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フランス革命思想の輸出方法 (1333文字)

 何十年も前に『ドイツ参謀本部』(渡部昇一著 中公新書)を読んだので記憶が曖昧ですが、そのときに思ったことを書いていきます。
 書店でこの本を見たときは、ドイツ陸軍のカッコイイ姿が描かれているのかと想像しました。「だったら読まなくていいかな。」と思いながらその本のページをめくってみると、ナポレオンの大軍にプロイセンが対抗するためには①国民皆兵制度、②新型の白兵戦、③師団方式の軍編成、④軍全体にわたる参謀制度、が必要であるとシャルンホルスト(後述)が考えていたことが書かれており、この本が軍事に関する歴史書だと思いました。特に、①国民皆兵にするためには農奴を解放して国民とし、さらに徴兵することで実現するという発想は、革命ではないにしても革命と同様なことを実現するのであり農奴の所有者からのすさまじいい反対が予想されます。皇帝だっていい顔はしないでしょう。

 フランス革命⇒ナポレオン戦争⇒対ナポレオン軍対策⇒農奴解放⇒国民皆兵⇒徴兵⇒大軍を組織してナポレオン軍を迎え撃つ

 ナポレオンの征服戦争に対抗するために農奴を解放するというのは、フランス革命と同様に国民国家成立には血が流されるということだろうか、フランス革命の思想と革命の思想の輸出とは別なんだなぁと思いこの本を買うことにしました。
 その後この本は、なんやかんやあって別の出版社から発行されています。私はそっちの方も買いました。
 「この本の予備は必要」と思いました。それくらい私にとって衝撃の内容でした。

 このような大きな思想の変化を歴史に見出だそうとするなら、日本史より世界史の方が事例がより多いだろうと思い、徐々に世界史関連の本を多く買うようになりました。

 この本の前半の主役はゲルハルト・ヨハン・シャルンホルストです(「シャルンホルスト」の名は、ドイツの戦艦の名前にもなっています。)。
 彼は、「出自から見ても外見から見ても、プロイセン将校としては落第のはずであった。それなのに法外な条件まで呑んでプロイセン軍が彼を採用したのは、・・・一にかかって彼の知力にあったと言わなければならない。」(54ページ〜55ページ)。「採用」とあるのは、シャルンホルストがハノーヴァー軍陸軍(少佐でした。)からプロイセン軍に採用願を提出したからです。

 『戦争論』で有名なクラウゼヴィッツもシャルンホルストの薫陶を受けています。

 この本の後半は、ドイツ参謀本部の消滅への道筋を書いています。

 「プロイセン=ドイツ参謀本部は、近代史の動向を左右するほどの意味を持つ組織上の社会的発明であった。しかし、それはビスマルクという強力なリーダーとモルトケという有能なスタッフの組み合わせの時だけ、めざましい効果を示したにすぎない。その盛りの時には奇跡を生むほどの力を示したのに、それは極めて短い期間しか続かなかったのである。」(193ページ)
 これが、著者の渡部昇一さんのドイツ参謀本部評になると思います。

 ドイツ参謀本部は軍人のエリートの集団だったと思いますが、それでもビスマルクのような希有な政治能力者無しには機能しなかったということなのでしょう。

#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 #ドイツ参謀本部 #シャルンホルスト

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