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タイトルってすんごい難しいと思うんですよ。やっぱりその作品の顔であって、その作品の要約であるモノでなければなりません。これは簡単に言いますが難しいことです。タイトルに凝りすぎてしまえば、なんだかカッコつけたようになってしまっていけませんし、逆になろう系みたいなタイトルを簡単につけてしまうのもいかかがな気がします。さぁここまで文字を打っていますが、タイトルのタの字も思いつきません。さぁこんな調子で私はいいタイトルをつけられるのでしょうか。と言うか私は今何度タイトルと打ったのでしょうか。気になってしまって数え

ーーーーーーこれっくらいの
      おべんとう箱に






「なんでわざわざん僕の実家に?」






最期のゼミを終え
皆帰路に着いた頃、連絡があった。



<終わったら、連絡してね。>



普段の雰囲気とは少し違う文面から覗ける
異常事態の発生にたじろくばかりだった。


「ここだったよね。
 私たちの関係が始まったの。」


高校三年生の冬、
お互いに受験を終えた僕たち2人は
ここから恋人としての関係をスタートさせた。






『うん。』


『あなたは知らないかもだけど、私嬉しかった。』







ーーーーーーおにぎりおにぎり
      ちょいと詰めて




『急にどうしたの?』


窓から見える夕日に黄昏る史緒里に問いかけた。
けど、僕の言葉はまるで蜃気楼のように消えた。


『昨日、、、
 いや、ここ1ヶ月どこで何をしてたの?』


『どこで何をって、、、バイトだよ。』


少し開けた窓から吹く、秋風が冷たかった。


『本当のことを言って?怒らないから。』


「いや、本当だって!ほら!」


スマホ画面の右上
写真フォルダーの中

今月のシフト表を見せながら、
白であることを訴えた。


『、、、。』


夕日から目を離した史緒里がこちらを向いた。
見事な三白眼だった。





ーーーーーーきざみショウガに





『じゃあ、これは何?』





史緒里から放たれた語彙の中の笑み。
史緒里の肌と対照的な色の目は
いつにも増して色濃い気がした。


足が、体が、腕が、動かないような気がした。


かろうじて動く、、、
と言ってもただ泳いでいるだけの目を
史緒里のスマホへ向けた。






女の子、
目の前にいる人とは別人との
ツーショットだった。





ーーーーーーごま塩ふって




『浮気とかじゃないぞ。』


端的に。
完結に。
ただ、事実を。


完璧な一言だった思う。
一言のみ喋ることの許されたこの場では
最適だったと思っている。


『へぇ。
 年下の女の子、、、それも私の後輩と
 本来バイトの時間にツーショット、、、。』


『ああ。』


『へぇ!浮気じゃあない!』





場に相応しくない笑いを一つ。
そして僕に言った。






『喧嘩、、、売ってるよね?』









ーーーーーーにんじんさん






『違う!!』


『白々しい、、、。
 よくもまぁそんなことを
 スラスラと言えるわね。』

『バイト中に撮ったんだよ!』

『はぁ?』

『そこの写真に写ってるのだって、
 バイト先の風景だろ?』

『いや、アンタのバイト先の風景なんて知らないけど。』



お互いに段々と赤くなっていく肌
けれどその頃には、
不自由だった体や目は動き始めた。






ーーーーーーさくらんぼさん








「この写真、なんで私が持ってたと思う?」


「、、、分かんない。」


「あの子が自慢してきたの。」


<○○さんと撮りました!>

ひび割れたスマホの
メッセージ画面を見た。


史緒里はそれに返事をしていなかった。

それがなんとも恐ろしくて、
少し可愛いと思ってしまったことは、
墓場まで持っていくべきであろう。





ーーーーーーしいたけさん





『これが一回なら、私だって怒らないよ。』


すっかり元の色に戻った史緒里の肌は
まるでこの場を表しているようだった。

『ここ最近、確かに僕はその子と一緒にいた。』

発した言葉が水蒸気のようにどこかへ行った。

『やっぱり。浮気じゃん。』

発した言葉が氷のようにズシリと響いた。



『でもね?
 それには理由があるんだ。』





ーーーーーーごぼうさん



『もうすぐ、受験だよね。』


『そうだね。』

『あの時、史緒里のくれた物覚えてる?』

『お守りだっけ?』

『それだけじゃない。
 史緒里は鉛筆を買ってくれたよね。おそろいの白いやつ。』

『先の方に、小さい模様が入ったやつだっけ。』


思い出すように横に目をやる史緒里の顔に夕日がかかる。

『あれ、その子が折っちゃってね。』

『邪魔だから?』

『いや、ただの事故。』





ーーーーーー穴の空いたレンコンさん



『事故だって、分かってた。
 けど、なんだか悲しかったんだ。』


『、、、ただの鉛筆なのに?』


『うん。
 史緒里は知らないだろうけど、
 僕、あの鉛筆は名前を書くときにしか使わないんだ。』


『、、、。』


『名前を書く。たったそれだけの儀式。
 けどなんだかあの頃のことを思い出せる
 大事なことだったんだ。』


『今、その話と何の関係が?』





ーーーーーー筋の通った


『あの子、その鉛筆をずっと探してくれたんだ。』


『え?』


『僕はいいって言ったんだけどね?
 でも、僕も探したくなっちゃって。』


『言ってくれれば。』


『それはごめん。
 最初はあの子だけで探してくれてたみたいなんだけど、
 あの子はその鉛筆がどんなものかわかんない。
 あの鉛筆の先にあった小さな模様は削っちゃったからね。』

『じゃあ、その鉛筆を探すためにずっと?』


『そう。』


『だからその写真をよく見て。
 鉛筆が写ってるでしょ?』



『、、、ホントだ。』










「あの時の鉛筆まだ持ってる?」

僕の部屋のリビングにつくや否や
史緒里は僕にそう聞いた。


「持ってるよ。」


夕日が一段と強くなって、収まった。
部屋には暗闇がやってきた。

僕は部屋の明かりをつけた。
史緒里は机の明かりをつけた。



「〇〇?」 

「ん?」



「この紙に、一緒に名前を書いてくれないかな?」


たった一枚の紙、行政が作ったことがはっきりとわかる
温かみのない紙。けれど、未来を決める紙。
人の名前を奪う、紙。


「、、、うん!よろこんで。」

しばらくして、
全ての項目を埋めた紙を見て、
史緒里はまた一段と顔を赤らめた。


「ねぇ、〇〇?」

「何?」









ーーーーーーすぅーき!!



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