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ヤンヤン、きみは今どうしているの?

学生の頃はよく映画館へ行っていた。学割やレディースデーなど、安く観られる日を利用して単館系のミニシアターへ。アジア映画の講義を受けてからは、中国や韓国映画をレンタルしてたくさん観た。講師は名古屋シネマスコーレの支配人、木全純治氏で、映画の見方を教えてくれた。

社会人になってからは映画を観ることが少なくなったせいもあるけれど、最も好きな映画は、今でもこの頃に観た映画だ。20年以上経っても私の中ではナンバーワン。

『ヤンヤン 夏の想い出』(a one & a two)
監督:エドワード・ヤン

3時間近い長さの映画なのに、観ている途中、このまま終わらないでほしいと願った。ちいさなシアターで味わったその瞬間を、私は今でも幸福な思い出の箱から取り出せる。

タイトルのとおり、ストーリーにはヤンヤンという男の子が出てくる。親戚の結婚式に始まり、祖母の葬式で終わる。冒頭の結婚式のあと、祖母は寝たきりになってしまった。それから彼女が息を引き取るまで、同居する家族のそれぞれの人生の一部を観客は垣間見る。ヤンヤンは、人の見ている世界がそれぞれ違うことに疑問を持つ。そして、カメラで人の後ろ姿を撮り始め、それを教えてあげるのだ。自分では見られないでしょ、と。

あの映画が作られた頃よりも、それぞれ違う理想を求めている人たちがぶつかり合うこの世界で、私はヤンヤンのことを思い出すよ。あの子はどんな大人になったのかなって。だれが何を表現しても受け入れられる、自由のある世界が守られますように。




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