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Re:Break 3

家を出て徒歩五分。
オレンジの看板を立てたパン屋がある。
名店の佇まいとは言えないけれど、
どこか風情を感じさせるパン屋。

良き匂いのする方へ向かえば
自ずとそのパン屋につくとも言われるそのパン屋は
僕と奈々未が最初に出会った場所だった。













「やっぱり、パン屋からなんだね。」


さくらは手を後ろに組んで満足そうについてきた。


「別についてこなくても、、、。」


理解がまだ追いついてない
この世界を見渡しながら、
そう溢した。


「ダメ!!すぐどっかいっちゃうもん!」

「行かないし、行けないし。」


そう言うと、さくらは眉を顰めて首を少し傾けた。


「いや、どういうこと?っていう顔やめて。」

「、、、。」

「はいはい。すぐどっか行きますよ。」

「だよね。」


顰めた眉は自然な位置に戻った。




「てか過去ってさ、どうやって変えるんだよ?」


ふと思ったことをそのまま口にしてみた。


「この石に願うだけでいいよ。」


さくらは浜辺で見せてきた石を摘んで見つめた。



「、、、そんなんどこで売ってるんだよ?」
「買ってない。貰った。」



間髪入れずに答えが返ってきた。


「貰った?
 そんな魔法の石を持ってる人がいるわけ、、、。」
「いたの。」

話を遮るかのように、さくらはそう言った。


「、、、まぁどっちでもいいけど。」
「あ、パン屋着いたよ!」


深く考えるのはやめにした。











店は前となんにも変わってなくって、
ガラスに写る自分だけが年を取っていた。

「いい匂い。」
「うまいんだ。ここ。」

目線はガラスに写る自分を見つめたままだった。

「なんでここに来たの?」

「奈々未とはここで最初に会ったんだ。」

「ふーん。職場の先輩なのに?」

確かにな。そう返そうとした時だった。




「なんでパン屋の前で突っ立ってんの?」




あの頃と変わらない君がそこにはいた。
初めて会った時と同じ服で、立っていた。

「あ、、、いや、まぁ何となく?です。」

「ていうか今日なんでそんなに他人行儀なのよ。」

「それも、、、気分?」

「ねぇ○○?誰なの?」


さくらはなぜか僕に腕を組みながら尋ねた。


「私?私は、橋本奈々未って言います。あなたは?」

「私、○○に聞いたんですけど。」

「なんだか嫌われてるみたいね、私。」

さくらが腕を掴む力が少し強くなった気がする。

「遠藤さくら。僕の幼馴染だよ。」

「ふーん。よろしくね?さくらさん。」

「どうも。」

「それで?また買うの?クリームパン。」

「あー、、、うん。そうしようかな。」

「あの!!」


さくらは腕を解き、奈々未の前へ行った。


「急にどうしたの?」

「○○は、クリームパン嫌いなんで!」







「奈々未さんはどんなパンが好きなんですか?」

「クリームパンかなぁ。」

「へー、、、そうなんですね。」

「何、子供っぽいって思った?」

「いや、、、幼心を忘れてないんだな、、、と。」

「やっぱり子供っぽいって思ってるじゃん。」

そう言うと、どちらともなく2人で笑った。

「カバーできてなかったっすね。」
「全然だね。」

「でも、、、僕もクリームパン好きです。」

「へー。合わせたりしてない?」

「してないですよ。」

そう言うと奈々未さんは照れ臭そうにして、

「嘘つけ。」

俺のおでこを一回ついた。






「そうだっけ?
美味しそうにクリームパン食べてるイメージ。」


トングに映る歪んだ奈々未の目はこっちを見ている。


「まぁよく買ってたよね。」

「よく買って”た“?買って“る”でしょ?」

「まぁまぁ、、、細かいことは置いといて!」

さくらがあんぱんをトレーに置いて近づいてきた。


「○○!公園で食べよ!!」


いつのまにか会計を終わらせた
さくらは店を飛び出して行った。


「さ、さくら?」

「いいよ。行っといで。
 それぐらいで怒ったりしないよ。」

「、、、悪い。」

「その代わり、、、夜は一緒にいてもらうから。」


その奈々未の言葉には反応できなかった。
聞こえないフリを、した。











公園に行くとさくらが話しかけられていた。

「ちょいとそこのお嬢さん?悩んでるようだね?」

恐らく年上の背筋の伸びたマダムが、
真っ白なフィルターを指で挟みながら煙を吐いた。

「魔法を使ったのかい?」




さくらとマダムと俺の間に風が一陣
それは3人の体を冷やすのに十分だった。

さくらはパン屋の袋を握りしめて、
マダムは煙を纏わせて、
俺はただ立ってる。

けれどもそれ以上のプレッシャーだけがそこにはあった。




「坊や?あの子には気をつけな。」 


最初に口火を切ったのは、マダムだった。


「あなたにさくらの何がわかるんですか?」

公園の砂がフワりと空を舞う。

「あたしを舐めるんじゃあないよ。
 それぐらい、見たらわかる。」





「あの子はね、真っ赤に染まっちまってる。」



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