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感染者が出てしまった場合の対応

はじめに

2021年1月13日、緊急事態宣言の対象地域が11の都府県に拡大されました。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、事業主の皆さん、従業員の皆さんの感染リスクは残念ながら高まっています。
しかし、予期できるリスクには対処法を考え、備えることができます。
今回は、
組織内にPCR検査陽性者(≒感染者)が出てしまった場合の対応
について、やるべきこととその理由を整理します。
皆さんのもしもの時に、お役立ていただけたら光栄です。

1 感染発覚!まずすべきこと

1-1 コロナ対応の司令塔となる本部、会議体(幹部役員、総務部門)を招集する

まず、状況の把握、情報の取りまとめ、対応策の意思決定、保健所との連携といったコロナ初動対応と、事業活動の被害防止活動を指揮する組織を設置、稼働させます。
構成員や招集方法など予め決めておきましょう。【事前準備事項】

20210222陽性者が出た場合ポイント1-1

1-2 事業所所在地を管轄する保健所に報告する

事業所所在地を管轄する保健所へ、PCR検査陽性者が出たことを報告します。
感染従業員の行動履歴を確認したり、他の従業員に濃厚接触者がいないかの判断、事業所の消毒方法の指導など、公衆衛生の専門家である保健所の指示に従うことになります。

2 感染した従業員への対応

2-1 休業の扱いについて説明し理解を得る

感染症法上、都道府県知事が行う就業制限による休業となるため、症状の有無や感染従業員の意思に関わらず、事業主としても休業を指示することになります。
感染従業員にとっては、有給休業か無給休業かが大きな関心事ですが、
事業主都合の休業ではないため、ノーワークノーペイの原則通り、会社の賃金支払義務は消滅します。したがって、無給休業とすることは法律上問題ありません。

もっとも、従業員は年次有給休暇制度を使って有給休業とすることが出来ます。年次有給休暇は従業員の権利であるため、事業主側から強制的に使用させることは出来ません。

感染従業員が安心して療養にあたれるようにするため、また他の従業員のモチベーションを考えたときに、事業の財務状況などコロナ禍で苦しいところだとは思いますが、経営判断として有給休業とすることが望ましいでしょう。

有給休業の場合事業主としては、雇用調整助成金を申請して経済的打撃を緩和させることが出来ます。

《 雇用調整助成金に関するnoteの記事はこちら 》
▶  年内いっぱい!雇用調整助成金を活用しよう

無給休業の場合感染従業員は、健康保険に加入していれば傷病手当金を受給することができます。

感染従業員は、保健所の指示に従い、入院療養、ホテル療養、自宅療養を選択することになります。

新型コロナウイルス感染症は指定感染症なので原則入院措置ですが、医療崩壊を防ぐためのホテル療養、自宅療養を許容する運用がされています。

厚生労働省事務連絡 令和2年4月2日
新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養
の対象並びに自治体における対応に向けた準備について

2-2 感染従業員の行動履歴を確認する

2次感染防止の観点から、事業主は感染従業員の発症14日前から現在までの病状と業務に関する行動履歴を確認して、保健所に報告することになります。感染力を持つとされる発症2日前からは、より詳細に確認する必要があります。

20210118陽性者が出た場合ポイント2-2密

感染従業員の14日前からの上記ポイント内容を、体調の優れない本人の記憶で辿る作業は困難を極めます。現状、従業員に意識的に行動履歴を残すよう指導しておくのが望ましいでしょう。【事前準備事項】

2-3 個人情報の取り扱いにつき説明して理解を得る

病歴は要配慮個人情報に該当するため、第三者に公表するためには、感染従業員の同意を取ることが求められます(個人情報保護法23条)。
ただし、個人情報保護法23条1項各号に該当する場合(たとえば3号:公衆衛生の向上又は…本人の同意を得ることが困難であるとき)には、本人の同意を得ずに第三者に提供できる例外が規定されています。

この点、個人情報保護委員会が注意事項として、「2次感染防止や事業活動継続のため必要がある場合には、本人の同意は必要ない。」との判断を示しています。

個人情報保護委員会のwebページ
新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて
・新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした個人データの取扱いについて:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/200515_1.pdf
・(別紙)個人情報保護法相談ダイヤルに多く寄せられている質問に関する回答:https://www.ppc.go.jp/files/pdf/200515_2.pdf

就業規則などの社内規定に公表の可能性を規定しておくと万全といえるでしょう。【事前準備事項】

20210118陽性者が出た場合ポイント2-3

2-4 復帰方法、段取りを確認する

保健所からのアドバイスを受けたうえで、感染従業員の症状を確認し、復帰時期を決定していきます。
入院していた感染従業員については、目安として、退院後14日間は外出自粛を行い、飛沫感染を予防するためマスク着用を義務付け、体調を確認しながら復帰時期を決定します。

なお、医師による陰性証明書については提出を求めないようにしてください。診療に過剰な負担をかけ医療機能が低下することを避けるためです。

3 その他の従業員への対応

3-1 保健所の指示に従って、濃厚接触者を特定する

感染従業員の行動履歴確認から関わった可能性のある従業員を特定して、個別にヒアリングを行い、保健所の濃厚接触者判断に役立てましょう。

厚生労働省のWEBページ「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」問3より
濃厚接触者の定義:
手で触れることのできる距離(目安は1メートル)で、必要な感染予防策を取らずに新型コロナウイルス感染症確定患者と15分以上の接触があった者。

実際には、周辺の環境や接触の状況等から患者の感染性を保健所が総合的に判断します。

接触確認アプリ(COCOA)を利用していれば、陽性者と、1m以内、15分以上の接触の可能性がある場合に通知が発せられ、速やかな検査や治療につながります。

濃厚接触者と判断された場合、速やかな陽性者発見の見地から、現在はPCR検査(行政検査:自費負担なし)が行われる運用がなされています。

検査結果が陽性だった場合には、その従業員は「感染従業員」となりますので、あらためて前述の「2 感染した従業員への対応」をご参照ください。

検査結果が陰性だった場合は、保健所の指示に従い、14日間は不要不急の外出は控え、健康観察を行い記録し、症状が出た場合には速やかに職場に報告するなどの対応をしてください。

濃厚接触者以外の接触者についても、感染症法に基づく明確な規定はないですが、保健所の指示に従い、14日間は健康観察を行い記録し、症状が出た場合には速やかに職場に報告するなどの対応をしてください。

3-2 陽性者、陰性者と非濃厚接触者に、休業、自宅待機などの指示を出す

陽性結果の出た濃厚接触者は、就業が制限されるために、事業主としても休業を指示することになります。詳しくは前述の「2-1 休業の扱いについて説明し理解を得る」をご参照ください。

陰性結果の出た濃厚接触者には、最低14日間の休業または在宅勤務の指示を出すのが望ましいでしょう。

非濃厚接触者の従業員についても、休業や在宅勤務を検討することになります。

事業主には、従業員の安全に配慮する義務があるため、事業所内に感染者が出た場合に、マスク着用を義務付けたとしても出社勤務を求めるのは義務履行上不十分と思われ、事業活動との兼ね合いではありますが、出勤を見合わせる措置が適当でしょう。

無症状者に休業を命じる場合には、労基法上の休業手当の支払が必要です。休業手当を支払った場合には、雇用調整助成金を申請していきましょう。

《 休業手当に関するnoteの記事はこちら 》
休業手当の計算方法を知っていますか?

3-3 全従業員に感染者が出たことについて周知する

従業員の動揺を抑え、士気の低下を回避するために、従業員全員に正確で十分な情報提供を徹底しましょう。

20210118陽性者が出た場合ポイント3-3

4 関係各所への対応

4-1 ビル管理会社に連絡する

事務所スペースを借りている場合には、事務所の閉鎖措置消毒作業、他のテナントへの周知など、管理会社の指示に従って行うことになります。まずは、管理会社へ連絡しましょう。

4-2 保健所の指示に従って、区域の消毒作業をする

保健所からの指導に基づいて、2次感染防止のために速やかに、職場を消毒、清掃します。
地域の消毒業者を調べておくほか、消毒に必要な備品が揃っているか確認しておきましょう。【事前準備事項】

20210118陽性者が出た場合ポイント4-2

4-3 接触可能性のある取引先への対応

2次感染防止が目的のため、感染従業員の氏名も含めて、感染場所、人数、経緯、事業所の感染者への対応、消毒作業の内容、濃厚接触者の有無など詳細情報を開示することが必要です。個人情報の取扱いには相手方に十分留意していただく旨依頼するのが懸命です。
社外への情報開示方針を策定しておくと万全でしょう。【事前準備事項】

4-4 その他関連先への対応

噂や不確定情報の独り歩き防止が目的のため、感染従業員の氏名は非公開とし、感染者の人数、経緯、濃厚接触者の有無のほか、消毒措置、従業員への休業、健康観察措置など然るべき対応を行っていることをアナウンスすることが重要です。
HP掲載、窓口掲示等、文書で速やかに公表していきましょう。

最後に

本記事を読んでおしまいにするのではなく、準備しておくべきこと(【事前準備事項】)にまず着手していただけたら、不幸にも感染者が出た場合に、粛々と先を見越した動きが取れるはずです。
もしものための準備をしつつ、感染者が出ないように感染予防策を徹底する。この2面作戦で難局を乗り切りましょう。

行政書士法人 全国理美容コンサルティング
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