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笑う君へ 第三話 「追憶」 〜中編〜

僕、大野○○は小学校でいじめを経験した

理由は、勉強ができて太っていたから

小学生のイジメはたかが知れているがそれでも思い出すと汗が止まらない

中学校は受験して、私立の中高一貫校に入学した

運動部に入ると決め、バスケ部に入部

始めてすぐ面白さに魅せられ、のめり込んだ

きつい練習でやめる同級生もいたが、自分にとっては全く苦にならなかった

2年になるころには先輩と同じかそれ以上に上手くなった

部活は都大会でもいいところまで勝て、

勉強も得意だったから気づけば学級委員までやっていた 

2年の終わりにはU-15で日本代表になり、アジア大会に出場した

最後の夏に向け最高の状態だった

夏休みまであと3日となった日、教室移動中に後輩の女子に声をかけられた


後:今日、部活終わり、体育館裏に来てくださいっ!


それだけ言うとすぐにその場を離れてしまった

申し訳ないが行こうとも思わなかったが、

こちらが返事をする間もなく去られてしまった


〜〜〜〜〜


放課後、指定された場所に行くとその子はすでにいた


後:好きです、付き合ってください!

○:ごめん…



手をこちらに伸ばし頭を下げた女の子には多少気の毒だと思いながら

返事をし帰ろうとする


すると、手をつかまれた

だけでなく、あろうことか手を彼女の胸に押し当てられた



後:ドキドキしないんですか

○:え、いや...

  俺、帰るから!



そういって手を振りほどき、慌てて帰る

この後何が起きるとも知らずに


〜〜〜〜〜

次の日朝練中、生活指導の体育教師が体育館にやってきた

入り口で


教:大野、今すぐ職員室に来い!!


と大声で叫ぶ

何がなんだかわからないまま職員室に行くといきなり怒鳴りつけられた

お前は何をやっているんだ、と

なんのことか分からず思わず聞き返すと、

自分の胸に手を当てて考えろ、だと

そこでピンときたが、それでも怒られる理由がわからない



教:さっき、うちのクラスの××が来て、お前に乱暴されたと言ってたぞ

○:え、いや、乱暴なんてしてないですよ

教:そいつはお前の指紋付きのシャツも持っていると言っていたが

  それも嘘だというんか

○:それは、ほんとかも知れないですね、触ったのは確かなので

  触ったというか触らされたんですけど

教:へらへらと適当なことを言うな


何を言ってもこちらの主張は聞き入れられず、説教は続いた

周りの先生も軽蔑するような目線でこちらを見ている

1時間目の予鈴が鳴り、ようやく解放され、急いで着替え教室へ向かう

廊下を歩いても学校中の視線を感じた

教室に入る直前、聞こえたのは自分に関する悪い噂

突如フラッシュバックする小学校時代のいじめ

吐き気をこらえ、その場から離れる

駆け込んだトイレで授業開始を待ち、その後体育館の倉庫兼部室に向かう

幸い体育の授業はプールだったので、体育館は無人だった

一人の嘘で誰も自分を信じてくれなくなってしまったという虚無感が

中学での努力が消えてしまうんではないかという焦燥感が

胸の内を埋め尽くし、しまい込んだ昔の記憶が呼び起こされる

30分ほどして心が壊れかけたころ、顧問で担任の先生が入り口を開けた



顧:おい、○...○…

若干、怒気を含んだような声がしりすぼみになる



○:あ、せんせー



心ない返答に、ボールから何まで散らかり果てた部屋を見て絶句する



○:片づけるんで...

顧:….○○、○○、いいから一回座れ



顧問は僕の話すことを聞き、理解してくれたようだった

普段の自分からは想像できない荒れ具合も判断材料になったみたいだ

その後家に帰り、放課後は先生が来て親に現状を説明していた

その夜、正確にはその日から、夜、眠れなくなった

意識を手放して30分もすれば恐怖と不安が耳元で囁く

学校内で自分の評価が悪いまま夏休みに入った

顧問の説得もあって、少なくとも部内の表面上は問題なく過ごせた

このまま引き下がっては負けだと感じていたから練習を続けた

バスケの時間以外は眠気と不安で気が狂いそうになるから練習をやめられなかった

楽しかったころとは違うが、これまで以上に感覚は研ぎ澄まされ、上達した

心身の限界をすぐそこに感じながら

迎えた都大会は3位入賞で関東大会へコマを進める

増える注目と期待が、あの日の不安を増長させていく


=====

私は耳を疑った

こんなにも怯えている少年を見て、なぜ誰も彼の話を聞かなかったのか

そうでなくても、彼がそんなことをするような人だとは思わないのに

同時に自身の行動を悔やんだ

気持ちを押し付け、さらには腕をとったこと

ふと背中を軽く叩かれた

泣いて少し腫れた目をこちらに向けながら

少し昔に戻ったような笑顔でこちらを見る彼


○:ありがと、それから、急に突き飛ばしてごめん

  ちょっと気が楽になった

賀:ふふ、それならよかった私もいじめられてるから気持ちは分かるよ

  それでも、ま、○○君は強いと思うよ

  私の憧れだったんだから

○:じゃあ、もうちょっと頑張らないとね

賀:違うの、そうじゃなくて、頑張りすぎないでほしい、かな

  ○○君の楽しそうな姿が見たいから

  きっと応援する人はみんなそう

  辛いときは私がいるから

○:うん...

賀:だからその、大丈夫、うん、大丈夫

  今度は私の番、何があっても助けるから

○:ありがとう...

  ねえ、一回だけ抱きしめていい?

賀:え...うん...

○:じゃあちょっとだけ

  遥香はあったかいね

賀:恥ずかしいから..

○:これ以上はまた泣いちゃいそうだからやめとく

賀:いいんだよ泣いても

○:ははっ、そん時はまた助けてよ

賀:もちろん

○:やっぱり遥香も笑っている時のほうがいいよ

  かわいいもん

賀:か、かわいい?(´///ω///`)

○:うん、そりゃとびっきり

  あ、試合あと10分じゃん、急がなきゃ

  あ~、けど、ちょっと待って

  そうだ、靴ひも片方交換しよ

賀:え?

○:そしたらこれからの試合頑張れるから

賀:うん、もちろん!

○:あと、試合終わったら、会場の入り口の立て看板で待っててくれない?

  その、もう一回、会いたいから

賀:じゃあ、勝ってきてよね?

○:遥香が見てくれるんでしょ?

  負けるわけない

賀:(今、下の名前で読んだ?!!/////)

  都大会で負けたんじゃないの?

○:よく知ってるね、けど関係ないから

  じゃあ、約束ね、行ってくる!

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