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求「大阪圭吉賞」

 ミステリ作家というか探偵小説作家の故大阪圭吉さんは、プロ野球選手だった故沢村栄治さんとは似た経緯を持っています。
 二人ともその業界で有名な人で、実力者でもありました。
 そして、先の大戦に従軍し戦死しています。
 しかし、プロ野球の故沢村さんは現在「沢村賞」という形で名前が残っていますが、探偵小説作家の大阪さんはほとんどの人から忘れ去られています。
 私としては、ミステリ界に「大阪圭吉賞」がないのを残念に思っています。
 私は、「ミステリは文学的であってよい。」という考えですので、故大阪圭吉さんの作風とは異なるともいえるのですが、自分の主張と異なかろうがなんだろうが、優れた作品を多数発表した作家には相応の名誉が与えられるべきだと考えます。

 だいたいミステリ(探偵小説)に、「本格」とか「変格」とか名付けることに異議があります。「本格」というと何か主流という感じがするのに対し、「変格」というと亜流(「第一流の人に追随し、ただそれを真似するだけで独創性がなく、劣っていること。」広辞苑)という感じが付き纏います。

 謎解きを主眼とするミステリ小説を「本格」と呼ぶようようですが、ミステリ(mystery)には、秘密とか謎という意味がありますから、社会はミステリだらけということになります。だから、仕事で分からないことは、すなわち謎ですから、それを解明する物語はミステリ小説になり得ます。でもそんなの自分以外に、そして、自分の後継者となる人以外に関心を持つ人がいるでしょうか。

 結局、多くの人が関心を持つ刑事事件、さらに普遍的な関心事である殺人とそれにまつわる謎を解明する物語が小説の主題として選ばれることになります。ミステリという分野が確立する前は、文学作品でもミステリっぽいものがたくさんあるのはこういうことなのではないかと思います。

 さて、故大阪圭吉さんですが、執筆時が戦前ですから、作品の背景に「古い時代の不気味さ」があります。その分、夜読むと怖いとも言えますが、今から見ると技術的に劣る方法で犯罪捜査に当たる人たちや、恐怖を克服して犯人を探索する人たちの「頭脳に掛ける意気込み」みたいなものを感じます。だから、いわゆる本格探偵小説なのに登場人物に少なからず感情移入してしまいます。

 私は故大阪圭一さんの本(私が持っているのは創元推理文庫です。)は、面白いと思います。

以上

#大阪圭吉 #創元推理文庫

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