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シベニクとトロギール

11月13日(月)
6時15分起床。外はまだ薄暗い。青白く霞んだ中に家々の明かりが見える。すぐ近くに教会のドームが見えた。7時までに荷物を部屋の外に出しておくよう言われていたのでスーツケースをドアの外に置いた。レストランに行くとツアーの人たちはほとんど集まっていて朝食を食べ始めていた。今回の同行者は時間厳守というか「10分前行動」の人が多い。15分以上前から来ている人もいる。時間に遅れる人がいないのはよいことだが、そんなに早く現れなくてもいいのにと思ってしまう。待つことばかりの旅行になってしまったらもったいない。

バスは8時にホテルを出発した。向かうはシベニク。300キロ以上の行程だ。リエカという町を通りすぎるとアドリア海沿岸の道に出た。美しい海岸線をしばらく走る。黄葉が美しい。でも風が強くて時々バスが揺れる。やがて山に入ると雨が降り始めた。雨で外の景色もよく見えない。しばらく行くと雨は雪に変わった。バスの温度計を見ると5度を示していたがそのうち2度まで下がった。バスの中も寒いのでコートを着てマフラーをした。

10時45分「マコラ(Macola)」というレストランに到着、ここで30分間トイレ休憩。バスのドライバーは2時間ごとに休憩することが義務づけられているため、乗客もそれに付き合わねばならない。外に出ると一面雪景色。すごく寒い。入り口付近ではたばこを吸っている人がたくさんいる。男性も女性も吸っている。兵士の姿も見える。建物内ではおいしそうなパイが売られていた。巨大なクマの剥製も飾られている。コンセプトがよく理解できない。


レストラン「マコラ(Macola)」

休憩後、再び雪の山道を走る。雪で高速道路が閉鎖されたため一般道を行く。雪はだんだん深くなる。途中で何台かの車が立ち往生して止まっている。私たちのバスもスリップし始めた。他のバスのドライバーがやってきてタイヤの下に土を入れたりしてくれて何とか抜け出せた。スリップしたときはどうなることかとはらはらしたが、助け合いの精神が生きている。

昼食は「テラ・マルク(Terra Marc)」というローカルレストランで取った。サバのグリルとスープ、デザートはムース。サバはちょっと痩せ気味。添えられたレタスも貧弱だった。陽気な男性ウェイターがまだ料理がサーブされていないのに「おいしい?」と日本語で聞いてきた。どこかで覚えたのだろう。でも使いタイミングまではマスターしていないようだ。でも次に料理を運んで来た時には「召し上がれ!」と言った。言葉はこうして使えるようになっていくのだ。実践的な学習が効果を発揮しているようだ。素晴らしい! 食後にコーヒー(15kn)を飲んだが、クロアチアのコーヒーは全般的あまりおいしいと思えない。好みもあると思うけど…

シベニクに到着したのは午後1時過ぎだった。シベニクはアドリア海に面した海岸線のほぼ中央に位置している。現地ガイドの案内で雨の中を1時間ほど散策した。世界遺産の聖ヤコブ大聖堂を見学。大聖堂は1431年から1555年まで120年以上の歳月をかけて石だけで建造された教会で、石づくりの教会としては世界最大級という。使用されているのは地元産の石灰岩と沖合のブラチ島産の石灰岩および大理石。ブラチ島の石はホワイトハウスなど世界各地の建物に使われているらしい。

大聖堂の正面にはキリストと12使徒のレリーフがある。入り口の前の広場には聖ヤコブ大聖堂の建設に携わったダルマティナッツの彫像がある。北側の入り口は「ライオンの扉」と言われ、ライオンがアダムとイブの彫像を支えている。大聖堂は最初ゴシック様式で建設が始められたが途中でルネッサンス様式に変更されたため両者が融合した建築となっている。外壁には71人の顔の彫刻がある。建設に関わった有力市民をモデルにしていると言われるが、なぜか動物の顔も混ざっていた。ドームの上部には大天使ミカエルの像がある。大聖堂の中に入ると中央のバラ窓がまず目に入った。他にも16世紀のヴェネチア派の画家たちによって描かれた美しい祭壇画が目を引く。

聖ヤコブ大聖堂の正面入口
大聖堂の外観
市民の顔の彫刻

聖ヤコブ大聖堂のあとは共和国広場に面した市庁舎に向かった。聖バルバラ教会を見ながら旧市街の入り組んだ路地を歩いて行った。私は路地歩きが大好きだが、この町の路地歩きは特に楽しかった。入り組んだ細い路地の両脇に石造りの古い建物が立ち並び、何が現れるかとワクワクしながら歩いた。15世紀に使われたものさしが壁に埋め込まれているのを目にした。何のための物差しなのだろう。必要な時にここに来て測ったのだろうか。用途がよくわからなかった。路地巡りは楽しさが尽きなかったが、時間があまりないのが残念だった。これもまあツアーだから仕方がないか。時間が来たので聖フランシスコ教会の前を通ってバスターミナルに戻り、次の目的地トロギールに向かう。

壁に埋め込まれたものさし(右側)と案内板

 
午後3時にシベニクを出発したバスは4時半にトロギールに到着した。トロギールは世界遺産の城壁都市だ。旧市街を散策した。小さな島が市街地になっており、1本の橋で結ばれている。橋の向こうに城壁の北門が見える。ガイドの案内で北門から旧市街に入るとイヴァナパヴラ広場が見えてくる。広場に面してロブロ大聖堂、市庁舎、市庁舎の時計塔、ロッジアがある。ロッジアというのは屋根付きの柱廊のことで、アドリア海沿岸ではよく見かけるという。柱廊の下はオープンスペースになっている。広場をまっすぐ進むと城壁の南門(海の門)に行きつく。門を出ると海沿いのエリアだ。海岸沿いにヤシの木が植えられたプロムナードが続く。南国の雰囲気が漂うが、雨のため南国気分に浸るという感じではない。城壁の先に要塞が見たが、時間がないので行くのはやめた。海の向こうにチョヴォ島という島が見える。島とは橋でつながっている。橋の上がカメラスポットだと言われたのでY子と二人で写真を撮りに行った。雨の中でも建物の入り口で煙草を吸っている人が何人もいた。


チョヴォ島への橋

17時10分、トロギールの旧市街を後にしてホテルに向かう。20分ほどで「ホテル・メディーナ(Hotel Medena)」に着く。巨大な合宿所のようなホテルだ。部屋で一休みしたあと、19時からビュッフェ形式の夕食を食べる。食べ物のクオリティは非常に低い。中国人と韓国人がやたらに多く、食べ物があっと言う間になくなっていく。ツアーの人の中には彼らに押しのけられて憤慨している人が何人もいた。
 
早々に部屋に戻って寝る準備をする。Y子は今日もスーツケールの中身をベッドの上に広げている。私はパソコンでしばし情報収集をしたあと眠りについた。今日も無事に過ごせたことに感謝しながら。
 
 

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