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不親切な本

意識内の本屋に置いてある本は、内容が薄くて不親切だ。
この本はこの子の記憶や守護霊達の記憶、過去世の記憶などを元にして作られている。
この子は、1ページ全体に「早起きは三文の得とは三文しか得にならないことを示す」と書かれていたり、「朝が元気なら一日元気」などと書かれた本を手に取って見ていた。

この本屋でのこの子のお気に入りの本はAIが作った絵本の「天皇の黒い猫」だ。
絵は顎が長くないアニメの竹取物語風の帝が黒猫をひたすら可愛がる内容だ。
この絵本は最後までただ猫を可愛がるだけなので教訓は得られない。
ここの子供向け風に作られた「山幸彦と海幸彦」は酷いものだった。
表紙を開くと、女性風の土偶の顔を長くしたような山幸彦と海幸彦のプラスチック製の顔が二つ並んでいる。
山幸彦は緑で海幸彦は青い顔だ。
口元はどちらも僅かに開いている。
顔の下のボタンを押すと山幸彦と海幸彦がお互いに罵り合う仕掛けになっている。
その言葉は、現実世界の放送禁止用語まで含まれているから驚きだ。

また、この子が手に取った白い小さな本はページがライター型に切り抜かれていて、その中に半透明の白いライターが入っていた。
ライターの底は本と糸で繋がっていてページ上には「火は紙で良く燃える」と書いてある。
不思議に思いこの子がライターの火を点けると本は燃えてしまった。
何かトラブルがあると、この世界ではドローンカメラが飛んで来る。
この小火事件はすぐにこの世界のニュースになってしまった。

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