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第2章_#05_パリの朝は真夜中?

さて、1994年の初パリ。

出国から数えて24時間以上寝ていないので到着日の夜は崩れるように就寝。しかしながら、体内時計はまだ日本なのか、夜中に何度も目を覚まし、ようやく寝入ったかと思った頃にもう朝7時のアラームが鳴る。
一人旅なら二度寝するところだがそうもいかぬ。
先に洗面所を使った方がいいだろうな。頭ボンヤリしたまま身体を起こす。

パリの朝。もうそれだけで感慨深い。
さあ、まずは朝日を浴びようと分厚いカーテンを開けた。

が、暗い。

なんと外はまだ真っ暗。星がキラキラと瞬いているではないか。
時計をもう一度確かめる。間違いなく朝7時。
耳を澄ますと靴音が聞こえる。窓から外の通りを見下ろすと、比較的きちんとした服装の人びとが早足で歩いている。出勤しているのだろうか。こんな真っ暗な中を。

日本にいると朝に陽が上るのは当たり前のこと。
季節によって多少、日の出日の入りの時刻が変動するものの、朝の7時には大体どの季節でもどの場所でも、必ず朝は来る。
なので、朝7時がまだ真っ暗闇という状況を理解するのに少し時間がかかった。(後からガイドブックを確かめたら日の出日の入りの時間も書いてあった。まったく読んでいなかったわけだが、読んでいてもやっぱり驚いただろう。)

そう。パリの冬は恐ろしく陽が短いのだ。
朝は9時くらいまで真っ暗で、夕方は4時くらいにはもう陽が落ちる。
日本に暮らしていると知りようもないが、陽の光を浴びない暮らしはかなり気が滅入る。
パリジャンに鬱病が多いという事実が、リアルに自然に理解できた。

そのご褒美と言うべきか、春夏の極端な陽の長さがまたビックリだ。
日の出の時間は知らないが(起きた時には既に明るいので)、夜は9時くらいまで明るい。この延長が北欧の白夜なんだなと、自然に理解できた。
昼が長いぶん寝る時間も何となく遅くなるので、これはこれで慣れないうちは身体に悪そうだ。
ともあれ、フランスの人々が、夏のバカンス命!おてんとうさま命!なのはこういう事情なのかと納得した。
気持ちより先に身体が欲するレベルなのだろう。

なるほど、これがリアルなパリなのか。
こんな調子で一日中ビックリの連続なのだろうか。心臓がドキドキしてきた。

さて、気を取り直し、身支度を整えたら、1階の食堂で朝食だ。

オテル・デ・バルコンの朝食についてははまったく憶えていないが、温かい飲み物とジュースと数種類のパンとヨーグルト、いわゆるコンチネンタルブレックファストを食したはず。
ビュッフェ形式だったなら、ハムやチーズなどもあったのかもしれないが、もともと朝はそういうものを食べない性質なのでスルーしたはず。

三つ星くらいまでのホテルの朝食は大体こんなもの。
(四つ星以上に泊まった経験がないので分からないが、検索して出てくる朝食の写真はもっと豪華だ。)

その後も旅を重ねているが、泊まるホテルのランクは毎回二つ星か三つ星で、どのホテルにもあるのがこの、食べきりサイズのダノンのヨーグルト(プレーンの他にフルーツが入ったものもある)、使い切りサイズのバターやジャムやはちみつ。パンはクロワッサン、パンオショコラ、パンオレザンなどのペストリー系と、大きさが日本のコッペパンくらいのバゲット風のパン。
このパンはなんという名前なのか未だにわからない。外のレストランでも町のパン屋でも見かけないからホテル仕様なのだろうか。私はこれが大好物で、真ん中にナイフでザクザクと縦に切り目を入れて、そこにバターとハチミツをたっぷり塗ってバリバリと囓る。なんてことないのだが、シンプルに美味しい。お腹の空き具合ではいっぺんに2個食べるときもあるくらい(さすがに満腹になる)。
あ~、これ日本でも毎朝食べられたら幸せだろうな~、って食べながらしみじみ思う。
ホテルのランクによってパンのクオリティーは絶対に違うと思うのだけれど、私はこれでいい。この名前のないパンとバターとハチミツとコーヒーがあれば、それ以上は何も要らない。実に安上がりにできている。

朝食を終え、ひと休みしたら、いよいよ、初めて、街に出る。
続きはまた次回!À bientôt!

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