巴里乃 のりタマ

昭和時代からパリに住む、一応現役ピアニスト(🚹)です。 多くの人の憧れの街パリですが、住めばそんなに花の都でもなかった話などを、自分の秘話恥話昔話と共にお届けできればと思っています。 ビックリかつヒンシュクな内容が多々あるかも知れませんが、お読み頂けますれば光栄です。 のりタマ

巴里乃 のりタマ

昭和時代からパリに住む、一応現役ピアニスト(🚹)です。 多くの人の憧れの街パリですが、住めばそんなに花の都でもなかった話などを、自分の秘話恥話昔話と共にお届けできればと思っています。 ビックリかつヒンシュクな内容が多々あるかも知れませんが、お読み頂けますれば光栄です。 のりタマ

最近の記事

パリ ゲイ術体験記 vol.51 「メトード•ローズ 苦節10年」

昭和生まれの私が育った頃は、ピアノの入門書はほぼオートマティックに「バイエル教則本」であった。 たまに、フランス渡来の「メトード•ローズ」で習っている子供を見ると、田舎では「な、なんとモダンな」的な雰囲気すらあった。 ドイツ人バイエル氏が作ったかの教則本には1曲たりとも題名のついた曲が無くて、106曲の練習曲をしらみつぶしに進めていく事になる。 忍耐強い日本人の子供だからこそ最後まで到達できるメトードだと思うのだが(今頃の日本の子はどうだか知らないが)、その後に続くツェルニー

    • パリ ゲイ術体験記 vol.50「えっ、性転換したって!?」

      最近、往年の美男俳優の代名詞アラン•ドロンが亡くなった。 とりあえず記憶からすぐに出てきたのは映画「太陽がいっぱい」だけど、パリで一度だけ生ドロンに至近距離でお目にかかったことを思い出した。 ある年のパリ日本大使館での新年祝賀会の集まりに招かれて出かけた時に、お鮨の屋台に並んでいる列で目の前に横入りしたおっさんがアラン•ドロンだったから。 文句を言うにも街のタバコ屋で並んでいる列ならいざ知らず、場所が場所であるし相手がおっさんでもかのアラン•ドロンとなるとさすがに見て見ぬふり

      • パリ ゲイ術体験記 vol.49「猫飼いたいムズムズ」

        私は猫バカ気味である。 と同時に猫アレルギーでもある。 実家にいた中学•高校の時期、多い時で15匹の猫と暮らしていたことがあった。おかげで、その頃は常に猫アレルギーによる鼻や目のかゆみ、くしゃみと共に鼻水を垂らしながら集中力ゼロの生活を送っていた。 家は山の麓にある大きい古民家なので、15匹の猫が家屋に悪さをしようが特に問題でもなかったし、猫達も田舎家の広い敷地に各々が気に入った場所をみつけて過ごしていたから特に猫屋敷にも見えなかった。 裏山に山菜採りに上がる時には、ついて

        • パリ ゲイ術体験記 vol.48「人種差別あれこれ」

          パリを訪れて観光名所以外をあちらこちら散策してみたら、地域毎にだいぶ雰囲気が違うとびっくりされる方がいらっしゃる。 その中でも、10区のChâteau d'Eau (シャトー•ドウ)駅や18区のChâteau Rouge (シャトー•ルージュ)駅に降り立ったならば、そこはもうアフリカ。 黒人男性ばかりが集まっていると、見慣れていない私達にはそれだけで凄みを感じるのに、彼ら特有のマイペースな動きやまくしたてるような会話の渦に埋もれるとなんだか気圧されてしまう。 土地が広い大陸

          パリ ゲイ術体験記 vol.47「汗だくカミングアウト」

          23歳でパリ留学に来るまで、ゲイである事のカミングアウトなどは考えていなかったし、特に誰かに理解してほしいもなく過ごしていた。 自分の性格はまあまあ女子っぽいと思春期には一応自己分析していたが、勘が良い人ならば貴方が勝手にゲイではないかと見きわめてね程度くらいに考えて暮らしていた。 世の女性で自分の周囲にゲイが全くいなかったり、いたとしても交流もなく過ごしてきた場合は、私のような男と関わっていても勘が作動しないので、疑ってみることすらしない事もわかってきた。 パリで私が在籍

          パリ ゲイ術体験記 vol.47「汗だくカミングアウト」

          パリ ゲイ術体験記 vol.46 「ピアノ独学は損だらけ」

          家に閉じ込められていたコロナ•パンデミックの頃から、趣味の大人のピアノ•レッスン需要が増えているようだ。 過去に少しピアノを習った事があったが長くは続かずにピアノの蓋は閉じたままになっていたが、この時期に音楽を楽しむ事の大切さや価値を再認識し始めた人が多いようである。 私のもとにも自分のペースで楽しみながらレッスンを続けている大人の生徒さんが7人ほどいる。 その生徒さん達を眺めていて思うことは、現在独学をしながら上達を期待している人は、さっさと独学はやめた方がよろしいという

          パリ ゲイ術体験記 vol.46 「ピアノ独学は損だらけ」

          パリ ゲイ術体験記 vol.45 「おまけクロワッサン」

          パン大国フランスの多くのスーパーマーケットには独自のパン売り場があって、バゲットなどのポピュラーな種類のパンはその場所で焼いていることが多い。ただ、大抵は低得点な味わいのパンだけど . . . 私が以前住んでいた界隈のスーパーにも同じようなパン売り場があって、それでも焼きたてのまだ暖かいパンに当たるとまあまあ美味しくて嬉しいものである。 そこのスーパーのパン売り場だが、いつの頃からか女性販売員から超大柄強面なお兄さんに変わっていた。 初めてその人からクロワッサンを買った時、

          パリ ゲイ術体験記 vol.45 「おまけクロワッサン」

          パリ ゲイ術体験記 vol.44「悪夢のワイナリー•コンサート」

          フランスと日本を頻繁に往復する気力が横溢していた頃は、ホールでのリサイタル以外でもサロン•コンサートで弾く機会がまあまああった。 気軽なピアノの小コンサートなんてのは、質にこだわらなければ88鍵全部鳴るピアノがあれば何処だってできてしまう。 かくゆう自分も実家の玄関先のたたきにグランドピアノを引っ張り出して、面した庭に座布団とミニ•キャンドルをあちらこちらに置いて、"手打ち蕎麦食べ放題つきショパンの夕べ" なるヘンテコなイベントをやった思い出がある。 声がかかれば何処にでも出

          パリ ゲイ術体験記 vol.44「悪夢のワイナリー•コンサート」

          パリ ゲイ術体験記 vol.43「名物ピアニストの珍ペット」

          ある日の夜中3時過ぎに電話が鳴った。かけてきた主はピアニストのJ子さん。 ふらふらと電話にでた私に、チチが急死してどうしてよいか判らない、いきなり絶望の淵にたたされて脱力感しかない…と意気消沈、嘆きの極み。 昨日まで元気だったのに何故なのか. . . 最期ならばもう一声聞きたかった . . .急死するような可能性のある持病があるとは医者は言わなかった. . . 手厚く弔ってやる方法は. . .?などなど、止む事のない彼女の話を友達の役目として、真夜中ではあったが神妙に話につき

          ¥300

          パリ ゲイ術体験記 vol.43「名物ピアニストの珍ペット」

          ¥300

          パリ ゲイ術体験記 vol.42「珍家主と名物ピアニスト」Part.3

          フランス留学を許してくれなかった両親と、長年に渡ってほぼ断絶状態だったJ子さん。 J子さんの母上が他界されたこともあって、パリで暮らしているJ子さんを父上が初めて訪ねてくることになった。 「お父様は再会をさぞかし楽しみにしておいででしょうね」と言っても、「知りませんわよ。どうだっていいわ」…と他人事のようにいたってさばさば。 折角の機会なので、大リサイタル準備中で練習に追われているJ子さんを置いて、ご挨拶がてら滞在中の父上の1日パリ観光をかって出た私。 J子さんのザンバラ長

          パリ ゲイ術体験記 vol.42「珍家主と名物ピアニスト」Part.3

          パリ ゲイ術体験記 vol.41「珍家主と名物ピアニスト」Part.2

          私の見てきた日本人女性ピアニストを思い起こしてみると、人物的なパターンがある程度似通っていることを発見した。 一番少ないのは清楚系で、ほぼ絶滅危惧種。パリでの30年で出会ったのはとりあえず1人だけ。 この業界、やたら気が強すぎる系と無駄に意識高い系がむごたらしく多い。 比較的身体の小柄な日本女子が、ピアノという男性的な楽器を幼い頃から黙々と忍耐強く孤独に耐えながらも精進し内的な強さを宿して、その上に辛辣なピアノ界の中で自らを頼んで生き残る術も身につけているだろうから、そうなる

          パリ ゲイ術体験記 vol.41「珍家主と名物ピアニスト」Part.2

          パリ ゲイ術体験記 vol.40「珍家主と名物ピアニスト」Part.1

          ピアニストのJ子さんは、日本の音大を出てから何年間も両親から嫌な見合い話を押しつけられてうんざりしていた。 彼女にはかねてからパリでフランス音楽を勉強したいという願望があったので、30歳を過ぎてはいたが親に留学を申し出ることにした。 だが、天塩にかけて育て上げた一人娘を立派な家に嫁がせる事だけが夢だった両親は逆上し、ほとんど親子断絶された状態でJ子さんはパリに旅立つことに。もちろん仕送りなどはびた一文しないときつく言い渡されて。 数年間貯めていた少しのお金を持ってパリにやっ

          パリ ゲイ術体験記 vol.40「珍家主と名物ピアニスト」Part.1

          パリ ゲイ術体験記 vol.39「仏人連れて日本アホツアー」

          ただいま2024年の5月下旬。 ピアノに向かう日々から素人ボランティア•ツアーコンダクターに一時変身した私は、合計9人でのパリ発日本ツアーの真っ只中である。 東京滞在で始まった旅は、続いて関西圏を廻ったあと九州は別府と長崎を訪問、そして再び東京という15日間のツアーである。 日本初上陸の人ばかり。 過去にもフランスから日本、またその逆パターンのグループ旅行を何度も企画して(正確には、させられて)素人ツアーをやった経験があるので、その大変さは多少なりとも理解して臨んだつもりだ

          パリ ゲイ術体験記 vol.39「仏人連れて日本アホツアー」

          パリ ゲイ術体験記 vol.38「親切のすゝめ」

          日本人は大変親切であるという外国人旅行者の専らの評判であるが、それって本当か?とたまに思う。 日本国内において他所からやってくる西洋人には概ね親切に接するみたいであるが、いざ自分が外国に行った場合に出くわした同胞人にはひどく冷たいのを私は知っている。 人を知るには旅行をした時に一番よく判るとかねがね思っているから、日本国民が親切という噂にモヤモヤとした猜疑心がわいてくる。 いつだったか、ある全盲の日本人青年がフランスにやってきた。 彼は若い声楽家で、毎年夏にフランスのド田舎

          パリ ゲイ術体験記 vol.38「親切のすゝめ」

          パリ ゲイ術体験記 vol.37「アジ専の脅威」

          フケ専•デブ専•アジ専 …といった単語がゲイの業界用語にあって、その道の会話の中ではごく普通に使われている。 フケ専 = 年配の人を好むフェチシスト..の略であり、デブ専はその名が表すまま。 アジ専はアジア人ばかりを好む人達のことで、これは相対的に見てまあまあ評判がよろしくない傾向にある。というのは、アジ専人間の特徴としてアジア人を食い入るような舐めるような視線で見詰めてきて、性格がねちっこそうで爽やかさゼロ。外見も放射能を強烈に浴び続けた人みたいに力強さがなく痩せていて、そ

          パリ ゲイ術体験記 vol.37「アジ専の脅威」

          パリ ゲイ術体験記 vol.36「ある偉大なミュージシャンの話」

          20数年前になるが、知人のマリンバ奏者のCD録音に携わる機会があった。 マリンバ&サクソフォン、マリンバ&アコーディオン..といった色々な組み合わせの二重奏もので、たった1曲だったが私がピアノを受け持った。 マリンバは木琴の脚付き親玉みたいな打楽器で、私くらいの世代の者は小学校で木琴を買わされて授業で叩いて鳴らしていたこともあって、マリンバの名前は日本では割りと知られている。 けれど、ここフランスでは無名な楽器らしくて「マリンバと合わせたよ」と言えば「マリファナを吸ったのか?

          パリ ゲイ術体験記 vol.36「ある偉大なミュージシャンの話」