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密室物ミステリー (716文字)

 ミステリー小説好きなら、一度は密室物に興味を持ったことがあるのではないかと思います。

 密室物は、閉鎖され誰も出入りできない部屋の中で犯罪(多くは殺人)が行われるだけでなく、解放的な場所でも、降り積もった雪や、海岸の砂など周囲に人が近づいた痕跡がない状態下でも成立するので、意外にバリエーションを楽しむことができます。

 また、「密室」という段階でその物語が、意図的に作られた物語感が醸し出されるので、リアルな犯罪とは別個のお伽話感が出て楽しく読むことができると思います。

 私は、エドワード・D・ホックの『長い墜落』が好きですが、ホックについては「率直に言って、ホックの小説に手品の楽しみ以上のものを求めても得るものは少ない。」(『有栖川有栖密室大辞典』(有栖川有栖文、磯田和一画 創元推理文庫 p174)という評価もありますが、私は「あまりに見事な手品は、その他の不都合な部分を観客に気付かせない。」と思っています。

 なお、これは密室に限った事ではありませんが、私は主人公が犯人を含めた関係者を呼んで一同に会し、そこで謎解きをしていくというプロセスが基本的に好きではありません。
 それをする意味が理解できません。犯罪捜査の天才が持つ自己顕示欲の賜物(たまもの)なのかも知れませんが、集められた人達は、真犯人を除いて、犯人の犯行手口や探偵の着眼点などにはさほど関心はないでしょう。私が関係者ならそう思います。
 アガサ・クリスティのポアロの場合は、「捜査開始からずっと関係者から小バカにされてきたポアロが、復讐の場としてお高く止まった連中を集めて恥をかかせる場である。」と思うので、これは良しとしています。
 

#密室 #ホック #ポアロ  

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