言葉の牢獄である脳みそ

言葉がすぐに出てこない。頭の中に言葉はあるのだけれど、出てくることが出来ない。

脳みそは牢獄だ。言葉の牢獄だ。閉じ込めて簡単に外に出さないようにしている。脳みそというやつは、言葉を閉じ込めている。

わたしの思考を外の世界へ出さないように、脳みそはわたしの思考を厳重に管理している。脳みその監視のおかげで、生まれた言葉は外の世界へ出ることなく、頭の中を漂うだけで、いつしか消えていく。

だから、消える前に言葉を外の世界へ出してやらねばならない。言葉よ。こっちだ、こっちにおいで、と導いてやる。
それがどうしてか。うまくいかない。

頭の中で生まれた言葉はまだ形を持っていない。言葉は外の世界に出てきて初めて言葉になる。

形を持たない言葉を誘導してやることは、難しい。外の世界へ出るまでの道のりはとても長い。形のない言葉は儚くて弱い。途中で息絶えてしまう。そこでわたしの思考は消えるのだ。

この、外の世界へ出るまでの道のりというのは厄介だ。まっすぐな道のりではなく、ぐねぐねと曲がりくねっている。どっちだろう、どっちへ進めばよいのだろう。迷っているうちに、儚い言葉はいつしかその姿を消してしまう。

たまに勢いよく生まれる言葉がある。その言葉はスピードを持って外の世界へ向かうが、この曲がりくねった道のりの壁にぶつかり、残念ながら衝突死してしまう。わたしは衝突死した言葉の残骸を拾い集め、ゆっくりと運んで外の世界へ連れ出してやることしかできない。それで生まれた言葉はとても断片的なものだ。

長く長くゆっくりと思考することで、ようやく曲がりくねった長い道のりを通り抜けることが出来る。ようやく外の世界に連れ出してやることが出来る。それで、言葉、言葉、言葉は少しずつ形になっていく。一度にみんなを連れ出してやることは出来ないから。少しずつ出してやる。脳みそという牢獄から、言葉を逃がしてやる。あやふやな思考を言葉という形にしてやる。

それはとても時間がかかる行為だ。

そうして、牢獄から逃げ出せた言葉たちは、身を寄せあって、わたしの文章となる。

わたしの言葉は外の世界で形を得ることができた。

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