読書してみて考えた⑧「マチズモを削り取れ」

武田砂鉄の2021年7月初版の書。砂鉄という名前の珍しさを新聞か何かで記憶しており、大分昔に「タモリ倶楽部」でお見かけした気もする。昨年「紋切り型社会」(文庫本)を購入するも  2015年刊行とタイムラグが気になったから、最新書を読むことにした。
「すばる」編集者のKさんの疑問(マチズモに関して)を受け、考察する本。私は医師という仕事柄、マチズモ=男性優位社会にどっぷり漬かってきたけれど、モヤモヤしながら、そういうものだと受け入れてやってきた。昨今のジェンダーレスは何だか心地悪いくらい。
しかし、男性がマチズモに異論を唱えて初めて、ジェンダーギャップも変わるかも、これまでのジェンダー論はおばさんばかりだったもんな、なんて気持ちで読み始めた。

第1章自由に歩かせない男
「男、めっちゃ有利なのだ」そうそう、だからこの世には「レディースデイ」のようなサービスが多くある。
日頃外来で見かける30代後半~40代男性。怪我ではない、痛い、調子悪い。半年~1年近く整形外科や接骨院を数件回るも異常なし、効果は一時的。酷い人は動悸や不眠、会社に行けなくなっている人もいる。明らかに心身症気味だけど、精神科や心療内科という自覚は無さそうなので、こちらも勧めたりはしない。ただ悩み事がないか、転職?配置換え?なんて聞いてみる。会社に問題がないなら、実は「鬼嫁」じゃないか、子供が産まれ妻に構ってもらえない上に手伝わないといけないという義務感か、そんなメンタルからの「なんだかか背中が痛い」(例えば)では?なんて疑ってしまう。御本人はこんなに長引くなんて、癌ではないかとか、心臓かもなんて悲壮感すらある。しかし概して皆、健診(真面目な人が多いのでしっかり受診)は異常無しという。
これが結構いる。もしかして「男、めっちゃ有利」ゆえの悩みかも、なんて考える。「男らしく」仕事も家庭も私生活も頑張ろうと思うから、「男なのに」○✕できず情けない、「男として」今後が不安など。だから苦しいのかも。あくまでも推測、実際に私が口に出すことはない。

第2章 電車に乗るのが怖い
痴漢被害VS痴漢冤罪被害なんてしてたら、話にならないと思う。
痴漢の実態は「四大卒で会社勤めをする、働き盛りの既婚男性」だという。あらら、前述の整形外来に結構いる、痛みの取れない30~40代男性とオーバーラップする。
痴漢被害者は、もしかするとマチズモ男性の被害者なのかも、なんて考えた。

第3章「男/女」という区分
東京医大入試の件、私は当事者(平成元年受験生)なので改めて後述。
「ガラスの天井」と「ガラスの地下室」受付は何故女性ばかりなのか、気配りが得意な女性は接客業、いうことらしい。コロナ禍で問題になった「低賃金サービス業」の多くが女性という現実、だから地下室。これはマチズモだけではなく「130万円の壁」にも一因があると思う。以前もnoteに書いたが、扶養控除→働きすぎると損をするぞ、なんて、ろくな世の中ではない。

第4章それでも立って尿をするのか
親バカ+ダメ夫承知で書く。
今年になって自宅トイレの流し忘れが何回かあった。大ではない。便座が上がっている。夫と息子に確認。
「僕は座ってしているよ、立ってすると、すごく汚れるってネットでみたから」と息子。
夫はとてもショックだったみたいだけど、さすがZ世代の我が息子。
「レディファーストくそ食らえ」なんて言っていたから、団塊ジュニア夫の男尊女卑を引き継いだかと危惧していたけど、もしかすると、ジェンダーレスゆえのレディファースト反対!だとしたら親としてはなかなか嬉しい。

第5章 密室に他人が入り込む
引っ越し業者が見積りに訪問する時、不動産屋との内見の時、女性一人に対し相手が男性だと気まずい、は考えすぎか?という話。
私はこれまで独身7回、結婚後4回転居した。親の手伝いもない独身女の引っ越しでも、そんなこと考えたことなかったな。むしろ家の中や私物を見られる恥ずかしさの方が大きかった。そういえば大学時代「女1人だと不動産屋さんに舐められるから付き合って」と言われ先輩と部屋探しをしたこともあった。
となると私の方が警戒心低めのちょっとおかしな人間なのかもしれない。

つづきます。

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