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262 人生は苦。幸福は苦を乗り越えること

 その都度その都度、やらなくてはいけないことをやりながら生きているのです。目的があって、その目的を目指して生きているわけではありません。命が自然に流れてゆくのです。

 しかし、何をして生きていても、生きることは「苦」なのです。お腹がすくことも、満腹になることも、「苦」なのです。仕事があることも、仕事がないことも、「苦」です。独身でいることも、所帯を持つことも、「苦」です。在家生活も「苦」です。私たちのような出家生活も「苦」です。

 「苦」以外、何もないからこそ、人間が「幸福」を目指すのです。しかし、「これが幸福です」と、具体的に言えないはずです。幸福の経験はないからです。

 「幸福になる」と思って、実際我々が行っている行為は、「苦をなくすこと」なのです。仕事がないことが「苦」だと思う人は、仕事があることを「幸福」だとするのです。命は短いこと、必ず「死ぬことが「苦」だと思う人は、「不死の境地」が幸福だと考える。この場合、このような境地があるかないかは、我々の経験で確かめることはできません。

 というわけで、「幸福とは、苦を乗り越えること」だとしたほうが具体的な定義になると思います。

『一分で読むブッダの教え』第5章 仏教が教える「生きること」の本質《生きることは苦》アルボムッレ・スマナサーラ サンガ出版【いまここに生きる智慧―シスターが長老に聞きたかったこと 鈴木秀子 氏との共著 (2007年) p20】

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