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金を「減らす借金」と「増やす借金」

今回は借金についての話をしたい。
というのも日本人は概して借金を毛嫌いしていて多くのチャンスを逃しがちであり、逆に意図せずリスクの高い借金を平気で行っていると感じているからだ。
しかし、まず言えるのは「金持ちほど借金をしている」という事実である。
借金という仕組みは使い方によって、簡単に貧乏になることも金持ちになることもできる。その違いについて解説をしたいと思う。

なぜ借金は「悪」とされるのか

日本において借金が「悪」とされがちなのは「人様に迷惑をかけるな」という美徳によるところもあるとは思うが、もっと具体的な理由がありそうだ。
教訓というのは、何か強烈な失敗体験のもとに生まれるものである。
そう、日本は「借金で失敗した人」が多い(多く見える)のである。
1980年代のバブル時代、借金をしない人はバカだった。
誰がどう見ても「上がり続ける」株や不動産が目の前にあるのに、その利益の教授に与らないのは損だったのだ。
そこで多くの日本人は景気抑制のために上がりきった高金利下で金を借りまくり、投資をしまくった。そしてバブルは崩壊し、借金をしていた人はみんな借金は悪という単純な教訓を得たのだ。
バブルを経験した人であれば「借金」という言葉に嫌悪感を覚えるのも無理はないだろう。
ちなみに後述するがバブル時代の借金は目的こそ「金を増やすための借金」であるが、使い方を間違ったせいで金を減らしてしまった例である。
つまりそのケースにおいて悪いのは「借金」そのものではなく「借金の使い方」のほうである。

タイトルでも書いている通り、借金の目的には大きく2通りある。
「金を増やすために借りる」借金と「金を減らすために借りる」借金である。
ここを一緒くたにして「借金は悪い」と言ってしまうのは大きな機会を逃している。結論から言うと、資産を増やしたい前提であれば「金を減らす借金は悪」であり、「金を増やす借金は善」である。
ではそれぞれどのようなケースがあるのだろうか。

金を減らす借金

金を減らす借金はいうなれば「その借金をすることで支出が増える」借金である。ここでの支出は主に金利の支払いによることがほとんどである。

生活費のためのリボ払いやキャッシング

最も良くない類の借金はクレジットカードのリボ払いやキャッシングを利用して生活費の支払いに充てている状態である。
両者の金利は非常に高いだけでなく、返済のための支払いがの元本ではなく金利に充てられる割合が増えていく。
「金利返済のために働いている」状態になり悪循環に陥っていく。
このような制度を使わなければ生活が出来ない人が一部いることも理解するが、もし親族から借金を立て替えてもらえるなどの措置がとれるのであれば一刻も早くすべてを完済して金利を支払っている状態を抜け出すべきだろう。

持ち家のための住宅ローン(車ローン)

戦後の国を挙げたマーケティングが功を奏し唯一といっていいほど国民に「悪ではない」と認められている住宅ローンも、金を減らす借金である。
5000万円を35年、金利1%で借りた場合の金利の合計支払いはいくらくらいになるか想定できるだろうか?
答えは約1000万円である。
※加えて手数料等の諸費用が約200万円程度かかる
当然だがこれは家を買うために必要な費用ではない、金を借りるために必要な費用である。
金を増やすか減らすかという観点で言えば間違いなく金を減らす借金であるといえよう。
ただし、住宅ローンは使い方によっては資産運用の効率を上げることが出来る。ざっくり言うと、借りている金利以上の利回りで運用が出来るのであれば低金利で金を借りることは賢い選択といえる。
逆に住宅ローンを借りる前提であれば、最も愚かな選択は手元に大きなキャッシュがあるにもかかわらず投資もせずに現金として保有しながら一方でローンの返済を続けることである。
ちなみに車のローンなども同様である(金額は小さいが金利が高くなる)

金を増やす借金

では逆に、金持ちが好む「金を増やすための借金」にはどのようなものがあるのか。それは簡単に言うと次のような「投資のための借金」である。

証券担保ローン

例えば証券会社で株式や投資信託といった商品を保有しているとしよう。
そうなると、それを「担保」として新たな現金を低金利で借りることが出来る証券担保ローンというローンがある。
このローンをうまく使って投資金額に充てることが出来れば、「1%の金利で新しい現金を調達して、その現金を3%の利回りで安全に運用し、差分の2%を得る」といった資産運用が可能になる。
差分が大きくはないので、ある程度の資産額がなければ得られる金額も大きくはないが、富裕層ほどこうした合法的な錬金術で得られるリターンは大きくなるし、使わないことが機会損失となってくる。

信用取引やFXなどのレバレッジ取引

信用取引やFXはレバレッジをかけて少額で大きな取引をすることが出来る手法であり、危険なイメージを持つ人が多いかもしれないが、本来的にはこういったレバレッジ取引はリスクを大きくするためではなく資金の融通を効かせるために活用する。
例えば、1000万円分ほど投資したい株があり手元にちょうど1000万円の現金があるとする。
これを1000万円で購入すると現金がなくなるので他の投資が出来なくなり、市場の下落時や他の投資チャンスに対応できなくなる。
しかし信用取引を使えば(多少の金利は発生するが)500万円の現金で1000万円の株への投資が出来るため、残りの500万円を「余力」としてキープしておくことが出来るのだ。
金持ちや経験の多い投資家は「同じ投資をするために、より少ない現金で同じ投資をする方法がないか」という発想を常に持っており、それが出来るのであれば喜んで金利を払う。

事業のための融資

一般的な投資とは少し離れるが、経営者やビジネスオーナーが事業のために金を借りるのも同じく「金を増やす借金」である。
「自分で金を貯めてからビジネスをする」という考えは、趣味であれば全く問題ない。しかし他社に勝ってより多く稼ぐためのビジネスの世界では、チャンスを逃す最も愚かな選択である。自信のあるビジネスであればあるほど時間を買うために経営者は積極的に借金を行うし、むしろこの借金の使い方自体が「ファイナンス」という領域であり経営の行方を握る重要な戦略なのである。

借金の使い方で「貧乏」か「金持ち」が決まる

借金というのは、現金と時間を金利で買うという取引である。
この取引が自分の資産の拡大につながるか、縮小につながるかは単純で「その借金を使って金利以上に金を稼げるかどうか」である。
気軽に手を付けてしまったキャッシングやリボ払いの支払いは雪だるま式に大きくなる。こういった安易な選択によって人生を狂わす人は少なくない。
逆に借金をうまく活用して金利以上の金を稼ぐのが投資家や経営者である。
ただ私は貧乏になる借金を一概に否定する気はない。
例えば、ある程度貧乏になるとしても自分の夢だったマイホームを手に入れることが大切なのであれば、住宅ローンは非常にありがたい選択肢だ。
大事なのはそれがどのような借金であるかを自覚して選択していることである。今後、人生において借金をする選択を迫られた時にはそれが自分を貧乏にするための借金か金持ちになるための借金か、一度考えてみることをお勧めする。

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