ。」
318頁
♯デイヴィ・キースの言葉。悪ガキなのに憎めない男の子、という設定がこの辺に表現されている。


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