巴里乃 のりタマ

昭和時代からパリに住む、一応現役ピアニスト(🚹)です。 多くの人の憧れの街パリですが、…

巴里乃 のりタマ

昭和時代からパリに住む、一応現役ピアニスト(🚹)です。 多くの人の憧れの街パリですが、住めばそんなに花の都でもなかった話などを、自分の秘話恥話昔話と共にお届けできればと思っています。 ビックリかつヒンシュクな内容が多々あるかも知れませんが、お読み頂けますれば光栄です。 のりタマ

最近の記事

パリ ゲイ術体験記 vol.37「アジ専の脅威」

フケ専•デブ専•アジ専 …といった単語がゲイの業界用語にあって、その道の会話の中ではごく普通に使われている。 フケ専 = 年配の人を好むフェチシスト..の略であり、デブ専はその名が表すまま。 アジ専はアジア人ばかりを好む人達のことで、これは相対的に見てまあまあ評判がよろしくない傾向にある。というのは、アジ専人間の特徴としてアジア人を食い入るような舐めるような視線で見詰めてきて、性格がねちっこそうで爽やかさゼロ。外見も放射能を強烈に浴び続けた人みたいに力強さがなく痩せていて、そ

    • パリ ゲイ術体験記 vol.36「ある偉大なミュージシャンの話」

      20数年前になるが、知人のマリンバ奏者のCD録音に携わる機会があった。 マリンバ&サクソフォン、マリンバ&アコーディオン..といった色々な組み合わせの二重奏もので、たった1曲だったが私がピアノを受け持った。 マリンバは木琴の脚付き親玉みたいな打楽器で、私くらいの世代の者は小学校で木琴を買わされて授業で叩いて鳴らしていたこともあって、マリンバの名前は日本では割りと知られている。 けれど、ここフランスでは無名な楽器らしくて「マリンバと合わせたよ」と言えば「マリファナを吸ったのか?

      • パリ ゲイ術体験記 vol.35「スーパーレジはプチストレス」

        たまに日本に帰った時の個人的楽しみの1つに、スーパーマーケットでの買い物がある。 スーパーに並ぶ全商品まるごとを暮らしているフランスに持ち帰りたいと切実に思うほどに欲しい物だらけ。 日本のスーパーは品揃えが豊か(過ぎ)で生鮮食品の鮮度や管理よろしく、サービスも優れている。 ただ、この数年前から自分には苦手な物が登場した。それは、一人で精算する自動支払い機。 世の中の人々はとっくに慣れて軽々と使えているのだろうけれど、私にはどうしても気持ちの悪いマシーンで、楽しい買い物後に急に

        • パリ ゲイ術体験記 vol.34「ジェルバ島 熟女の悦しみと嗜み」

          フランスに住んでからの初ではなくて、人生初めての"夏のヴァカンス"と銘打ったツアーに参加した時の話。 友人のピエールは、普段は何だかよくわからない仕事をしている人だが、そのよくわからない仕事の中の1つに「ジェルバ島タラソテラピ―•ツアー」企画というものがあった。たまに話は聞いていたから、定期的に参加者を募集していたようである。 「のりタマはこんなに長くフランスに住んでいるというのに、一度も夏のヴァカンスに行った事が無いなんて信じられないよ..」と彼からも言われ続けて数年が過

        パリ ゲイ術体験記 vol.37「アジ専の脅威」

          パリ ゲイ術体験記 vol.33「アコーディオンは恨み節」

          2年にも満たない期間だったが、自分より15歳年下の若いアコーディオン奏者のボーイフレンドがいた時期があった。 フランス人アコーディオン弾きが連想させるイメージは、柔らかな身のこなしにベレー帽をかぶり、脇にはバゲットでも抱えたパリジャンの香りをプンプン漂わせる姿だったりするかと思うが、このロランはだいぶ違っていた。 似合わないからやめておけばいいのに、真っ赤なベレー帽を漬け物石みたいな巨大な頭に乗せた姿は大黒天。お洒落に着ているつもりの水平服は下から肥満の肉塊に圧迫されて、妊

          パリ ゲイ術体験記 vol.33「アコーディオンは恨み節」

          パリ ゲイ術体験記 vol.32 「貧乏中華」

          テレビ番組や雑誌のパリ特集などを見ていると、パリにはお洒落でセンスがよく美味しいレストランばかりがあるように勘違いしてしまう人も多いのではなかろうか? 一部のフランス人が、日本人は毎日ヤキトリと寿司だけを食べていると思い込んでいるように。 パリの中心地にあるポンピドゥー•センターから北に少し歩いたマレ地区の一角に、小さな中華街がある。どの店も安くて、雰囲気はレストランと呼ぶよりも雑然とした食堂と言った方がぴったりな店ばかり。 あちこちの看板には"温州なんとか.."と書いてあ

          パリ ゲイ術体験記 vol.32 「貧乏中華」

          パリ ゲイ術体験記 vol.31「XL男優とムソルグスキー」

          ゲイ映画ではないヘテロ•セクシャル(異性愛)のエッチ映画なんてものを観に友人に連れ出された日に、帰りに寄ったパリのブローニュの森で、さっきまで映画の中で演じていた男優の主役といきなり出逢って話しかけたら、スクリーンで見た彼の商売道具を惜し気もなく私の目の前でご披露される.. このあまりに奇妙な話は、私のような人間を惹き付ける得もいわれぬ怪しさがこの偶然を導いたような気がしてならない。 森で度肝を抜かれて半ば放心状態で帰宅した私は、まったく知らなかったその男優の事を調べまくっ

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          パリ ゲイ術体験記 vol.31「XL男優とムソルグスキー」

          パリ ゲイ術体験記 vol.30「XL男優」

          極度なシャイで強度な赤面症の友人JC君は、行きたくて仕方ないゲイバーにも怖くて行くことができずに、若い頃は常に悶々としていることが多かったらしい。 私は決して勇敢とか豪胆な性格ではないけれど、怖いもの無し的なやや図太い神経をしているので、JC君からは変に頼りにされてSOS案件を受けることがたまにあった。 私達がまだ若かった頃の事、ある日JC君から電話があって、エッチな映画館に行ってみたいので連れていって欲しいと言う。 ネットで好きなものを見れる今日でこそポルノ映画館などは殆

          パリ ゲイ術体験記 vol.30「XL男優」

          パリ ゲイ術体験記 vol.29「才能とは何ぞや」

          まだ人生の後半にもならない頃から、自分が研いてきた特技とか持って生まれた能力或いは与えられた才能 …を使って生きるという事について、ほぼほぼ興味が無いというか他人事みたいに思っている事が、自分の中でも漠然とした不思議さとしてあった。 生来の怠け者の性格が原因かも知れないし、社会の中で競争したり醜く嫉妬したりが細胞レベルで嫌だったから..などと自分なりに分析したけれど、これという答えは見つからなかった。 私の仕事はかっこよく言うならばピアニスト。 とはいっても、世の中にごく少

          パリ ゲイ術体験記 vol.29「才能とは何ぞや」

          パリ ゲイ術体験記 vol.28「日本語忘れました」

          自分の周りの友達を眺めてみると、外国語に長けている日本人のなんと多いことか。 「そういう貴方もパリでフランス語を操っているのだから同じでしょ?」と日本に行くと言われるけれど、その国にある程度住んでみれば必要に迫られるので、自然となんとか少しは話すようにはなる。 語学センスに乏しい私は、今の記憶にあるだけの少ない数の単語をやたら回転させて使っているだけで、長い滞在年数に比例せず相変わらずの下手くそなフランス語を喋って暮らしている。 対話で自分の考えや感情を理解してもらいたいとい

          パリ ゲイ術体験記 vol.28「日本語忘れました」

          パリ ゲイ術体験記 vol.27 「北アフリカ羊物語」続編

          ある秋の中頃、私が当時暮らしていたチュニジアでは犠牲祭で盛り上がっていた。 犠牲祭はラマダンが明けた直後と約2ヶ月後の2回行われる大事な祝い事で、日本でいうならば盆や正月みたいなものであろうか。ラマダンの実施時期は毎年10日ほど前倒しで移動していくので、犠牲祭の日も自動的に毎年日付けが違ってくる。 それは、主に各家々で生きた羊を丸ごと買って捌いて食べる、家庭内でのお祭りのようである。 もともと私は羊肉が大の大の大嫌いで、辺りの家という家の敷地から羊を焼く煙が上がっている犠牲祭

          パリ ゲイ術体験記 vol.27 「北アフリカ羊物語」続編

          パリ ゲイ術体験記vol.26「北アフリカ羊物語」

          住み慣れた時間の長さと同量の無気力感を背負ってしまっていた苦痛のパリを離れて、北アフリカはチュニジアに一時移住していた。 フランス、特にパリはゲイにはオープンな場所だから窮屈な思いはしなかったけれど、その点においてはイスラム圏のチュニジアは特異な土地であった。 宗教上ではゲイそのものが存在していてはならない事になっているが、かといって中東アラブ諸国みたいにゲイを死刑に追い込むような明らかに狂った思想は全然なくて、ある意味ではそんな人間がいても楽しんでしまうような自由さすらも感

          パリ ゲイ術体験記vol.26「北アフリカ羊物語」

          パリ ゲイ術体験記 vol.25「北アフリカ恋物語」

          私は以前に北アフリカのチュニジアに1年半ほど暮らしてみた事がある。 あまりに長いパリ生活に疲れを覚えて希望も持てなくなっていたので、先の計画もろくにしないでエイッとばかりにチュニジア行きを決めてしまった。 チュニジアには短いヴァカンスで訪れた事があって、豊かな日射しと地中海の碧い海、それに決して豊かそうな暮らしではなさそうなのに屈託のない笑顔を見せる人々の姿が魅力的に映っていた記憶も行く決断を手伝った。 あるフランス人の友人がちょうどチュニジアで事業を始める事になり、そのタイ

          パリ ゲイ術体験記 vol.25「北アフリカ恋物語」

          パリ ゲイ術体験記 vo.24「とんでも外科医師団のパリアテンド」

          多くの海外在住の日本人が経験していると思うのだが、何かと日本からの雑用や分野外の仕事が舞い込んでくる事が多い。 パリ暮らしが長い私だからという理由で、当然のごとくフランス語がペラペラだと思われて通訳やら翻訳やらを頼まれるのだが、残念ながら上等なフランス語とは無縁な人間なので迷わずパス。ガイドは資格もいるし名所の歴史にも疎いので、これもパス。 なので、まだなんとかアテンドならば出来そうだと引き受けるのだけど、実際にやってみると相手が予想外の奇人変人さんだったり思わぬ事件がおきた

          パリ ゲイ術体験記 vo.24「とんでも外科医師団のパリアテンド」

          パリ ゲイ術体験記 vol.23「我が母の空港税関捕物帖」

          日本にいる母が私が暮らすフランスに毎年一回出かけてくるが、毎回手ぐすねを引きながらそれを待っている者がいる。 それは昔行きつけになった安い中華食堂のオーナーで、パトリックという西洋名前だが元々は華僑である。 適当な時期になると「ママはもうじき来るんでしょ~?」とお決まりのセリフで電話を入れてくる。 その目的は毎年同じで、ローレックスの腕時計を母のパスポートを使って免税で買う事である。 私も外国人だけど、フランスの滞在許可証を持っているので免税の権利が無いから頼まれても役立たず

          パリ ゲイ術体験記 vol.23「我が母の空港税関捕物帖」

          パリ ゲイ術体験記 vol.22 「ケチの女王様」

          フランスに来て初めてできたボーイフレンドが私にとってのケチの王様だった事を白状したが、同じように女性版が存在していて、その人はフランスに来て初めて教えを受けたピアノの師匠であった。 単なる自分のピアノの先生と呼ぶ訳にはいかない世界的に名の知れたピアニストであるから、ケチ女王様としてここに登場して頂いてよいものやら多少迷ったのではあるが… 私が小学生の頃に東京で彼女の大リサイタルを偶然聴いており、その華麗なピアニストから将来自分が教えを乞うなどとは、当時は夢にも想像しえなかった

          パリ ゲイ術体験記 vol.22 「ケチの女王様」