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ファイターズファン、最後のエールを送る。ホークスへFA移籍決定ー最も厳しい道を選んだ君は。超一流バッターへ、名を刻め、近藤健介。本当の「大人になる」ためにー

 
 最初に、言っておきますが、わたしはファイターズファンとして、選手がFA権を行使して移籍することに「裏切られた」とか「腹立たしい」といった感情を抱いたことは、一度もありません。

もちろん愛するチームの愛する選手であれば「寂しい」とは思うよ。
だけど、自分の応援スタイルは、どこまでも「選手本位」なんで。
彼らは、プロ野球選手なろうと希望するとき「プロ野球志望届け」は出せるけど、まずもって、ドラフト制度で指名がかからなければプロ野球選手にはなれないし、指名されたとしても、自分の行きたい球団とは限らない。言うたら「職業選択の自由」は、ないわけです。

そんなこと言ったらどんな就職活動でも同じだ。数々の入社試験を受けても落ち続けるとか、希望の会社に入れないとか、そんなの当たり前じゃん!
と言われたらそうですけども。少なくとも受けたい会社にエントリーすることはできますよね。

 プロ野球選手は、特殊な職業です。立場としては個人事業主であるにもかかわらず球団に保有権があり、選手は球団の都合でしか動けない。とても不平等な関係です。
FAーフリーエージェント権だって、国内FA7年、海外FAなら9年分「一軍登録」されないと得られない。プロ野球選手全体の現役平均寿命が、5、6年くらいと言われているのに、7年も9年も一軍で活躍できる選手は、ごくわずかです。大半は、その前に首になってしまう。

そんな中で、やっとのことで得た「個人が自由に契約できる」権利を、どうして、我々ただのファンが、どうのこうのと文句つけたり非難することができるのか?(制度の内容や、そもそものあり方については、もっともっと議論して意見するべきだと思います。人的補償反対!)

「寂しい!」
「いかないで」
「一緒にファイターズで野球して欲しい!」

というファンの気持ちを伝えたいのは人情。選手だってわかってる。ファンに愛されて嬉しくない選手なんかいないでしょう。

でも、それでも、わたしは、選手が長い間頑張り続けて得た権利、自分自身で築き上げた実績に対しての評価を最大限に活かすのは、当たり前のことだと思うし、「よくここまで頑張ったよね!」とむしろ褒め上げたい。

 一握りしか得られない権利と自由だからこそ、その一握りになった選手は、全ての選手のため、これからのプロ野球選手のための「前例」にならなければならない。
何の根拠も情報ソースもない。単なるファイターズファンの勝手な憶測ですが、この度の近藤健介FA権行使による経過と結果には、そういう「前例」にならんとする、近藤くんの意思を感じるのです。

推測の前提は、もちろん前年のファイターズ球団での「中田翔殴打事件による巨人移籍」と西川遥輝、大田泰示、秋吉亮の「ノンテンダー」問題です。ファイターズは、長年チームの看板でもあり、さらにFA権も得ていた選手について権利を行使させずに放出できる方法を選んだ。

外部にいる者には、内部で起こっている真実などわかりません。
しかし、近藤くんは、当然チーム内で、さまざまなことを見聞きし、感じていたはずです。

3年契約を結んだ時、3年後にはFA権を得るけれど、ファイターズから移籍することは想像できない、新球場で活躍したいと笑顔で述べていた近藤くん。今年になって180度考えが変わるには、「お金」が主題だったとは、わたしには到底思われない。
だからといって移籍を決断するに当たって、「お金」以外の要素は、表には出せないー色々事情があるからーと見る方が、ずっと自然に受け取れます。

なぜならば、ルーキーの時から11年間、ずっと見続けてきた、滅多なことでは、個人の気持ちを顕に出さない選手だったから。

彼は、非常に頭が良く、器用で、なんでもできる。入団当初から打撃を高く評価され、年長の選手を差し置いても起用されてきた。
「打てるキャッチャー」を期待されながら送球難に陥り、苦悩していた時も本人は黙って耐えつづけていた。(周りの選手が「実は近藤さんは…と話すことはあった。石川亮くんとか)
ショートにまで抜擢され、「ファイターズは若手を優遇している」と暗に批判されたときも、キャッチャーを諦め、外野にコンバートされたときも、腰を痛めて手術したときも。愚痴や言い訳めいたことは聞いたことはない。

今回のFAに関しても「悩んでいます」「じっくり考えています」とは話すけれど、どの球団をどうのとか、誰それについてどう思うかとか、個人的な話はまずしていない。

なぜファイターズに残らなかったのか、あるいは「残れなかった」のか。自分の気持ちについて、彼が、本心を語る時が、いつか来るのか来ないのか。

いずれにせよ。近藤健介は、選んだ。
与えられるに、最も厳しい道を。

この世の中、みんな「金、金、金」で金のないやつは負け犬で、「稼げないやつは、努力の足りない自己責任」だって、貧しい人や困ってる人が助けを求めたり、助けようと努力する人たちを嘲笑い、ボコボコにするような奴らがのさばるのに。11年頑張り続けて、大きな評価を勝ち取ったプロ野球選手の努力の成果を「金のため」だと否定する。いったいどっちなんだよ?

それはともかく、そんなように風当たりは、ものすごく強い。
ファイターズに残るのが、一番楽な方法だったと思います。誰にも非難されないという意味で。皆に喜ばれるという意味で。生活が変わらないという意味で。
福岡ソフトバンクホークスには、オリックスやロッテやライオンズのように近藤くんを庇護してくれるような親しい年長者は、見当たらず、住み慣れた関東からも離れているーヤフードームくらいしか慣れた場所はないような土地で。

7年50億円とか本当か嘘かなんて見てる方には関係がない。それは勝手に「事実」になって「近藤健介の評価」になる。7年間、その評価に応えるべき選手でありえるのか?
一介の60歳庶民から見たら、一種の奴隷契約ーにすら見えるけれど。

しかし、それはやっぱり、一人のプロ野球人の、途方もない挑戦、と言うしかありません。
コンスケは、大勝負に出たんだよ。痺れるような大勝負に。
本物の、超一流バッターになる。
そして、真実の野球人に、自らの目指すところの「大人になる」ためにー

わたしたちのコンスケが、選びとり、目指す道は、そういう道なのだと。
わたしは、信じてみたいのです。

さようなら ファイターズの近藤健介
ありがとう。わんぱく、こんちゃん、コンスケ、大明神、料理名人、ゴルフ名人、花の93年組ー

来シーズンの対決を楽しみに、待っています。








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