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認知症。最後に残るのは何なのだろうか。


私の祖母はアルツハイマー型の認知症で、去年の年末から施設に入居しています。
これまで、コロナの影響もあり、面会が制限されていましたが、今回、入居以来初めて面会しました。

面会する前、母親から言われた一言。

「覚えてる?って言っちゃダメだからね」

その一言で、じゃあ何を話すのが正解なの?と
分からなくなってしまいました。

結局、面会時間は1時間弱、祖母はずっと夢と現実の間にいるような、ふわふわした話をしていました。
会った瞬間は、家族だと分かったようですが、5分もすると、知らない他人のような振る舞いで、
とても丁寧な口調で話をしてくれました。
施設に入るまでは自宅での介護でしたが、その時の酷い言葉や、荒れた態度、そういうものを一切感じさせない、つきものが落ちたような穏やかな顔で謙虚な話をしてくれました。

物を知らない自分がおせっかいで余計なことを言うから、相手に間違って伝わって、
拗れたことになってしまう。だからそう言う、余計なことは言っちゃダメなのよ。と何度も何度も言っていました。
そして、息子と娘が元気でいてくれれば良いと言う話。

昔の祖母は、会社員から結婚して退職し、子育てしながら保育士の道を歩み、そのまま定年まで勤め上げ、定年後も当時の先生仲間と良く習い事や旅行に出掛ける、母にとってはかなり強い姑だったと思います。母も祖母との関係でとても苦労していたと思います。

そんな祖母が、相手に間違って伝わってしまうから、と今になって言葉に出てくるのは、当時の家族の関係で自分が思ったことが上手く伝わらなくて、心の中ではもどかしく思っていたことがあったのかもしれないと感じました。
記憶がどんどん薄れていく中で、表面的なものがなくなって、最後に残るのは、その人が本当に心に抱えていたことなのか。以前とはすっかり変わった顔と態度に、何となく、子供に戻っていってるような気もしました。

面会が終わったあと、父に、面会はもう気が済んだか?また会いたいか?と聞かれました。
すぐにまた会いたい、とは言えませんでした。

孫の私も何を話したら良いかわからない、
父も、母親がどんどん老いていく姿を見るのは辛いのでは無いだろうか、そんな気もしています。

まだ次の面会の勇気は湧かないけれど、
いずれ自分の両親、そして自分も歩む道なのかもしれないと思うと、向き合わなければならないと感じています。


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