【☆12AAA】③客観的データに基づくbeatmania IIDXの難易度表案

こちらの記事と続編の記事、(予想よりはるかに)多くの方にお読みいただきました。
 この手法を応用して、新たな難易度表案を作ってみたいと思います。

Twitterでアンケートを取ってみたところ、☆12AAA難易度表の方が若干人気なようでしたので、今回の記事ではこちらについて検討していこうと思います。

難易度推定の方法

前回までと同様、木野(Twitter:@capue)さんのご協力のもと、新たにIIDX 26 Rootageのデータを分析して、プレイヤー間の☆12スコアの勝敗に基づく、譜面ごとの難易度推定を行いました。
 対象者はRootage終了時点で十段~皆伝を取得していたプレイヤー約2万名です。途中落ちを考慮した前処理として、50%以下のスコアを一律で未プレイ扱いとしています。

前処理を行ったデータ上で、各プレイヤー同士で☆12スコアの勝敗を比較し、算出された勝率からイロレーティングに基づいてレートを求めました。
 段位ごとにレートの分布を示した図がこちらです。

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赤い縦線は段位ごとのレート中央値を表しています。十段 ≒ 1300、中伝 ≒ 1500、皆伝 ≒ 1800となりました。
 前回までのクリアランプ勝敗と違って引き分けがほぼ発生しない影響で、レートの上端と下端がかなり延びています(最高レートは約3200)。

このようにして求めたレートを、プレイヤーごとに「各譜面がAAAか否か」と対応させ、ロジスティック回帰分析を行うことで、譜面ごとに「AAA達成確率とレートの対応」を予測する回帰式を得ることができました。

詳しい結果については最後にまとめるとして、次項では既存の指標との比較を行ってみたいと思います。

BPIによるAAA達成表との比較

(本稿の執筆に際して、BPIManager管理人様より掲載の許可を頂いております。)

IIDXスコアの指標として、有名なBPIがあります。これは、皆伝平均を0、歴代全一を100と定義して、各譜面のスコアを一律に比較できるようにした手法です。

このBPIを応用して運営されているサイトBPIManagerでは、BPIから推定される順位と実順位が(概ね)一致するように、譜面ごとに係数を設定しています。要約すると、この指標ではスコアの皆伝内順位がキーになっているということです。
 BPIManager上では、AAAを達成した際のBPIをもとに、AAA達成表というサービスが提供されています。そこで、今回推定したレーティングに基づくAAA難易度との比較を行ってみることにしました。

両手法で大きく差が出たものを比較したのがこちらの表です。AAA達成が最も難しい譜面(Mare nectaris)が順位1位、最も易しい譜面(mosaic)が最下位の331位となります。

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前述の通りAAA達成BPIは、AAAを達成した際の譜面内プレイヤー順位に依拠していると考えられます。
 それに対して、本記事における推定難易度は、全☆12スコアの勝率 = 順位から算出されています。

表の上半分にある赤文字の譜面では、本記事の推定難易度に対して、AAA達成BPIが低くなっています。このような譜面では、AAAを達成している人数が多い割には、(全☆12スコアから推定される)スコア力は高くないとAAAを達成できないので、相対的にAAAを狙うプレイヤーが多かったと考えられます。譜面のラインナップとしても、地力が求められるスコア狙いのやりがいがありそうな面々が揃っているように見えます。
 逆に下半分の青文字の譜面では、推定難易度に対して相対的にAAAを狙うプレイヤーが少なかったと考えることが出来ます。

「個人差度」について

さて先述の通り、今回の手法では譜面ごとに「AAA達成確率とレートの対応」を予測する回帰式を求めています。ここまでの推定難易度は50%の確率でAAAを達成できるレートを算出したものでした。
 いわゆる地力譜面に対して、個人差譜面は低レートでもAAAを達成できる可能性があり、その代わりに高レートでも達成できない可能性があります(詳しくはこちらをご覧ください)。ということで、この違いを「個人差度」として定量化することで、個人差譜面を客観的に選出してみることにしました。

縦軸にAAA達成率が50%となるレート、横軸に27%レートとの差をとり、プロットしたものがこちらになります。

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赤い線は回帰直線です。この線よりも右下にある譜面は個人差度が高いと言えそうです。
 この赤い線からの「離れ具合」を表にしてピックアップしたものがこちらです。

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より個人差度の高い上半分の譜面は、皿やソフラン、あるいは灰譜面であることなど、スコアに個人差が出やすい要素が詰まっていそうです。
 それに対して下半分の譜面は様々な要素がまんべんなく求められると言えそうです(筆者は☆12AAAが十数曲程度のスコア力なので、この辺りは自信がありません……)。

☆12AAA難易度表

推定したAAA50%達成レートを、Mare Nectaris = 13.0、Steel Edge = 12.0と変換しました。レーティングの線形性が保たれているので、(スコア勝敗の観点で言えば)11.9と12.0の違いは12.9と13.0の違いと同じ、と大雑把に言うことができます。

さらに前項の個人差度について、全譜面のうち上位3分の1にあたる譜面を個人差譜面として、下線を引いて表しました。

こうして出来上がった難易度表がこちらです。

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いかがでしょうか。難易度の表現方式については、より良い案があればぜひぜひご提案いただきたいです。

今後やりたいこと

・サンプルが充分そうなら☆11以下の難易度表も作りたい

・公式CSVをインポートすると、推定レートや推定順位、リコメンドやランプ更新確率を表示してくれるwebサービスを作りたい

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僕も所属する音ゲー情報本サークルAA(A)AAAをよろしくお願いいたします。本記事も含むこれまでの検証記事について、様々なご意見を頂きました。この記事のような音ゲーに関するちょっと踏み込んだ検証を行っています。既刊はこちらからどうぞ。

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