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9/14日本詩人クラブ例会

動画はこちら https://www.youtube.com/watch?v=E-7d0WuS2R0

『シンポジウム―戦後79年―詩はどこへ IT時代の今考える詩の未来』



※これはわたしの私見であり、みなさんと大いに意見が異なる場合があります。その点をお含みおきください。
どこかに既に資料があったものをまとめたわけではなく
自分で図説を書いてまとめてみた内容です。
※荒れるようなら閉じます。

資料一枚目の概要図

今日はよろしくお願いいたします。原島里枝と申します。
今回、私の分として配布された資料は4枚あります。いきなり本日のシンポジウムのテーマ、表題が書き洩れていまして、大変失礼いたしました。申し訳ありません。私の資料は「詩壇とネット詩の狭間で―いち詩人の視点からの私見―」という資料になります。そのうちの一枚目を少しだけ触れたら二枚目のほうへ進んでいきたいと思います。

一枚目のインターネットの歴史と概要図、一種の図説ですね、こちらからご覧ください。
ただいま、遠藤ヒツジさんから、このインターネットの歴史的な進歩について、お話がありました。少し私のほうでも改めて簡単にお話します。一方通行だったウェブ1.0、双方向にコミュニケーションが図れるようになったウェブ2.0――こちらが、今のインターネットのメインに近いです。フェイスブックやツイッター、Xなど、SNSと呼ばれる一種のコミュニティですが、その括りもここに入ります。そして、ウェブ3.0になると、ユーチューブやティックトック、またバーチャルリアリティ空間というような、動画・映像・音楽などともコラボした文字作品に留まらない詩作品がこのウェブ3.0に当たると思います。

という「ネット詩」の世界、と、紙媒体の詩壇、という世界。
これについて、右の概要図にて私見ながら図説にしました。
白がネット詩の世界、濃いグレーがリアル世界や紙媒体の詩壇の世界となります。
そして、この二つにとっての共有エリア、これは図ではかなり狭いエリアになります。
真ん中のグレーの、Webでも活動を行い、紙媒体でも活動を行う者たちのいる共有エリアが、この真ん中です。

ここに黒矢印と白矢印の二つが書いてありますが、これは「ネット詩」という大きな流れについて二つの流れを描きました。一つ目の黒矢印は、ずっとネット詩を貫く流れです。これは、今お話しがあった、遠藤ヒツジさんのネット詩のお話が、こちらの黒矢印の流れになるかと思います。言い換えると、紙媒体へ入ってこない流れになります。
二つ目の矢印は、白矢印です。これは、ウェブ2.0の、掲示板の交流やSNS投稿を経て、紙媒体へ回帰していく流れです。共有エリアのほとんどの方々は、この回帰していく流れの中にいます。一方で、動画映像やプログラム、音楽、アバターを使いこなしながら紙媒体も横断していくような自由自在の詩人さんも存在しないわけではないですが、とても少数となりますので、今の段階ではそれにクローズアップはしません。あくまで、紙媒体へ回帰していく流れ、白矢印の人たちを今日のメインの話題にしたいと思います。

ちなみに、この図説は、元々遠藤ヒツジさんのウェブについての資料より着想をしております。遠藤さん、こちら着想に使用させていただきました。ありがとうございます。

さて、ここで二枚目に入ります。
今、黒矢印へ流れていくネット詩の流れと、紙媒体へ回帰していく白矢印の流れのふたつを紹介しました。今回は、ネット発紙媒体詩誌を中心に、話していきたいと思います。

ネット発詩誌への、大まかな流れについて、触れていきます。
二枚目の真ん中には大きなグラデーションの図を載せていますが、いったんその上に書いた前提をお話いたします。

西暦2000年代からしばらくの間、ネット詩投稿(合評スタイル)だったのではないかと思っています、これは掲示板サイトに投稿して、それに別の参加者が感想や評を書き入れることで切磋琢磨する、という構図でした。ほかのやり方の場所もあったかもしれませんが、あまり私はそのあたりのネット詩の歴史には明るくありません。私がネット詩の世界に足を踏み入れた2017年2018年頃以降の話をしたいと思いますが、その頃には今はなした合評スタイルの投稿掲示板スタイルがだんだんと廃れていくような時代でした。「文学極道」や「Bレビュー」という掲示板サイトがあり、前者は活動を終了してアーカイブとなりましたし、後者は今も継続しているはずですが、活動は寡聞となり詳しいことは分かりません。

そして、コロナ禍に入った2020年あたりからでしょうか、紙媒体へ回帰していく傾向が強くなり、初めはネットプリントという形態からだったのですが、数年のうちに幾つもの紙媒体詩誌が誕生していきます。ちなみに、ここで朗読やパフォーマンスを行うライブパフォーマンス的な詩的活動「ポエトリーリーディング」の世界を知りましたが、原島は明るくないのと、紙媒体とあまり密接に理解できていないのでそのあたりのことは今後の課題としたいと思います。

では、ネット詩から詩壇への概要的なグラデーションについて、お話したいと思います。
このグラデーションの、左から白~薄いグレー~濃いグレーとなっているのは、一枚目の図説の色と対応しています。
このうちの、ネット詩のみの層から説明したいと思います。この項目に関しては、「凪組アンソロジー2024」という詩のアンソロジーから、薮下明博さんと言う方がネット詩への考察をされており、それを引用しています。ほかの中間層、詩壇の層については、原島なりの私見となりますのでご注意ください。

このうちのネット詩について紙媒体と大きく異なるのは、作品発表に無料での作品発信ができるという点です。そして、誤字の訂正を致します。二行目のところで、書き替え「や」訂正が容易、と訂正しお詫び申し上げます。失礼いたしました。
ここでもう一つ特徴的なのは生成AIによる詩作でしょうか。文字のほうは、創造性という点で人間に及ばないというご意見、これはChatGTPなどの文章生成AI使用者からの声を頂いておりまして、今の時点では人間の書く詩のほうが明らかに詩情に富み、詩作ができるとは言い難いとは聞いています。しかし、行分け詩っぽい文の連なりは生成できますので、この生成AI詩は将来投稿などに影響を及ぼしそうとも捉えられます。

・生成AIによる詩は、クオリティが人間の書く
 創造性にはまだ及ばない(AI絵は学習が著しいが
 著作権の問題も出ている。将来的には生成AI詩も
 問題になるかもしれない)・語彙の選択肢が豊富(予測変換など)
・複製・反復の容易性
・ビジュアル詩への展開
 (イラスト・音声・音楽とのコラボに至る迄)
・隣接的な文学(短歌・俳句)ともSNS上で
 並行的に触れたり発表する人・機会が容易
・書き換えが訂正が容易発信が簡便・即時/経済性(無料での作品発信)(参考資料:「凪組Anthology2024」(七月堂)より詩法の現代的変化
      ――或いはネット詩の現在と未来(薮下明博))

次にいよいよ共有エリアの層についてお話します。
この共有エリア、中間層と仮に申し上げます。
ネット上でも、紙媒体でも、それぞれに作品を発信したり、寄稿したり、あるいはイベント活動など独自の詩活動をされている方もいます。
この活動には若手が多い印象ですが、もっと中堅の書き手もネットには融和していて、受賞歴のある方も多数ここに含まれると思います。

そのうち、若手の方の印象になりますが、詩集の積極的な購入、読書、そして詩の教室やイベントへの参加など詩に親しんだり勉強する意欲が高いと感じられます。
この傾向は、ネット詩のみで活躍する層=白の層では「詩人に直接師事する」という傾向が薄まるので、紙媒体へ回帰する層の傾向だと感じています。

・ネットSNSでの作品発表
 (無料での作品発信・発表)
・紙媒体やネット媒体の詩誌への寄稿
 あるいは独自の詩活動等
・受賞歴のある方も多数
・詩誌同人を組むとしても
 電子詩誌やネットプリントもあれば
 紙媒体詩誌等、発表形態が多彩
・詩集の購入・読書・教室参加など
 親しんだり勉強する意欲

そして、濃いグレーが詩壇や紙媒体のみ、リアルの詩活動に当てはまると思います。
グレー掛けが濃くて読みにくいかもしれません。
上から順に、読み上げていきます。

詩壇
・詩人クラブ/詩人会という団体
・詩誌同人としての紙媒体発表
・職業としてや、学術・芸術としてのプロフェッショナルな活動
・商業詩誌への寄稿や発表
・詩の投稿の選者を務めるなど
・団体の維持費(会費)や紙媒体発行のため活動費がかかる
・隣接的な文学(短歌・俳句・小説)などへの交流は限定的
すみません、ここで、小説も入れておきます。ここも加筆訂正とさせていただきます。

他の特徴も、皆さまにとって思い当たることは多々あると思いますが、この辺りでお許しください。

左から右への活動については、気楽さや手軽さと言う広い間口から、だんだんと活動費や専門性などへと濃く凝縮されていくようなイメージがあります。

ここで、若手の詩人活動において「インカレポエトリ」という活動を耳にした方もいらっしゃると思いますが、下部に書きました通り、厳密にはネット詩発ではなくインターカレッジサークル/結社となりますので、その存在をご紹介する程度に留めさせていただきます。

ここで二枚目は終わります。
三枚目をご覧ください。

コロナ禍前から、詩壇とネットの、中間を繋ぐ存在はありました。
まず、抜けていましたが「商業詩誌」の動向として、一つ先駆けの存在を挙げたいと思います。商業詩誌『ココア共和国』(秋亜綺羅氏、佐々木貴子氏による)の誕生があります。
こちらは、4年半以上前に、紙版と共に電子版も他誌に先駆けて発行しています。
この流れは、同人詩誌とはまた違う扱いだとは思いましたが、ネット詩と詩壇の狭間の流れとして特筆すべきことと思い、追加でお話しました。
さて、本文に戻ります。
詩誌『狼』、これは今はカタカナでオオカミかもしれません。手元に近年の詩誌がないのですが、確か私が入手した際には、動物の狼だったと記憶しています。
そして熊本の震災をきっかけに結成された詩誌『みなみの風』などもネットで活発に活動をしています。

ここからは、2020年以降から活動を始めた、ネット発と思われる詩誌同人を紹介します。
今日それぞれを持参したので、以下読み上げていきますが表紙を紹介していきます。

◆ネット発と思われる主な詩誌たち(2020~2024頃)
①詩誌『聲℃(セイド)』(黒崎晴臣氏主宰)……同人からの販売、独立系書店(詩歌系書店)との繋がりのほか直販サイトの運営、ISBN登録も取得し、POD出版ではない形でAmazonなどで販売。母体を同人からNPO法人ライトバース(ライトバース出版)と成長させる。

②詩誌『指名手配』(佐相憲一氏主宰)……Amazonで販売している。ネット詩でも投稿でも活躍する詩人が詩誌同人に多く、かつ詩壇での知名度も高い。受賞歴のある詩人も複数同人である。

③詩誌『ラ・ヴァーグ』(雪柳あうこ氏主宰)……Amazonでの販売により、全国への販売を可能にしている。受賞歴のある詩人も複数同人である。

④詩誌『凪』『Wonder』(石川敬大氏主宰)……Amazonでの販売こそしていないが、独立系書店(詩歌系書店)との繋がりもあり、詩壇への認知度も上がっていると思う。石川氏は、ネットで募集した、100名以上が参加する『凪アンソロジー2024」なども製作・刊行している。

他にも多数のアンソロジー、ネットプリント企画、そして新規詩誌同人などが活発に立ち上がったり企画・結成されているのですが、私個人ではその全てを把握したり網羅することが不可能に近いので、この四誌の紹介でお許しいただきたい。

四枚目に入ります。
これは、共有エリア、紙媒体へ回帰していく中間層に限ったことではあるのですが、
「詩壇とネット詩は融合していく世界へ進んでいる」といえると思います。

その四つの理由を書きました。
右上の枠からご覧ください。
①     まず、ネットができて三十年が経とうとしています。二十代にとっては、生まれたときから既にあるツールがインターネットです。
②     その下の枠をご覧ください。
三十年前、二十代だった者も今や五十代を迎えます。三十年前に40代だった層でインターネットに触れてきた方もおられると思いますので、そういう方々は今は70代となります。つまりインターネット利用の全世代化が進んでいます。
③     ここから、右上の枠をごらんください。
こういった、リアルとネットを切り離すことが困難になってきた時代、紙でもネットでも自在な作品発表形態を採る世代が出てきました。
④     最後に、右下の枠をご覧ください。
このような、紙でもネットでも垣根なく「詩作品発表の場」となりつつある中で、紙媒体の存在は「ネット詩からリアル詩への挑戦状」ではなくなっている。新しい価値観や、あるいは既存の価値観を尊重する、同人詩誌へと成長を遂げつつあると言ってよいのではないでしょうか。

そして、最後の「将来を夢想する」として一言。
この回帰ムーブメントが一過性のもので終わらず、詩作品が再び多くの世代や人たちに読まれ、詩を読むことへの間口を広げ、詩に親しむ人の人口が増えていきながら、現代詩というものが更なる成長と変貌を遂げていけたら、という希望のようなものを抱えている、ということです。

ここまでご清聴いただき誠にありがとうございました。次に高山利三郎さんへ繋げます。


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