アダムの罪

アダムの罪


昔昔の神様のお話。
神様の暮らす天界に、大きな大きな木がありました。
その木は偉い人が大事に大事に育てていた木で、やっと実が成りました。
けれどその実は、りんごがたった1つだけ。
1日、1ヶ月、1年、10年と待てどりんごは1つしか出来ません。
ずーっと待って、とうとう偉い人はその木の近くに家を建てることを決めました。

家が建ってしばらくして、子どもが生まれました。
子どもの名前はアダム、そう名付けました。
とてもとても嬉しかった偉い人は、三日三晩アダムの面倒を見ていました。

そうしてアダムが成長して、ひとりで遊びに行くようになった頃。
「お父さん、あの木は何?」
「あの木はお父さんが大切に大切に育てている木なんだよ。」
「へー、そうなんだ!」
「いいかいアダム、あそこにりんごが1つあるじゃろう?あれは、絶対に食べてはいけないよ。」
「はーい、わかった!!」
しかし、アダムはりんごを取ろうと必死に頑張りました。毎日、毎日りんごを取ろうとしましたが、手は届きませんでした。

さらに時は経ち、アダムが少し大人になり、お父さんもヨボヨボになり記憶も怪しくなった頃です。
アダムはようやくりんごに手が届きました。
そうしてずーっと食べたかったりんごを1口食べました。
そうするとアダムは考え始めたのです。
「もしこれがお父さんにバレたらどうしよう」、と。

考えて考えた結果、アダムはある考えに辿り着きました。
「お父さんが寝ている間に、りんごを実らせる方法を考えよう」、と。

だけれど、家に帰るとお父さんは
「お前は誰だ」と言いました。
そうするとアダムはバレたのかと怖くなり、逃げ出してしまいました。
そして自分とそっくりな姿形の人間を作り、そこに溶け込んで逃げようとしました…。

人間にアダムは言いました。
みなが老い、そして死に、新たな命がいくつも生まれた頃。
「きっと私のことを覚えている人は居ないだろう。
だけれど、これだけは覚えておいて欲しい。人間は賢くなりなさい」、とアダムは言いました。

そしてアダムの言葉通り、人間はみるみる賢くなりました。
人間は狩りをして食をし、
土を耕し、食べ物を作りました。

それから数千年が過ぎた頃。
人類は増え続けました。
そして真の賢さを求め学校を作りました。
学校で先人からの知識を学び、賢くなりました。
それはアダムが導いてくれた、人類のあるべき姿でした。

選ばれた賢さを持った者、すなわち賢者が現れた時、こう思いました。

「あぁ、僕らはアダムの共犯者なんだな。」、と。

それに気づいたアダムは津波を起こし、
人類を終わらせ、再び作りました。


おしまい



アダムの罪/みち

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