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116 校内人事の泣き落とし作戦

校内人事が発表され先生たちは新年度に向けて準備を進めているところでしょうか。校内人事のエピソードをひとつ紹介します。

Cさんは教員になって2年目の女性教師です。担当教科は英語で前年度は1年生のクラス担任をしていました。1年間クラスでは大きな問題もなく、平和な毎日でした。生徒との関係も良好で、Cさんを慕う生徒は多くいました。「来年も先生のクラスがいい」と言う生徒もおりCさんは幸せでした。保護者との関係も良好でした。だから次年度は当然2年生に持ち上がると思っていました。

ところは3月初めに校長から「来年度は3年に行ってほしい」と言われたのです。校内人事は個々の教員の希望をもとに校長が最終決定をします。教員は調査用紙に希望する学年、校務分掌、部活動と担任の希望有無を記入します。学年配置は異動や退職、産休予定、経験年数や男女のバランスなどを考慮して決められるので希望通りにならないこともあります。その際は校長から相談が持ちかけられますが、校長に押し切られることが多いです。合理的な理由が示されれば教員も了承することが多いようです。Cさんもそうでした。理由に納得がいけば何が何でも自分の希望を押し通そうというつもりはありませんでした。

「なぜ2年生じゃないのでしょう。学級経営も問題なかったと思いますし、生徒ともうまくいっていましたが」Cさんはとりあえず校長に理由をききました。すると校長は言いました。「いやー、I先生に泣かれちゃてねえ」

I先生というのは新卒の女性教師です。担当教科はCさんと同じ英語です。2年生の担任をしていました。初任で担任、そして2年という中間の学年にいきなり配属され、この1年は苦労が多かったようです。2年生には特に指導の難しい生徒が多くいたからです。

でも、Iさんはその学歴から指導力を見込まれて2年生の担任を持たされたのでした。市内の小中学校を卒業し、高校は県内有数の進学校に進み、大学も県内の国立大学教育学部に進学しました。地元なので勤務する学校にもかつての恩師が何人かいます。校長もそのひとりです。さらに彼女が出た国立大学の教育学部は地元の学校にも多くの卒業生を送り込んでいます。同窓会も人事などで力を働かせているようです。

Iさんが出した次年度の希望は1年生の担任でした。2年生を担任していれば特別なことがない限りそのまま3年生に持ち上がります。でも学級経営がうまくいかず、たびたび生徒から反発を買っていたIさんは校長に直談判して学年を替えてほしいと頼みこんだのです。そして泣き落とし戦術を使ったのです。白羽の矢が立ったのが同じ教科のCさんでした。1年生から3年生への「飛び級(?)」です。

校長がIさんの要望を受け入れたのが自分の教え子だったからかどうかはわかりません。もしそうだとしたら公正さに欠けますし、校長としての資質にも疑問を感じます。Cさんは納得がいきませんでしたが校長に粘られ不本意でしたが要求を受け入れました。


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