文春野球コラムに代打で登場!顛末記5

エピソード5 「大事なとこが書けてない」

原稿を送って、とりあえず良しと言われたあと、えのきど監督から最終的に決めるためのアドバイスが届いていた。例によって、まーくん(猫)に起こされた夜半の二時半ごろ。ぼーっとパソコンを開いたときだ。

「あとは微調整だけ」と先のメールにはあったから、細かい語句の扱いとか表現とかの直しなのかなと思っていたら・・・。

「この原稿は完成されています。」

「でも、大事なところが書けていない。」

このままでは、読者にとっては、最後の部分は唐突なポエムになってしまうから読者の立場にたってポエムと読者をつなぐための

「エンジンを搭載してください」

「でも、このままでも大丈夫ですけどね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(四度目の内容を解釈する時間の表現。長め)

どこが微調整なのかよ・・・・。

「大事なとこが書けてない」原稿なんて、全然大丈夫じゃないじゃん!

ポエムで悪かったな!

「完成されています」ってどういう意味なの??

ここまで言われて、このままでも大丈夫にできるわけないじゃん!

有頂天になって眠って起きたら、奈落に落ちていた。

「最後までがんばってみます」

と返信した。眠れないまま、朝の7時に仕事に出かけた。

「完成されている」というのは、頭からお尻まで文章として成り立っているという意味で、自分でも直しようがないくらい直したから、どこどこがこうだからって取り立てて指摘するべき部分は、ないというだけだ。その成り立ってしまっているものに「大事なとこ」が欠落しているというならば、それは中身が何もないってことじゃないの?

中身のない文章を、そのまま載せることなどできるはずがない。エンジンを書き入れるなら、その選ばれた中身のために書き換えるしかない。ぼんやりと頭を巡らしながら働いて、家に帰った。

昼ごろだったから、出来たとしても夜になる。その旨、えのきど監督にメールすると、一から書き直すのは大変だから、一場面、演劇のシークエンスのように入れればいいのでは、と再び助言があった。

さすがにわたしも全部書き直そうとは思ってなかったけど。『風に向かって胸を張れ』というタイトルが先にあって、複数ポジションの話をダメ試合からはめこんでいって終わらせた話に、新しいエピソードをそのまま入れられるとも思えなかった。入れたい場面は思いついていたので、構成しなおしたかった。

でも、一眠りして、いざやろうと画面に向かってみたら、もう自分が疲れ切っていることに気がついた。まったく集中できない。一文字も直せないし、直したら全部直すはめになる・・・どうすりゃいいんだよ、とほほほ。

観念して、挟むとしたらここしかないなと思えた場所に、賢介の代打の話を入れた。5分くらいで書いたと思う。

読み直したら、不自然ではなかったので、そのまま行くことにした。

「オッケーこれで行きます。お疲れ様」

監督の言葉を得て、ようやく決定稿を編集部に送信する。

その時点では、嬉しさはあんまりなかった。とにかく疲れきっていたので。でもほっとした、開放感はあった。

あとは、校正するだけだもんな。

ところが、現実は、それだけでは、まったくすまなかったのである。

                          佳境につづく!

























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