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君と僕の話 4

8月


夏休みが始まった。
教師になって3回目の夏休み
僕は山下美月のことを調べていた。


史緒里が最後に会っていたのが山下なのだとすれば、
、、、最期を見ていたのなら。


いやいやまだ予測の段階だ。



「、、、はぁ。」



ため息が思わず出てしまった。



「失礼しまーす。」



参考書を片手に、やけにニヤついたさくらだった。



「さくらか。どうした?」

「参考書でわかんないとこあったから来た。」

「、、、本当にそれだけ?」

「お姉ちゃんと史緒里ちゃんに関する情報持ってきた。」

「あれだけ勉強しろって言ったのに?」

「まぁいいじゃん。」







 「ふぅ、、、お茶美味し。」



さくらを準備室に迎え入れてからというもの
少し部屋の温度が高くなった気がする。




ーーーーーーーーーーPi!




「暑いからクーラーの温度下げるね?」



「勝手に触るな。
 んで、情報ってなんだ?」








「史緒里ちゃんさ、
 お姉ちゃんと喧嘩してたっぽいんだ。」



お茶碗を両手で持ち
中の水面をじっと見つめながら
さくらはそう話しはじめた。



「あんな仲良かったのに?」

「私もそう思った。
 物心ついた時から一度だって
 喧嘩してるとこなんか見たことないもん。」

「てか誰に聞いたんだよ?そんなこと。」

「お姉ちゃん。
 史緒里ちゃんの3回忌どうする?
 って聞いた時ポロって言ってた。」

「ちなみに喧嘩の内容は?」

「そこまではわかんない。
 最近お姉ちゃんとは、
 そもそも口聞かなくなっちゃってるし。」

「なんでだよ?」

「喧嘩とかじゃないけどさ、
 映画撮るってなったら基本家に帰ってこないんだよね。」

「、、、へぇ。」

「たまぁに帰ってきたとと思ったら
 演技に没頭したいからって一言も話してくんないし。」

「、、、。」








「史緒里、最近何してるの?」

「演技の練習。」

「そっかぁ、撮影近いんだっけ。
 公開されたら見に行くわ。」

「うん。」

「、、、あ、あのさ!」

「良いよ別に。」

「な、何が?」

「無理矢理話続けなくても。」

「そ、そっか。」








「、、、役者の人ってみんなそうなのかな。」



さくらは神妙な顔で
お茶を机におきながら話を終えた。



「、、、史緒里もなんだ。
 役者初めて急に冷たくなったの。」

「それで喧嘩しちゃったの?」

「いいや、違う。
 最後の喧嘩は何が原因かは忘れた。
 でも冷たくなったのが積もり積もったからかも。」


「じゃあお姉ちゃんとも喧嘩しちゃうのかな。」

「別にいいと思うぞ。喧嘩しても。」

「何で?」

「喧嘩だって別に間違った方法じゃない。
 ただしその日のうちに仲直りをするならば、だけど。」

「急に教師みたい。」

「ずっと教師だったんですが?」






それ以降は特に新しい情報も入らず
あっという間に夏休みは過ぎ去った。







いつのまにかセミが鳴かなくなった九月



「宿題持ってきましたー。」



少し冷房の効きすぎた教員室で
色んな生徒が提出の遅れた宿題を出しに来ている。
その例に漏れないのはさくらも同じだった。



「はい。受け取りました。」

「教員室じゃなくて教室でいいじゃん。」

「なんで?」

「出しにくるのめんどくさいよ。」

「いや、そもそも出し忘れるなよ。
 ていうか周りに人がいる時は敬語使って!」

「良いじゃん、、ないですか。」

「、、、ギリセーフにしとこか。」
「全然セーフだ、、ですよ。」

「そういうことにしといてやるよ。
 友達も待ってるみたいだし。」


〈さくら!早く教室行こ!〉


「あ、、、!じゃあ行ってくね!」



そう言ってさくらは
敬語をつけるというのを忘れる時のようにスムーズに
そして迅速に友達の元へ駆けて行った。



「だから敬語使えって。
 まぁ敬語に急にかえるも難しいk

ーーーーーーーprrrrrrr


さくらの背中に大きめの独り言を吐いた刹那、
机の上にある僕の内線電話が音高々に鳴り響いた。



『もしもし、こんにちは。
 遠藤さくらの母でございますが。』



電話をかけてきたのはさくらの母親からだった。



「あ!さくらさんのお母様。どうされましたか?」

『突然なんですが、
 今すぐさくらを早退させてもよろしいでしょうか?』

「どうかされたんですか?」

『美月が、さくらの姉が、仕事場で倒れたんです、、、!』




To be continued

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