塗料メーカーで働く 第七十五話 研究の評価
3月1日(月)午後8時40分頃 講堂の壇上 川緑は 傍聴者へ一礼して 研究報告を終えた。
頃合を見計らって 米村部長は 先生の所へ近づき 「先生 お疲れ様でした。 この報告は いかがでしたか?」と聞いた。
先生は 「普通 1つの実験結果に対して 変動要素を3つか4つ組めば シミュレーション結果は 実験と一致するものです。」と言った。
続けて 「しかし これは一つの式で 幾つもの実験結果を表現している。面白いじゃないですか。」と評価した。
部長は 「では この内容を外部に発表することについては どう思われますか?」と聞いた。
先生は 「うーん そうですね。 これを 広く世間に問うてみたらいかがですか。何かの学会で報告されたらよろしい。何がいいかな 高分子学会あたりで。」と言った。
部長は 「ご意見を頂き ありがとうございました。」と言った。
米村部長の問いかけが終わると 川緑は 「先生 いろいろなご指摘を頂き ありがとうございました。」と言った。
先生は 「いや こちらこそ。良い報告を聞かせてもらいました。」と言った。
川緑は 「私の研究を評価していただいたのは 先生が初めてです。ありがとうございました。」と言った。
報告会が終わり 2台のタクシーが呼ばれ 関係者一同は 平塚駅へ向かった。
一同は 駅のアーケード街で車を降りて 豚カツ店 「のむら」に入り 遅い夕食会が開かれた。
座敷に上がり 栗田先生と川緑は 隣同士に座ると 先生は 「君は 何か物理の本を読んでいるのか?」と聞いた。
「はい ファインマン物理学を勉強しています。」と答えると 先生は 「そうか 君の話を聞いていて そう思ったよ。私も愛読しているよ。」と言った。
野村部長と栗田先生は 昔話に花が咲き 食事が終わると 「次へ行こうか!」と言って二次会へと向かった。