見出し画像

寝たきりでも日帰り旅行したい! ─ 星の王子さまミュージアム

この間、母と一緒に日帰りドライブで星の王子さまミュージアムに行った。理由は、2023年3月31日で閉園になるからだ。

ある日、星の王子さまミュージアムが閉園になるのをニュースで知った。ああ、まともに歩けたあの頃に行けばよかったと後悔する。仕方がない。これも難病で寝たきりの宿命だとか思いながら。

じつは、私は線維筋痛症と慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)という二つの難病のせいで、ほとんど寝たきり生活だ。たとえば、インフルエンザなど高熱でうなされたときを想像してほしい。高熱やその他の症状で部屋を歩き回るだけで精一杯。けど、身体を動かすことは出来る。しかし、レンジでチンするだけでもヘトヘトになる。ああ、はやく寝たい。いまの私は、その状態に似ている。厳密にいえば、そこにプラスして線維筋痛症の全身にわたる激痛がある。身体を動かすことは出来るけど、極度の疲労感や激痛が常に症状としてあるせいで、寝たきりになっている。

すると、母が「閉園になるなら、行こうか?」と提案してくれた。話はトントンと進み、母に介助してもらいながら車で星の王子さまミュージアムへ。家から車で数時間ほど。日帰り旅行へ行ったような感じだった。

画像:星の王子さまミュージアムにて撮影

おそらく、ここまで読んでこのような疑問を持つひとがいるかもしれない。「コロナがあるのに、寝たきりがお出かけして大丈夫なの?」と。

その疑問に答えるならばこうなる。リスクを覚悟して出掛けている、と。私はコロナが罹りやすい病気ではない。だがきっと、私がコロナに罹るとマズイ状況になると思う。じっさい、主治医にも「罹ったら大変になるかもしれない。」と言われている。けれども、危険だからと言ってリスクを回避するために外出しないということはしたくない。波はあるけれど、コロナは続くもの。それに、コロナだけが病気だけが私の全てではない。難病患者であるが、ひとりの人間でもある。リスクがあっても、外に出て他者の存在を感じて偶然の出逢いを楽しみたい。そうやって、私はコロナ禍を生きている。なので、もちろん遠出もする。だから、星の王子さまミュージアムにも行くのだ。



寝たきりでお出かけために必要なもの

さて、少し話がズレてきたので元に戻そう。まず大前提として、寝たきりなので当然ひとりでは出掛けられない。私がお出かけするときには、必ず介助人と車いすが必要だ。とはいえ、車いすといっても、ショッピングモールなどにある車いすではない特殊な車いすだ。そうすれば、外出先でも寝たきりに近い状態でいられるようになる。(ちなみに私が実際に使用している車いすは下のリンク先のもの。)

さらには、車などでの移動の際も、まるで家にいるような感じで寝たきりに近い状態で過ごせるように、電気毛布の機能があるUSBブランケットと普通のブランケットなどを持っていく。車内でも車いすに乗っていても身体を動かさないため、異常なほど脚元が冷えやすい。そうすることで、冷え性気味の身体を温めてくれる。

しかし、このUSBブランケット一枚では脚を覆うことが出来ない。だから、普通のブランケットも使う。欠点といえば、事前に容量が多めのモバイルバッテリーを用意しておかないといけない。でも、このUSBブランケットのお陰で、冷え性な私でも外出先でも温もりを感じることが出来る。

そうして、じっさいに車で長距離移動するときは、後部座席に座ってシートベルトして先ほどのブランケットを膝元にかけて横になる。雑音が気になって疲れちゃう人間なので、SONYのノイズキャンセリングイヤホンで周囲のノイズを消して音楽を聴きながら目をつぶる。

ただ、車内過ごす際にひとつ注意しないといけないことがある。それは、車の中で景色をあまり観ないようにすること。いやいや、それこそ、ドライブの楽しみのひとつではないかと思う方もいるかもしれない。でもそうしないと、目的地に着く前に体調が悪くなり、楽しめなくなる。最悪の場合、外出先で体調を崩したせいですぐにUターンして帰らなきゃいけなくなる。

だからこそ、外出先では家に帰るまでの体力を常に考えながら、優先順位をつけて行動しなきゃいけない。あれもこれも楽しむ体力がないからこそ、そうするしかないのだ。



いざ、星の王子さまミュージアムへ

今回の目的は、星の王子さまミュージアムの展示。星の王子さまミュージアムの展示は、サン=テグジュペリの生涯を追う内容だった。

展示は撮影禁止なので、
星の王子さまミュージアムの入場チケットを。

私には、お出かけをより楽しむために事前学習としてインターネットでざっと調べて、余裕があったら目的の場所に関連する書籍など読む癖がある。今回は『星の王子さま』(岩波書店)はもちろん、サン=テグジュペリの『夜間飛行』『人間の大地』(光文社古典新訳文庫)など、事前に読んでいた。それらの事前学習のおかげで、展示内容はものすごく楽しめた。

だが、施設内にあるミュージアムショップに行くと、星の王子さまのキャラクターショップみたいなミュージアムショップだった。そのくらい、星の王子さまのグッズだらけだった。「サン=テグジュペリはどこへ?」と思うほど様子が変わる。サン=テグジュペリがパイロットであったからか、妙に値段が高い小さな飛行機グッズがほんの少しあった程度。展示内容とは違い、ショップではサン=テグジュペリの要素が消えている。なんだか展示と繋がっていない感じがした。

ミュージアムショップも撮影禁止なので、園内の星の王子さまを。こんな感じに星の王子さま関連の像がたくさんある。

あと、全体的に通路が狭かった。展示物があるエリアなのに、通路の幅が大人二名分の広さしかないところが多かった。サン=テグジュペリの写真などが飾られている場所でじっくりと観たくても、あとから入場して歩いてくる人たちにとっては、車いすが通行の邪魔になってしまう。閉園するから仕方がないとはいえ、そこが少し残念だった。



寝たきりでも、外出したい

星の王子さまミュージアムに行った時もそうだったが、遠くに出掛けた当日は激痛とめまいで眠れないことが多いし、次の日は必ず寝込むし、その後も調子が不安定で何日かお休みをしないとダメになる。それでも、刺激を求めて外に出たくなる。いくら病気で寝たきりとはいえ、家にずっと居るのも飽きてくる。寝たきり生活だと偶然や刺激が減って、単調な生活になりやすい。そして、ひとと接するのが苦手でも、ひとが恋しくなる。孤独感が襲ってくる。寂しさを紛らすためにも、外に出たくなるのだ。

偶然も外出も他者との接点も少ない寝たきりの暮らしでは、視野が狭くなりやすい。だからといって、視野を広げるために情報を得ようとインターネットを利用すると、あちこちでアルゴリズムなどによって似たような動画や情報、「あなたにおすすめ」と書かれた広告などをたくさん見させられる。そんな環境下では、自分が見ている非常に狭い範囲内のことしかで物事を考えていないことに気づくのが難しくなる。かといって、こんなにも生活に染み込んでいる便利なインターネットを手放したくない。寝たきりだからこそ、こんなにも生活を便利にしてくれるインターネットから離れられない。だから、定期的に外出することで、その状態から抜け出そうとしている。

そんなことを考えながら、部屋に飾られている星の王子さまミュージアムで購入した王子さまのぬいぐるみを見る。母が「せっかく来たのだし、お土産を買ってあげる〜!」と嬉しそうな声で話していたのを思い出す。あのとき、母が気遣ってくれたおかげで、この王子さまのぬいぐるみがある。いまは線維筋痛症の痛みなどで寝ていないとつらいけど、あの時頑張ってお出かけしたから、この王子さまのぬいぐるみがお部屋にあるんだ。その時に撮ったスマホの写真も見つつ、過去の自分からエールをもらう。またきっとお出かけできるよと信じて。そうして、つぎのお出かけを考える。

さあ、外の世界へ行こう。



===以下、お知らせなど===

▷のしりこ 公式サイト
https://ricrck.com

▷Twitter
https://twitter.com/ricrck

▷Podcast『のしりこの旅のあいまに』
https://lit.link/ricrck




【サポート募集中!】 普段は難病のせいで全く働けず、殆ど寝たきり状態のなかで活動しております。もしよかったら、サポートしてくださると心がウキウキでキュンキュンです。猫のトラも喜びます。SNSなどでサポートをいただいたことは触れますが、名前などは出しません。よろしくお願いします!