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Re:Break 1

ーーーーーーpipipi

「ん、、、」

視界に色が戻った。
いつも聞こえるアラームの音共に
ふと周りを見ると、そこはいつもの部屋。




「キm


そう言いかけて気付く。
清潔すぎる。





フローリングの色ってこんな色だったっけ。
朝日の入り込んだ部屋。
カーテンなんていつ開いたのが最後だろうか。
既に開いていたカーテンを見て思う。


カーテンの縛り方なんてまるで、







「やっと起きたか。」


「、、、。」

「え?何?」

「な、なんでいんの?結婚式は?」

話すのなんていつぶりだろうか。心臓が飛び跳ねる。


「寝ぼけてないで、早く起きてくれる?」

困惑顔とはこのことだろうか。
いや、これただキレてるだけだ。



「ごめん。」


「ていうかアラーム止めて?うるさい。」



バタンと閉じられた扉を眺めてみても、
一向に状況は読めない。
この胸の動悸は止めようがない。
あ、でもアラームは止められる。



そう思ってアラームを見た僕は、




【2020年 9月】





一度考えることをやめた。











「もうわけわからん。」


この感想が全てを支配している。

さくらが“石”を取り出して、目の前が真っ白になって。
でもまだ信じない。過去にいるなんて信じない。


『今、○○の家の前にいる。』


例えそんなさくらのメッセージが表示されてる端末が
2年前使っていた端末であってもだ。




『説明しろ。なんだこれは?』


即、既読。


『メッセージ上じゃ伝わんないから家入れて。』


即、既読無視。


『既読無視するな
 既読無視するな
 既読無視するな
  既読無視するな』

即、未読無視。





「入れろーーーーーーーー!!!」


とうとう玄関先で発狂し始めた。
まだ家には奈々未がいるというのに。


「めんどくせぇ。」


リビングに続くドアを開けながら、そう呟いた。
そしてまた一つ謎が生まれる。





奈々未がいない。






リビングにも台所にもいない。
トイレにもいない。
どこにも、いない。



「もうわけわからん。」


部屋の中で1人、天を見上げた。









「説明しろ。」



日の入る僕の部屋のリビングで、
優雅に朝ごはんを食べるさくらに迫った。


「でも連絡無視したし。」

「いやいや。何も言わずにこんなところ
連れてきたのさくらじゃん。」

「こんなところって。大事なとこでしょ?」

「大事でもなんでもない。
 捨てたいんだよ。こんなとこ。」

「なんで?」

「なんで?って、そりゃそうだろ。
 思い出すからだろ。色々。」


のらりくらり躱すさくらに苛立ちを覚えた。


「ここは私が選んだ家じゃん。」

「は?」


そんなことはない。
ここは僕と僕の親が決めた家だ。










「あんた結局就職どうすんの?」


大学4年の夏。母から言われた。



「東京になった。」



ありとあらゆる試験に落ち続けた僕が手にした一発内定。
上京しなければいけないのは少しめんどくさいけど、
新しい環境に行ける楽しみの方が勝っていた。



「家とかはどうすんの?」

「それ決めるんがめんどくさいんだよ、、、。」 

「まぁね、、、。」



しかし数日後、



「あんた、こんな家はどうよ?」

母が家を勧めてきた。超優良物件を。
駅近、コンビニも近い、目の前にパン屋がある。
ていうか、家賃安い。
ありえないほどの優良物件。









「母さんが勧めてきた家だぞ、ここ。」


どうやっても
さくらの入る隙間なんてないだろ。



「私が○○のお母さんに言ったんだよ。
 あの物件がいいよーって。」

「いや、なんで東京に行くこと知ってんだよ。」

「、、、○○のお母さんに言われたの。」



そういえば、
妙にうちの母さんと仲良かったっけ。



「はぁ、、、。んで?
 ここから出るにはどうしたらいいんだ?」


もうこれ以上詮索しても無駄な気がしたので
本題に入ることにした。



「玄関から出なよ。」

「そうじゃねえよ。」

「どういうことよ。」

「俺もバカじゃないからなんとなくわかる。
 時間が戻ってんだよ。
 どうやったら元の時間に帰れるんだよ。」

「あー、、、。そういうことね。
 じゃあ外に出よっか。」







「なにこれ?」

玄関を開けていつもパン屋。
記憶と同じ風景はそれだけだった。



「パン屋に、実家に、
元職場に、思い出の公園に。
 全部思い出の土地でしょ?」


その通りだった。
その通りだからこそ、理解ができなかった。


言い忘れたが、実家は愛知だ。
パン屋はもちろん東京の家の前にある物だ。
元職場ももちろん東京だ。
思い出の公園は、、、どっちもだ。


「なんで、、、こんな、、、?」



あべこべなんだ?


「ここはね、別世界なんだよ。
 この石が作り出した別の世界なんだよ。」


さくらはそう言って
浜辺で見せてきた石を取り出した。



「これはね?
 この石をかざした人間のターニングポイントばかりを
 集めた世界に飛ばすものなの。」





「、、、は?」





「自分の過去で変えたいポイントはなに?」

「、、、別にねぇよ。」

「奈々未さん?だっけ。
 あの人と付き合ったこと、後悔してないの?」

「、、、してないよ。」

「あれだけ尽くして、意味もなく振られて。
 本当に後悔してないの?」

「してないって!!!」

「嘘だよ。じゃあなんで音信不通になったの?」

「、、、。」

「全部○○のお母さんから聞いたよ?
 仕事もやめたんだってね。」

「、、、。」





うるさい。




「奈々未さんと付き合ってから○○なにした?」

「、、、。」




うるさい、うるさい。





「友達のことも家族のことも、私のことも。
 全部無視して尽くしきって。結果振られて。」

「、、、うるさい!!!!!」





「ねぇ、そんな過去を消せるんだよ?
 今しかチャンスはないんだよ?」

「うるさい!!そんなチャンスいらない!
 俺を元の世界に戻せ!」



「、、、やっと一人称が戻ったね。」



「どうやったら元に戻れるか、
 それだけ答えろ。それ以外喋るな。」

「過去を変えること。」

「だから、、、!」

「何か一つ、過去を変えない限り戻れない。
 それが、この石を使う条件なの。」



もう、何もかもにイライラする。
俺はその場に座り込んだ。

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