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千より大きい数、読めたよ

「300万円札あげまーす。使ってね。」

職員室であやしげなお札を配る彼女は花子さん、小学校3年生。

びっくり発言をする花子さんにみんなが笑顔になった。



今から20年ほど前。

彼女には心疾患があり、移動は車いす。

自分で移動はできるから、本当は色々な体験をしたいけど、心臓に負担がかかるためできなかった。

彼女との算数の授業は私にとって、戦いの場所。

なぜなら、彼女に分かってもらえるかどうか、真価が問われるから。

「大きな数」という学習でのこと。

1憶までの数を読んだり書いたりする勉強。

彼女は、1000までの数をどうにか読むことができた。

1000以上になると、

「うーーーーーーーーん?」

答えられないこともしばしば。

どんな支援をすると、1000以上の数が分かるようになるか。

そんなことを職員室で話すと、師匠と呼んでいる先輩の先生が

「買い物やお金に興味がある子はお金使ったらいいよ。」

なるほど。

とにかく師匠のまねをしてお金を取り入れて学習をすることとした。


まずは、1000円札を使って1000以上の数を読む。

すると、

「1000、2000、・・・・・」

するりと読むことができる。

お金の力はすごい!!

さらに、100円硬貨を組み合わせても、迷わず読める。

1の位、10の位・・・と位の学習までトントン拍子で進んだ。

その後、1万以上の数になると、お札もないのでどうしようか悩んでいると、またまた師匠が

「花子さんに作らせればいいじゃない!」

お札を花子さんが作る???

目からうろこだった。

確かに「じぶん銀行」っておもちゃもあるくらいだし、いいかもしれない。

そうして、お札の大きさの無地の紙を何枚も持ち、いざ授業へ。

「今日は銀行屋さんになりまーす。」

まずは好きな名前をつけようと伝えると、

「花子銀行」

と自分の名前を付けた。

銀行屋さんは好きなお札を作ってくださいねと伝えると、

花子さんは100万円札を作りたいと話した。

黒板に書かれている位の名前を見ながら、

「1000000」

と書く。

ピンポーン!

すると、花子さんは満面の笑みを浮かべる。

更に、

「3000000」

と書き出し、

「300万円でーす」

と楽しそうに作る。

その後も何枚もお札づくりをして、その授業の中で、1000の位までしか読めなかった子どもが、1憶の位まで読めるようになった。


子どもが分かるきっかけを作ることができて、私が幸せになった。

子どもが勉強楽しい、もっとやりたい、そう思える授業づくりが好き。

今日も、子どもも大人もHAPPYな授業をしていきたい。

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