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【起業日記③】韓国の工場訪問と予定外の大量発注、そして返品(2011)

前回のお話はこちら

0歳の息子を連れて韓国に到着すると、早速工場に向かいました。コミュニケーションがとれるか何度もシミュレーションをして向かったのですが、着いてびっくり。先方は日本語がペラペラでした(笑)。
 
さらにラッキーなことに、私が理想としていた布おむつに近いものがそこにありました。その工場ですでに縫っているもので、まさに韓国で流通が始まったところでした。この布おむつをベースに、要望を伝えていきました。

「ケンチャナヨ」を超えるために

最初の工場訪問で驚いたのが、韓国は「持ち帰らない文化」ということです。日本であれば、何度も打ち合わせをして宿題を持ち帰り、また打ち合わせをして持ち帰り作っていきますが、韓国ではその場で要望を出し、その場で縫ってくれます。縫い上がったものを見てフィードバックをし、その場でまた縫う…といった具合に全てがその場で決まっていくのです。私自身もグローバルで戦うならこの姿勢は学ぶべきだと思いました。

防水加工に試行錯誤した時の試作品です

 この時に私から要望したのは大きく2つ。1つ目は何回洗濯してもヘタレない、丈夫なものにして欲しいということ。手元に届いた時は綺麗でも、洗濯をするうちにボロボロになってしまうことは避けたい。そのためにロックミシンでかがり縫いをして欲しいと伝えました。

そして2つ目は、最後の縫製まで美しく仕上げて欲しいということ。日本人は品質に世界一うるさい国民です。縫製が荒いのは論外ですし、スナップボタンひとつも絶対に外れてはいけないし、ズレてもいけないのだと伝えました。一方の韓国は「ケンチャナヨ」文化。あまり細かいことは気にしません。「ケンチャナヨ」で済まされないために、こちらの求める品質レベルについてはかなり口を酸っぱくして言いました。例えばおむつカバーにつけるスナップボタンは数も多いので、いかに丈夫にまっすぐと取り付けるか、平面において真下にまっすぐ踏むのだと何度も細かく指示を出しました。

韓国で見た、昔ながらの布おむつ

予定外の大量発注と返品

何度もやりとりを繰り返すうちに、これなら日本でも流通できそうというレベルに仕上がってきました。韓国に来る前、電話口では10万円分の発注をしたいと伝えていました。それに対して了承を得ていたので韓国までやって来たのですが、いざ発注段階になると10万円では受けられないと言われました。仕方なく、50万円分の発注をすることになりました。まだ売り先も決まっていないどころか、サイトも存在していません。そもそも本当に売れるかもわかりません。でもこうなったら覚悟を決めて売るしかない。帰国途中、「はじめてのホームページ開設」という本を買って帰りました。
 
ホームページ開設に向けてHTMLを学び、試行錯誤しているうちに縫い上がった布おむつが送られてきました。箱を開けてびっくり、なんと生地に防水加工が施されていました。おむつカバーは防水加工が必要ですが、布おむつはおしっこを吸収しないといけません。弾かれては困ります。工場の人たちは「使う人のことを考えて作る人」ではなく、「言われた通りに作る人」なのだとこの時に学びました。
 
結局このおむつは全て返品し、作り直してもらいました。その後、この韓国の工場とは2017年まで取引が続きましたがその間も返品は何度もありました。ケンチャナヨ文化を超えるには、こちらの求めるものを根気強く伝え続ける必要がありました。

次回へ続く。



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