不透明な未来へ

以下は、次号の月の未明に載せようと思っているエッセイです。


          
 新型コロナウイルスが、日本国内で新たなフェーズに入ったとニュースで言われるようになったのは二月十四日の夜頃だった。ふとマスクの残数を考える。冬はインフルエンザ対策、春は花粉症対策のため予めそれなりマスクを準備しておくのが毎冬の我が家の通例だが、新型コロナウイルスCOVID-19のための箱マスクまでは買い足ししていなかった。マスクはどこも売り切れで、消毒用エタノールも無くなっているらしい。玄関に置きっぱなしにしていたジェルタイプの消毒液の残量を確認する。布マスクは家になかった。
 同じ日だっただろうか、マスク不足は翌週明けから少しずつ改善していくだろう、と政府から発表があった。一億枚の供給が始まるという。「一日一億枚の供給」を思う。今の日本人は一億二千六百万を超えているので、残り二千六百万人分のマスクはないのだろうか、と思っていたら、どうも一億枚超/週だった。
 今日は二月十六日。あれから二日しか経っていない。この月の未明が出るのは四月。二ヶ月先の日本がどうなっているのか――随分不透明な未来だなと思う。このウイルスは既知ではなく未知のウイルス(コロナウイルスの一種ではあるけれど、ヒト―ヒト間のよくある風邪のコロナウイルスではないようである。動物由来からのウイルスとは言われているが、その根拠までは分からない。はっきりしない由来については塩基配列比較などで解明されるといいなと思う)なので、本来なら厳重に封じ込めをしなくてはならなかったが、日本は封じ込めに失敗したと言っていいだろう。どちらにせよ、ウイルスについてのいろいろな研究結果、情報はこれから明らかになっていく。
 市中に生きる私たちのやることは手指の消毒と経口感染の予防(結膜からの侵入については、日常生活では防ぐことが難しい気がしている)くらいしか思い浮かばないので、今日までもこれからも、拡散防止にマスク、予防に手洗いをしっかりやっていくこと、アルコール消毒も出来うる限りしていくことくらいしか思いつかない。あとはドアノブや携帯の消毒か。インフルエンザウイルスの予防をしていれば、COVID-19の予防にもなるだろう。ただ、ウイルスはもう都市部に入り込んでしまった。これから季節性のコロナウイルスのように毎年流行するようになるかもしれないとも言われる。ニュースで言うように感染力は弱いのだろうか? 下がらない高熱が続くとも聞いたが、それはデマなのか? 夏になったら本当に減って落ち着くのか? 分からないことだらけだ。不安を煽っても、もう日本には北海道から沖縄まで感染者は現れている。共存できないウイルスとこれから共存していくことになりそうなこの地で、これから文章や詩のできることや届けられるものは、正確な情報、対策、政治、それから、生きる強さ、希望――? なんなのかを、ずっと考えている。そして、できれば――共存ではなく収束を願っている。

資料

「SARSとは」「MARSとは」「新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報について」 国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/

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