水平線と地平線

冬の海に来て、沈む夕日と水平線を無埋め尽くす蜃気楼を眺めながら黄昏る俺。遠くの砂浜からトュームレイダー2のアンジェリーナジョリーみたいなウエットスーツを身につけ、サーフィン板をもった女が潮風に髪をなびかせながら俺に向かって歩いてくる。「沈む夕日」「砂浜」「女と男」なにかが始まる予感がした。ロマンティックが充満した砂浜でトュームレイダー2が俺に声をかけてきた。「今日はいい波ですよっ!」俺は驚愕した。図太い声、細い首に喉仏が浮き出たロン毛のオッサンだった。俺は小さく会釈をして、さっきまでの胸の高鳴りを押し殺して必死に帰りの電車に駆け込んだ。家に着いた俺は風呂に入り熱いシャワーを浴びた。寝巻に着替え、うつ伏せになった。フローリングの地平線を眺めた。するとおれの陰毛が暖房の風でなびいていた。あの時、砂浜でみた沈む夕日と蜃気楼のようだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?