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何か惜しいドラマ『Lの世界』

『Lの世界』は、2004年から2009年にかけて放送されたドラマで、ロサンゼルスに暮らす、レズビアンの女性たちに焦点をあてた内容でした。

HBOのライバル局であるSHOWTIMEで制作されたこと。

過激な性描写が積極的に取り入れられたこと。

複数の女性が登場する群像劇スタイルであったこと。

また、番組開始時のコピーが
「Same Sex,Different City(同性同士、違う街)」であったりしことなどからLA版SATC、レズビアン版SATCなどと宣伝されました。

この3年くらいで初めて最初から最後まで、じっくり一気見したのですが、私の感想は、何か惜しいドラマだったな、という印象でした。

とにかく全体を通して思ったのは番組のトーンやストーリーに一貫性がない。ということです。

シーズン1は、主人公ジェニーが、彼氏と暮らすためにLAにやってくるところから始まります。

LAの中でもLGBTが多い地区として知られるウエストハリウッド。
多様性にあふれた隣人たちと知り合いになったことから、ストレートだと認識していたジェニーがレズビアンの世界に足を踏み入れていきます。

以下、全シーズンのネタバレを含みます。

シーズン1では、ジェニーの性的嗜好の目覚めを描き、人として成長していく過程を描く。と思いきや、、、。

シーズン2〜4
ジェニーの複雑な人物設定(トラブルメーカー)の背景には、過去に男性に性的暴行を受けたことが原因であるという後付け設定がプラスされ、自傷行為を始めます。自殺未遂をしようとしたり、ストリッパーになったり、痛々しい展開が続きます。
また、同性カップルが子供をもつために人工授精や養子縁組に奮闘する様子が描かれるほか、癌の闘病記、結婚式のドタキャンなどが描かれます。

シーズン5〜
ジェニーが突然作家として成功します。
ところが、周りにいるレズビアンたちを参考に、半フィクションを書いたことで、コミュニティから反感を買ってしまいます。
その一方で、本が映画化されることになり、ジェニーが監督をつとめることになります。←そんな簡単に急に素人が映画監督になれるの?!(笑)

シーズン6(ファイナル)
唐突に倒叙ミステリーになります。
冒頭でジェニーが殺されますが、結局犯人や、事件の詳細は明らかにされず、、、。何じゃこりゃ!?とフィナーレを迎えます。

というわけで、とっ散らかっていますよね・・・。
結局何がテーマだったんだろう・・・という。

個人的に残念だなと思ったのは、もっと面白くなるポテンシャルがあったのに、中途半端になってしまったということです。

カミングアウトや、病気、育児など興味深いトピックがいっぱいあったのに、結局ふわふわしたまま進行して終わってしまった感じ。

同じように複数の女性が登場する群像劇の「SATC」や「デス妻」は、それぞれ作中で路線変更などがなされていても、"前向きに生きる女性達をコメディタッチで明るく描く"という全体的な一貫性があったと思うんです。

ところが『Lの世界』は、ヒューマンドラマとしてもコメディとしてもミステリーとしても中途半端で一体何が描きたかったのか・・・。

とにかく、レズビアンがメインで、過激な性描写がある、話題性のあるものをなりゆきまかせでつくってしまった雰囲気。

もっと前向きかつ丁寧に、ストーリーに一貫性をもって制作していれば、作品として完成度が高まったのでは、と思わずにはいられません。

また、LAが舞台とアピールしているものの実際は、ほとんどLAで撮影されていないんですよね。
予算の都合があったのでしょうが、「SATC」のように、LAに実在するおしゃれスポットなどがたくさん登場していれば、また違った楽しみ方ができただろうなあと思います。

最後に、良かったと思う点について。

1.エピソードタイトルが毎回「L〜(邦題では彼女達の〜)」で始まっており、大変脚本家たちのこだわりが感じられたこと

2.初期シーズンの冒頭は、LGBTに関係する歴史や出来事をタイムリープして描いており、こちらも大変丁寧につくられていたこと

3.シーズン2以降登場する、オープニングテーマソングと映像がとてもかっこいいこと

4.日本語吹き替えが永島由子さん、唐沢潤さん、日野由利加さんなどが担当しており、まるで「SATC」のキャリーと「デス妻」のリネットやガブリエルが共演しているみたいで面白かったこと


スタイリッシュでもコメディでもなくジメジメとした雰囲気のドラマになってしまったことはとても残念です。
それでもテレビ史上初の、レズビアン女性を中心に描いたドラマとしてエンタメ界において重要な役割を果たしたことは間違いありません。




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