![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86454687/rectangle_large_type_2_7b35bb338d28f2ca243fd89f6febf199.png?width=800)
君と僕の話 5
「容態は安定しています。
あとは目を覚ますのを待ってあげてください。」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86515638/picture_pc_937985eeddc7c5ae55de9fd11f0ec7b7.png?width=800)
決して若くはないが、背筋の伸びたお医者さんは
ゆっくりと私たち親子にそう言って去っていった。
「ありがとうございます、、、。」
お母さんは涙交じりにお医者さんの背中へ
お礼を言った。
「お姉ちゃんはなんで倒れたの?」
怖かったけど気になって聞いてみた。
「お仕事のストレスが原因らしいわ。」
「そうなんだ、、、。」
「まぁでも、大事に至らなくて良かったわ。
ごめんね?学校早く出ることになっちゃって。」
「いいよ全然。家族の方が大事だもん。」
「なら良かったわ。
正直お母さん、1人じゃどうかなりそうだったから。
、、、ほら、史緒里ちゃんのことだってあったし。」
「そう、、、だね。」
ちょうど3年前、史緒里ちゃんは亡くなった。
その時病院にいたのは、お姉ちゃんと○○君だった。
▽
「史緒里、、、。なんでだよ。」
重い雰囲気の中切り出したのは○○君だった。
それでもお姉ちゃんは黙ったまま。
思えばこの時から、
お姉ちゃんは様子がおかしかったのかもしれない。
目の動きが一定じゃなく、下唇を噛み締めていた。
「美月?」
「、、、。」
「お姉ちゃん?」
「、、、うん?どうした?」
「○○君が呼んでたよ?」
「嘘?」
「大したことじゃないからいいよ。
ごめんさくら。気ぃ使わせちゃって。」
これ以降、お姉ちゃんも○○君も特に会話を交わさないまま
史緒里ちゃんは、亡くなった。
△
ーーーーーーーーーーゴトッ
大きい音がして気づいた。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
懐かしいな。あれも三年前のことか。
「あ、ごめん。起こしちゃった?」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86515595/picture_pc_0b961de832aa4b8caaa1f84f000828f2.png?width=800)
花瓶に花を挿している美人がそこにはいた。
「あ、えっと。すいません!」
「なんで謝るのよ。」
美人のお姉さんは優しそうに笑ってそう言ってくれた。
仕事の関係者かな。オーラがすごい。
というか初対面が寝顔ってどういうことよ。
すごい恥ずかしいじゃない。
「あなたは美月の、、、妹さん?」
「あ、はい!美月の妹のさくらと申しましゅ!」
噛んだ。最悪。
「っふふ。可愛いね。お姉ちゃんそっくり。
私の名前は生田絵梨花。役者やってます。」
役者さん、、、。美人だなぁ。
アイドルグループでセンターを何回かしてそうだ。
「突然ごめんね?」
「いえいえ!全然、あの、ゆっくりしていってください。」
「ありがとう。
でも明日も仕事だから、今日はここで帰ろうかな。」
「そ、そうですか。」
「うん。お姉ちゃんによろしく言っておいてくれる?」
「わかりました!伝えておきます。」
「ありがとうね。」
入院から1日。お姉ちゃんは目を覚ました。
「本当に良かった。もう無理しないでね?」
「ありがとうお母さん。さくらもありがとうね。」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86516098/picture_pc_a214e4bb165b4e8fae52df54d68c58bb.png?width=800)
「そうだ。生田さんが来てたよ?」
「生田さん?、、、まさか生田絵梨花さん?」
「そうそう。よろしく言っておいて、って。」
「、、、そっか。そっか、ありがとう。」
お姉ちゃんはまた目を泳がせた。
「んで?美月は大丈夫やった?」
8時 職員室
コーヒーの匂いがキツくなるこの時間帯に私は呼ばれた。
「ストレスで倒れて検査入院だって。」
「ストレスか、、、。
まぁ大事に至ってないなら大丈夫か。」
「いい機会だからさ、お姉ちゃんと会ってよ。」
「余計ストレスだろ。」
「そんなことないよ、、、とは言えないね。
じゃあさ、生田さんに会ってよ?」
「いや誰だよ。」
「お姉ちゃんの同僚の人。
史緒里ちゃんのこと、何か知ってるかもしれないし。」
「そんな都合良い出会いあるわけないだろ?」
「わかんないじゃん!」
「いーや。無い!」
「美月ちゃんについて調べてるんですか?」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86516204/picture_pc_2c02a9863641c60b5d2ec628f88acd6d.png?width=800)
夕方の和やかなカフェ
生田さんはゆっくりとコーヒー片手にそう言った。
「そうなんです。」
○○君は落ち着いた声で聞いた。
「私に協力できることがあれば
なんでもお答えしますよ?」
生田さんはにこやかにそう答えた。
やっぱり聞いた方がよかったんだよ。
そう念を込めながら私は○○君を見た
「じゃあ私からいいですか?」
緊張するけれど、
これだけは私が聞いておきたい。
「はい。なんでも聞いて?」
「久保史緒里っていう人を知ってますか?」
「久保史緒里?
ああ、“負けた子”ね。」
和やかな空気が一変した。
To be continued
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?