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NHKに頼みたいこと (2)

 前回投稿でNHKに頼みたいことを2つ書いたが、もう一つ大事なこと忘れていた。FMラジオとインターネット・ラジオ番組の充実だ。今のご時世を考えると、おじさんの戯言たわごとにされてしまうだろうが、一応書き留めておく。

ラジオ

 インターネットとSNSの急成長の陰で、「既存メディア」の低迷・衰退が激しく、特にラジオなんて、聴取率は超低空飛行のようだ。特に若い人で。

 歴史的には重要なメディアで、今だって、数は減っているが、特に年齢が高い層や、住んでいる地域や職業によっては、重要な情報源である。

 ニュース、気象・災害情報、道路・鉄道運行情報など、必要な情報をタイムリーに流してくれる。テレビと違い、働き「ながら」情報を入手できるところも良い。

 突然、大声で「中古車買取の王様」だの電話番号や社名を連呼したり、くら〜い声で、自動車保険を売り込んだりする宣伝も無い!

 でも、私が特にお願いしたいのは、音楽・芸術・芸能など文化系番組の充実だ。

 昔は、クラシックやジャズ、ロックやポップスから歌謡曲まで、さまざまなジャンルの音楽をわりと長時間続けて流していた。何しろ宣伝がないし、今みたいにやたらとトークも入らないので、良かった。番組に集中するのも、「ながら」でもOKだった。

 そう言うのは、もう流行はやらない? 確かにそういう一面もあるだろう。聴取率・視聴率=世論の多数決社会ではね。でも、文化は多数決?

 音楽だけではない。日本には、世界に誇る伝統芸能だってある。例えば落語は、ラジオで聞くと、味わいが深くなる。講談だって、浪曲だって、義太夫だって聴いてみたいものは、いろいろあるのです。

 文化勲章が発表されるたびに思うのは、多くが高齢の受賞者の演目を、見たことも聴いたこともないことだ。お金と時間がなければ、能も狂言も、古典芸能に接する機会は限られた人にしか無い。こちらは、ラジオより、NHK教育テレビの方が向いているかもしれないが、「音源」は、限りなくあると思う。

インターネット

 NHKのインターネット事業「進出」については、放送法との関連で、つい最近も①「本来業務」か「補完業務」か、②「民業圧迫」(=民放を圧迫)?とか言う報道があったと思うが、いやはや何と遅れた議論だろう。

 日本のラジオがつまらなくなったというか、そもそも音楽番組が大幅に減ったので、海外のインターネット・ラジオを聴く機会が増えた。感心することが多い。

 例えば英国の公共放送BBCは、数十のネット局を展開し、ニュース・解説番組・多様な音楽・多様な語学と、多彩なメニューを世界的に展開している。まあ、かつての植民地大国ならではという側面もあるが、BBCテレビやドキュメンタリー、文化・教育特集などを含めると、ラジオでもテレビでも、レベルの高い放送を次々に繰り出し、BBCシリーズの名作は、本になったものも多い。

 スイスもドイツもオランダも進んでいるし、シンガポールやインドネシアなどアジアも、中南米も、まさに世界的に、少なくとも日本よりは進んでいるというか、日本が遅れすぎているように見えてしまう。

余談ですが

 放送法の話題に触れたので、ちょっと脱線する。このところ、「捏造ねつぞうだ」「言ったことを正確に記録してない」「言ったX言わない」の、レベルの低い「放送法談義」が盛んだ。そんな暇があるなら、放送事業者あるいはその「監督者」としての見識を示すような、まともな議論をして欲しい。

 「放送法」と「電波法」が最近一部「規制緩和」されたようだが、その主目的は、地方放送局の経営支援だったように記憶している。民放は、確か「地域独占」で権利を保障され、戦後長く胡座あぐらをかいてきたのに、よく言ったものだと私は憤慨している。

 で、その放送の内容は? 視聴率アップ、スポンサー営業強化、番組の下請け外注などの取り組みは良く聞くが、番組の質の向上の話はあまり聞いた記憶がない。多くはネットワークを広げ、全国一律の番組を流し、地域発の番組は縮小し、年一回の行事で表彰・放映するくらいしか見たことがない。ニュースは新聞から買うことにして報道部門をどんどん縮小し、優れたドキュメンタリー番組は、日曜深夜の皆が寝静まった頃に放映する始末で、往年の気概も感じられない。

 経営不振で倒産する企業だってたくさんあるのだ。放送事業者は、先ず気概を取り戻し、見識を示してから、生き残りを考えて欲しいと思う。

 アメリカでは、市民や財団などが基金を作ったり、寄付したりして、独立したメディアを支える文化と社会の仕組みがあるようだ。マードック氏に次々に買収されてしまうのを防ぐ意味もある。それが期待できそうもない日本では、見識ある番組を放映する放送局は、スポンサー収入だけに頼らなくて済むように、少額の受信料を払っても良いと、個人的には思っている。ちなみに、スイスのネット局の個人会費は、月額1.99ドル(約280円)で、あとは寄付か政府補助金のようだ。

(了)


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