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世界は電気信号で出来ている、はず

こんばんは。
ガゼーの研究室でもない所に、今夜もよくいらっしゃいました。
せっかくだからお話をしていかれませんか?
私は生命は魂ではなく、体内でひっきりなしに起きている化学反応による発電でしかないと思っているんです。
ですからゲームと言えども、中のキャラクターには生命が宿っているようにしか思えず、自分で育てたシーマンが旅立てず、次々と餓死してしまったのは悲しいばかりでありました。

なぜそんなことを、と思われましたね。
年を取ると連想ゲームのように思い出して行かなければ、記憶というものを脳内から発掘できなくなるんですよ。

そう、きっと体内電気が若い頃よりも微力になっているのかもしれない。
そして、若くて電気で満ち満ちているならば、拾えない信号を拾ってしまう事だってあるかもしれません。

あれは子供が生まれたばかり、そう、シーマンが発売されたぐらいの頃だったかもしれない。

私達はお金のない夫婦で、古い古いアパートに住んでいました。
六畳に四畳半、そして台所、という長方形の部屋です。
窓と玄関が一直線なのは風水的に悪いと後に聞きましたが、当時の私達には部屋は古くとも広く、窓も大きくて明るい、住みやすい部屋でした。

夫の帰りは遅く、しかし、テレビなどが設置できるのが一番奥の部屋、という事で、私と息子は四畳半の部屋に横になって夫を待つ毎日です。
奥の部屋で寝れば良い?
でもそうすると、夫がテレビを見ながらくつろぐ、と言う事が出来ないじゃないですか。そこに子供を寝かせたら子供だって起きてしまうし。

さて、そんな毎日のとある晩です。
四畳間で赤ん坊と横になっていた私の耳に、玄関の鍵が開く音が聞こえました。夫が帰って来た。しかし、赤ん坊の世話で疲れていた私は、帰って来た出迎えるどころか布団から起き上がることが出来ませんでした。
お帰りと声をかけるどころか、眠くて眠くて瞼は下がる一方。
私の顔は押入れの方を向いていたけれど、瞳が映すものは床スレスレの情景だけ。
そんな私の視界の中を、黒い靴下が歩き去って行きました。
足取りはしっかりなのに、私を起こさないようになのか音は立たず、彼はまっすぐに奥の部屋へと入って行ったのです。
そのすぐ後に私は何とか体が動き、赤ん坊を起こさないように布団から出て隣の部屋へと向かいました。
「あなた、おかえりなさい」
襖を開けた部屋は、夫の為に電気は点けっぱなしでありましたが、そこに帰ってきたはずの夫の姿はありませんでした。
そして私は気が付きました。
襖が開いて閉まった音を私は一切聞いていない、ということに。

これは疲れた時に見た夢です。
神経がささくれた時は、静電気も起きやすくはありませんか?
だから、おかしな情報をキャッチして、ありもしない怖い夢を見るのです。

「あ、それね。昔そこに住んでいた人が息を引き取った時にね、あの頃はって若い頃の記憶を追いかけていただけ。だから全然悪いものじゃないよ」

どうして霊感がある人は、単なる怖い夢話に余計な現実味を与えやがるんでしょうね。
電気信号のエラーにしてくれよと、おちおち昔話もできないだろうが、と、今日の私は思ったのでした。

駄文にお付き合いいただきありがとうございました。
一回聞いたら錆が頭に残って消えやしない呪いの歌を置いておきます。