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【マガジン20】『(公開中)完成車信者とEV信者、双方の意見とその見解』(2020/06/05)

Twitterでは定期的に「完成車優位派vsEV肯定派」の論争を見かけます。

結論、私はEV肯定派なのですが、完成車の優位性を熱く語っている方って結構いるんですよね。

確かに、既存の完成車の技術の凄さを踏まえると、そちらの意見も一理あると思いますし、間違っているとも思いません。

しかし、それでも私は肯定派。

今回は、完成車優位論者とEV肯定派の意見を両方挙げ、その上でなぜ私が肯定派なのか。その見解を書いていきたいと思います。

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1・完成車優位論派の意見

・完成車メーカーは「組み立て屋」
・組み立ては技術の塊
・完成車への新規参入障壁は依然として高い
・何万点とある部品。品質保証は簡単にはマネ出来ない
・EV先行のテスラだって、新しいもの好きにしか売れていない
・EVが売れてないのはそれだけ既存の完成車が優秀だから
・EVは価格が高い
・EVは電池がポイントだが、まだまともな走行距離を出せない
・EVは電源ステーションなどのインフラを整える必要があり、簡単には普及しない
・電池が燃えるリスクは依然として高い
・ガソリン車の代替は当分難しい

この意見、確かにその通りとは思います。

そもそも自動車というのは、約3万点の部品で構成されていると言われます。

せっかく買った車がすぐに故障してしまったら大クレームモノですよね。

毎年1,000万台もの車を販売しているトヨタ車ですが、そのうちの0.5%が不良品だとしても、その数はなんと5万台にも及んでしまうんですよ。


そもそも、各部品は不良品率がほぼ100%でなければなりません。それだけの確実なクオリティを、下請けの部品メーカーに要求しなければなりません。

良品率
99%×99%×99%×99%×・・・・・・・×99%

こんな計算で3万回かけ算すると、もはや完成車の良品率は50%を軽く下回ってしまうんですよ。

つまり、各部品の良品率は

限りなく100%

でなければなりません。

車の品質保証は、ボリンジャーバンドで言うところの σ6(シックスシグマ)です。

σ3は簡単に貫通しますから、6は欲しいといったところ(分かる人には分かる!笑)

こういった統計学の考え方が、完成車メーカーの品質保証には用いられていて、完成車の製造のハードルの高さを感じさせます。


そして、現在各社が開発しているリチウムイオン電池ですが、燃えるので取り扱いが難しく、これを殆ど100%の品質で製造するのは非常に難しい。

また、コスト面でも同様で、ガソリン車を駆逐するだけの価格メリットが今のところはEVには出せていません。

こういった意味でも完成車の優位性を主張する人が多いのは間違いないでしょう。


2・EV肯定派の意見

・約3万点ある部品点数が半分にある
・それ即ち、良品率の管理ハードルは下がる
・電池は各社開発していて、今後どんどん性能が上がる
・日本車を駆逐するために、各国企業が躍起になっている
・環境規制の世界的高まり=ガソリン車には向かい風
・EV×半導体で、既存の「車」以外のサービスや付加価値が生まれる
・中国ですでにEVがどんどん登場している

真っ当な人から人気が無いマナブさんのツイート。「薄っぺらい」と批判する人が多いですが、今回ばかりは間違ったことは言っていないと思います。


ヨーロッパの環境意識の高さを踏まえますと、既存のガソリン車を永遠に売り続けることは難しくなってくるでしょう。

中国も、ダーティなイメージを払拭しようと電気自動車の推進をひたすらに進めていますし、そうなるといつかはガソリン車がシフトされてしまう可能性があるという危機感は正しいでしょう。

以前にも紹介したソニーの電気自動車。

品質保証体制は別にして、とりあえず組み立てることはすでに出来ているんですよね。しかも、半導体・電機メーカーのソニーがです。


3・私の見解と未来予測

冒頭にも書きましたが、私はEV肯定派で、完成車メーカーの業績を心配しています。

現在、EVは中国が先行しています。欧州も追従。

EV技術の成熟は、世界の覇権に繋がりかねない新ビジネスの宝庫です。

・フル充電のEVは災害時には立派なパワーステーション
・乗った人の健康状態を通知してくれるソフトウェア=単なる「座席」からの飛躍
娯楽とEVのセット
・エネルギーと車のシェアリングビジネス(コロナによるソーシャルディスタンスは、センサーカメラ技術の力で対処)
・自動運転なので移動中に寝れる=動くホテル
動く会議室としての活用

つまりEVは運転する車ではなく、ある種のエンタテイメント+動く蓄電システム、ということであって外観が車なだけなのです。(動くAIは登場済)

EV車はインフラやソフトを含めた総合技術になるため、自動車メーカーという枠組みは入り口でしかなく、もはや競合企業は自動車メーカーだけではなくなります。

すでにこのような会社が世界は出てきています。

日本にこんな会社ありますか?

IoT革命はすでに始まっているのです。


バッテリーの回収、交換、再利用は国際規格を作る必要がありますが、これを中国がバンバン手続きを進めています。

バッテリー関連は重要技術です。(トヨタの中古車のバッテリーをホンダ車には搭載出来ない)


EVはまさにメモリ媒体がSDカードに集約されたような技術の変遷の中にあります。

それは当然、最初に「規格」を作った企業が有利であり、規格作成の中で生まれたアイデアを先に実行できる先行者利益もあるのです。


EVの業界は現代技術の詰まった技術開発競争であり、それを

「エンジン車の方が安いから・・・」

とのんびりしていたら、結果はまあ見えていますよね。


完成車の優位性を主張する人には申し訳ないのですが、

永遠に「車だけ」作っている時代では無いのだと思います。


そもそも、「車の組み立て」という前提そのものを壊しに掛かっているのが他の国の企業なんです。

日本の売上を狙われているんですよ。

技術で先行しないと、半導体デバイスメーカーと同じような運命をたどってしまうのではないでしょうか。


もちろん、トヨタの経営者はこれに強い危機感を抱いています。

その根拠に、

「トヨタシティ構想」

を打ち出しました。(過去記事でも言及しています。)


つまりトヨタは、

EV+半導体+ディベロッパー(インフラ)をセットで考えていて、

既存の「車作り」だけでは今後世界でシェアを奪われてしまう危機感を感じている証拠です。


トヨタがそれをやるのも悪くはないのですが、

それを早く「国際規格化」して、

EV+インフラ+ソフトシステムのトータルパッケージ販売

をしなければならないのです。


ちなみに中国はこれを狙っています。

半導体デバイスの開発を進めており、米国に出る杭を打たれていますが、

EVと電池の開発では叩かれることなく順調に世界をリードしています。


今やリチウムイオン電池の世界最大手は中国のCATLです。

そして自動運転技術+ソフトウェアでのハイテクシティを一帯一路の国々へトータル販売することを狙っているのです。

これが「中国製造業2025」です。


おわりに

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今回は、半導体競争のその先にある「EV+インフラ+ソフトウェア」という未来都市に向けた最重要課題をお話しました。

完成車の組み立て技術の凄さは分かるのですが、もう世界は本格的なハイテク都市を作るために動いているのですよ。

安全性などの規格作りは中国が先行していて、それがデファクトスタンダードになってしまうと、必然的に中国が有利なように、EVのモノづくりが進みます。

「俺たちがルールだ」

なんて言われたら、とても後発では追い付けません。

こういったハイテク技術の集結は、完成車メーカーだけが頑張るだけでは実現出来ません。

トヨタは何でも自社で完結させようとする自前主義ですが、これに関しては日本中の企業の技術を集結させなければならないでしょう。

だからこそ、「EVなんて・・・」って意見が出ている日本は、そもそもハイテク国家として遅れまくってるんですよ。

令和の今は、時代の変わり目なんだと思います。

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