見出し画像

【超短編】暗

はるか上空の宇宙、月の向こう側のあなたは、段々と遠くへと飛んでいく
月の手前にいる僕は地球へと落ちていく

手前にいる人たちは地球に落ちて、地球はさらに重くなる

向こうへと去っていくあなたは、誰かは
限りなく無へと近づいていく

僕の言葉は無限の質量へと収束し続け
いずれすべてを、僕の存在を飲み込んでしまうような、そんな気がして


地球は青くて、私を離してくれなくて
でも、私を抱き寄せてくれるわけでもなくて

言いたいことを言ってくれればいいのに
言いたくないことなんて言わなければいいのに


僕には月の外側の世界なんてなくて
僕の言葉は、全部月の周回軌道よりも内側にあるんだ

だから、だから言いたいこともグッと引き込んで
心をグッと引き締めてしまう

心が段々と重くなって、また周りの言葉を引き寄せて
さらに重くなっていくんだ


限界、もう限界かも
心がブラックホールのようになって、だれにも何も言えなくなった
今更だれにも頼れなくなったんだ

近くにいてくれるあなた
引き込んでしまってごめんね

って、今度は何もしないのに迷惑をかけちゃうんだ


月すらも持ち合わせない
そんな誰かが羨ましくて、悔しくて

言えなくなった僕がなさけなくて
言わないあなたが、優しくて

だから僕は、すべてを飲み込んでしまいたいんだ


自分の形が崩れても、
ブラックホールみたいに優しくありたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?