文春野球コラムに代打で登場 顛末記6

エピソード6 大失態、赤っ恥の朝

決定稿を編集部に送ると、翌日校正の仮組が送られてくる。深夜になると言われていたので、昼間は時間があると思い、今度は、おねえちゃん(オノヤマコズエ。花とゆめ関連で活動中!)のマンガの締め切りで仕事場に手伝いに行くことにした。

わたしどもは、スマホを持っていない。欲しくないんじゃなくて代金を払う余裕がないので、持てないんだけど・・・普段はパソコンのみ。家にいないため、紹介文についてのやりとりが残っていたので、えのきど監督には、携帯のメルアドを伝えておいた。携帯はメールと電話しかできないけれど、紹介文のことだけなら大丈夫だろうと思っていた。

スクリーントーンを貼るのに、だんだん目がチカチカしてきた頃、監督から連絡があり、おねえちゃんの名前を出していいかということと、タイトルは小野山さんのつけたのでは、抽象的すぎて読者に読んでもらえないから、その旨、編集に変えてもらいなさい、とのこと。

「はい、わかりました」と返事した。

9時ごろマンガの手伝いを終えて、歩きながらラジオを聞いていた。野球中継とファイターズDEナイト。番組のこずゑちゃん宛に明日のコラムについてファンが書くからと宣伝してもらえませんか?とメールしてあったので、読まれるかなあとドキドキしていた。結果は、「文春コラムが土曜日にまたありますよ」というお知らせだけだった・・・。

ちょっぴりがっかりしながらも、土曜日って明日だよなあ。ほんとに大丈夫かなあと緊張が高まってきた。家に帰ると10時ごろで、すぐにパソコンを立ち上げると、ツイッターにコラムの予告が上がっていた。

あ!出てる出てる! とたんにテンションが上がりまくる。

しかし、よく見ると、えのきどさんに変えてもらいなさいと指示されていたタイトルがそのまま掲載されている。

え?どうしよう?どうしたらいいのだろう?

編集に言いなさいと言われていたから、朝に挨拶のメールがきていた編集の方に連絡してみる。

が、そのすぐ後に別の担当さんから仮組のプレビューが送られてきて、タイトルは公開されたときの「リーグ戦再開!ファイターズはこのやり方で優勝します宣言!」になっていた。

あれ?何かの行き違いなのかな?

えのきどさんは、タイトルが決められなければ、編集さんがつけてくれるからと前に言ってたし、やっぱりこのタイトルは弱いからと向こうでつけてくれたんだな、とほっとした。

この時点で、わたしはすでにものすごく興奮して舞い上がっていた。ネットに上がるまでは戦略上、誰にも言わないでねとツイッターの担当さんに始めから言われていたので、我慢に我慢を重ねていたし、もう言ってもいいんだあ!と思ったら嬉しくて、嬉しくて、ツイッターやFBではしゃいで踊りまくっていた。

ひとしきり騒いで、そんなことしてる場合じゃなかった!とプレビューの修正にかかる。興奮と緊張で、まったくまともな状態ではなかったが、校正は翌日の朝までに返してくださいとのことだし、ここからはわたしが一人でやるしかないのだ。

が・・・いざやろうとしたらやり方がわからない・・・・。

そうだった。ネット記事の仮組なんて、見たことなかったのだ。

これってどうやって校正するのだろう? 全文コピーすればいいのかな?でもどうやってコピーするんだろう・・。

いやネット上の文章のコピーの仕方はもちろんわかるんですよ。でもプレビューですでに画面上の記事の形になってるものを写して、さらに修正するという作業はやったことがない。

編集さんに聞いて、全文コピペでやり始めたが、これがまた操作に慣れていないから、同じことを繰り返しちゃったり、保存したページを消してしまったり、まさに四苦八苦・・直す箇所は数カ所しかなかったのに、気が付いたら夜中の二時半になっていた。それでも、これで大丈夫かなというところまでやって、返送した。

一旦眠ったが、すぐに目が覚めてしまった。校正をもう一回見直すと、えのきどさんが書いてくれた紹介文にあったわたしの履歴が間違っていることに気がついた。わたしがファイターズと関係ないことだと思って、深く考えずに不正確な経歴を伝えてしまっていたのだ。

あわてて直してもらうように編集さんに伝え、その他見つけた脱字なども伝え、送信完了とした。

その旨をえのきどさんにも伝えなければと監督にメールした。

四苦八苦してなんとか校正原稿を送り返したこと、タイトルは変えてもらってあったこと、経歴について不正確なことを伝えてしまっていたこと、編集さんに直してもらうよう伝えたこと。

朝日の中で、ちゃんとやれたかな、大丈夫かなと心配しながらも、やっと終われた、ありがとうございます。という清々しい気持ちで・・。

返信はすぐもらえた。

紹介文は編集が直すものではない。

タイトルは、小野山さんのではダメだから、編集さんと相談して変えました。

校正した仮組は監督に送り返すことになっている。送信してください。

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(五度目の内容を解釈しようとする表現)

え?え?どういうこと?

動揺してしまって、すぐに反応ができない。仮組を転送するやり方も思いつかない。リンクのアドレスを張り付ければいいのか?

戸惑っているうちに、携帯が鳴った。

見ると、えのきどさんから何本もメールが入っている。昨日の夜、タイトルのことや予告のことについて、連絡をくれていたのだ。全然気がついていなかった。自分で10時まではこちらに連絡くださいと言いながら、家に帰ってパソコンを立ち上げたら、すっぽり頭から抜けてしまっていた。

メールが来ていた時間帯は、歩きながらラジオを聞いていた頃だ。

「メール読めてないんですね」

そのとおりです。

あっという間に、監督が入稿作業をしてくれた。

情けなくて、申し訳なくて、恥ずかしくて、泣けてきた。(思い出している今も涙が出ている…)

最後の最後に何をやってるんだ。この二ヶ月、この日が来るのをあんなに楽しみしてたのに。あんなに頑張ったのに、全部自分で台無しだ。

家に帰ってきてから、ただただ興奮して舞い上がっていた自分。思い込みだけで行動していた自分。

何よりも、他の書き手が書いた原稿に確認もせずに修正を入れるという、物書きのモラル、常識として、やってはいけないことの初歩の初歩を外したことが、情けなかった。なんたる不覚。

せっかく声をかけてくれ、いろいろ教えてくれていた、えのきどさんに失礼なことをしてしまって、穴があったら入りたいとはこのことだった。

もうすぐ、午前11時には、コラムが公開されるというのに。

わたしは、一人、果てしなく落ち込んでいたのだった。

         

         上がったり下がったり、終わりはどっちだ? つづく





















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