しんどい親の話 (1)

幼稚園だったか小学校低学年だったときのこと。
母の友人宅などに連れられていくと、お茶やお菓子が出るわけで、すると私は意識していなかったけれど意地汚さ丸出しになったようで、勧められてから手を付けなさいとか、器を持ちなさいなどと母にお行儀についてたしなめられ、見苦しいことをするのでないと帰り道でも釘を刺された。

躾の沁みない子が叱られるのは仕方ないかもしれないが、必ず付け加えられるしめの言葉、あんたがだらしないと私がしっかりしてないと思われるではないか、というやつがいつも深く静かにもやもやした。この締めの言葉はもちろん母の知り合いに限らず、学校や習い事の先生や友人やその家族など他所様と関わるあらゆる場面でよく聞いた。連絡帳やテストや通知表を持ち帰ったときなどにも聞いた。

単純に言えば、この母はてめぇの外づらばっかだなということなのだけど、その時は幼かったしどういうもやもやなのか捉えられなかった。今考えると、お前はこの世界にいない子だと言われたのと同じなのだった。いないはずの私が呼び出され責められる。鈍いショックと弱々しい怒りが鎖骨のあたりをもやもやさせる。

そして、私のいないあの人の世界で、あの人の思ったことはあの人のもの。私のいる私の世界のものではない。

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