僕と2B-1

Chapter 1

僕はひょんなことからヨルハ機体2号B型の義体を手に入れた。
大学の工学部で開かれた研究成果のコンペで、僕が考案、作製した等身大のパワースーツが優勝した。
収納時は旅行用スーツケースとほぼ同じ形状で持ち運びが容易なことが高評価だった。
ただ、油圧ユニットとバッテリーのさらなる小型・軽量化が課題として残った。
祝賀会と称してお酒をたらふく飲まされたおかげで、車で帰れなくなった。
運悪く流しのタクシーも無いし、タクシーを呼ぶアプリも入れて無い。
旅行用スーツケースと同じ形だといっても総重量約25キロはさすがに重い。
何度も持ち替えて、ひたすら歩いた。
途中、公園に差し掛かったところで、夜空が一瞬、真昼のように明るくなった。
超新星の爆発?
いやいや、そんなもの肉眼で見えるわけが無い。
今のはなんだったんだろうと思いながら歩いていると、人気のない公園内に倒れている人影を見つけた。
近づいてみるとそれは、ニーアオートマタに出てくる戦闘アンドロイドの2Bのコスプレをした女の子だった。
仰向けでスカートのスリットから絶対領域をあらわにして横たわっていた。
めちゃくちゃエロい。
ハイレグのレオタードまで見えてる。
さすがにこんな格好で、こんな人通りのない公園に、置いていく訳にもいかず、とりあえず家まで連れて帰ろうと、起こそうとしたがぴくりとも動かなかった。
試しに引きずろうとしてもダメだった。
男の手に負えない体重なんて、女の子にとっては大問題だろう。
幸いなことに、僕は今、パワースーツの試作機を持っている。
これを着用すれば、最大200キロまでのものは持ち上げることができる。
僕は早速、パワースーツを着た。
各関節ごとに小型の油圧のシリンダーが付いていて、力を補助する仕組みになっている。
油圧のユニットとバッテリーが重いけど、稼動させればパワースーツのおかげで軽くなる。
パワースーツを稼動させ、目標値を80キロに設定して女の子を抱き上げようとしたが、これでもぴくりとも動かなかった。
設定を100キロに上げてもう一度トライしたが、まだ動かない。
設定を150キロに上げてようやく抱き上げることができた。
マジか、一見普通の女の子が150キロ?
どう考えても有り得ない。
ゲームの2Bは確か148キロだったよな。
まさか・・・。
女の子をよく見ると、コスプレの完成度としてはかなりハイレベルと思う。
いや、どう見ても2B本人だ。
アンドロイドに本人と言って良いのか分からないけど。
酔いも手伝って、もうどうでもよくなってきた。
とにかく自宅に運ぼう。
2Bとおぼしき女の子を背負って、30分歩いて自宅まで帰ってきた。
背中に丸くて柔らかいものが、足を踏み出すたびにむにゅむにゅと押し付けられる。
ヤバい、早く帰らないといきそう。
僕の自宅は、廃業した町工場だ。
廃業した町工場跡は、パワースーツを作るのに最適だった。
金属を加工する機械がそのままに置いてある。
その一角を仕切って住めるようにしている。
部屋に入ると、とりあえずベッドに寝かせた。
廃材の鉄骨を溶接して作ったベッドなので、荷重1トンでも大丈夫だった。
しばらく様子を見ていたが、全く動く気配がない。
ここで、ここまで連れてきた疲れがどっと来た。
パワースーツは、重いものをもったりする時のアシスト用だ。
なので、これを着ての長距離移動は想定外だった。
酔っ払った勢いと言うのか、よく無事に帰ってこれたもんだ。
僕はリサイクルショップで買ったソファに座ると、一瞬で泥のような眠りに落ちた。

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