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エステティックサロンが絶対に用意すべき契約書とは

エステティックサロンや脱毛サロンでお客様にサービスを提供するために、契約書を用意しなければならない場合があることをご存知ですか?

どんなサービスの時に、どのような契約書が必要になるのか、他にも注意しなければならないことはあるのか、について今日はお話します!
これからエステティックサロンをオープンしようかなと考えている方や、美容室の一部を改装して脱毛サロンを併設しようとしている方はぜひ最後までご覧下さい。
既にエステティックサロンを経営されている方も改めて確認することで、より適切なサービスを提供できると思いますので、お付き合いいただけますと幸いでございます。

1.どんなサービスの時に契約書が必要になるの?

エステティックサロンでは様々なサービスメニューをお客様に提供していると思います。
そのすべてのメニューで契約書を用意するなんて大変……、と不安になるかもしれませんが、大丈夫です。
契約書を用意しなければいけないサービスは限定されています。

具体的には、
【提供期間が1ヶ月以上であり、更にその金額が5万円を超えるサービス】
をお客様に提供する場合に契約書が必要になります。
もし「1か月以上で金額が5万円を超えるサービス」を提供する場合には、お客様一人一人と、サービスごとに契約書を用意しなければなりません。

2.どうして契約書が必要になるの?

(1)特定商取引法とは

なぜ「1ヶ月以上、5万円を超えるサービス」だと契約書が必要になるんでしょう。
それは特定商取引法という法律で決められているからです。

皆様は、特定商取引法がどのような法律かご存知でしょうか。
名前は聞いたことがある方が多いと思います。
でもどんな法律か、と聞かれて、さっと答えられる人は少ないですね。
法律と聞くとそれだけで難しそうですが、今日は簡単にお伝えします!

特定商取引法とは、事業者(サロン)による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者(お客様)の利益を守るための法律です。
もっとイメージしやすい言い方をすると、キャッチセールスで何時間も営業トークを聞かされたり、訪問販売で押し売りされたりすることを防止するための法律です。
キャッチセールスや押し売り、本当に迷惑で困りますよね。
もしかしたら、断り切れずに欲しくもない商品を買わされてしまった、何とか逃げたけど疲れた、という経験がある方もいるかもしれません。
買わされてしまったならお金を取り返したり、キャッチセールスや押し売りなどをした人へ罰則を与えるための法律が特定商取引法なんです。

(2)特定商取引法の対象

特定商取引法の対象となるのは、
①エステティック
②美容医療

③語学教室
④家庭教師
⑤学習塾
⑥結婚相手紹介サービス
⑦パソコン教室
の7つの事業です。

エステティックサロンは比較的新しいサロン形態として、急激に成長してきました。
その成長過程の中では、
「期待していた効果を得られなかった」(騙された)
「施術の結果、皮膚に跡が残ってしまった」(後遺症が残ってしまった)
「無理やり勧められて断れなかった」(押し売りされた)

といったクレームが多く発生してしまいました。
もちろん、サロン経営をされていた多くの方は真摯に施術をしたと思います。
ですが、比較的高額になりやすいエステティックサービスは消費者(お客様)にとって大きなダメージとなるケースが生じてしまうため、特定商取引法で規制を受ける業種として指定されています。

(3)エステティックサロンと特定商取引法

エステティックサロンの業務は特定商取引法の規制を受けますが、全ての業務が規制の対象になっている訳ではありません。
規制の対象になるのは【特定継続的役務提供】と呼ばれるサービスです。
特定継続的役務提供、なんて言われてもピンと来ないと思いますが、
これこそまさに最初にお伝えした「1ヶ月以上、5万円を超えるサービス」のことです。
「1ヶ月以上、5万円を超えるサービス」は特定商取引法の特定継続的役務提供にあたるから、契約書が必要になる、という流れですね。

具体例を見てみましょう!

部分脱毛(3回施術、3週間)、6万円
→特定継続的役務提供にあたらないので、契約書は不要

フェイシャルエステコース(15回、5ヶ月)、30万円
→特定継続的役務提供にあたるため、契約書が必要

リラクゼーションエステ(4回、2か月)、3万円
→特定継続的役務提供にあたらないので、契約書は不要

3.どのような契約書が必要になるの?

エステティックサロンで特定継続的役務提供に当たるサービスを提供する場合、2種類の書面を用意しなければなりません。

【用意しなければならない書面】
①概要書面
※サービスの説明をするための書面です。
→サービスの説明を終えたら、お客様にサインしてもらってくださいね。

②契約書
→実際にサービスを受けることをお客様が決められた際、お客様からサインをもらってください。

この2つの書類は、必ず記載しなければならない事項、印刷文字の大きさや色について、厳しく規定されています。
自分で作るのは難しいので、美容商材オンラインショップなどで購入することをオススメいたします。
購入する際は、「特定商取引法(41条)の規格を満たしている」と書かれているかは必ずチェックしてください。
もし法律の規定を満たしているか不安な場合には、少し細かいですが下記にて「記載しなければいけない事項」と「注意事項」を列記しておきますので、チェックリストとしてご活用ください。
文字が多いので、今は確認しないという方はスクロールで飛ばしてくださいね。

【概要書面】
〇記載すべき事項
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
・役務の内容
・購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
・役務の対価(権利の販売価格)そのほか支払わなければならない金銭の概算額
・上記の金銭の支払い時期、方法
・役務の提供期間
・クーリング・オフに関する事項
・中途解約に関する事項
・割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
・前受金の保全に関する事項
・特約があるときには、その内容
【契約書】
〇記載すべき事項
・役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
・役務の対価(権利の販売価格)そのほか支払わなければならない金銭の額
・上記の金銭の支払い時期、方法
・役務の提供期間
・クーリング・オフに関する事項
・中途解約に関する事項
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
・契約の締結を担当した者の氏名
・契約の締結の年月日
・購入が必要な商品がある場合には、その種類、数量
・割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
・前受金の保全措置の有無、その内容
・購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
・特約があるときには、その内容
【注意事項】
・消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。
・契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。
・書面の字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

4.契約書以外に注意すること(禁止行為)

特定商取引法は消費者(お客様)を守るための法律なので、事業者(サロン)側に「こういう行為はしてはいけません」と決めています。
代表的な行為をお伝えしますので、営業トークをする際や契約をする際にご注意くださいね。

【禁止行為】
①誇大広告の禁止
②契約を解除させないために事実と違うことを伝えること
③営業トークの際、わざと事実を伝えないこと
④契約を締結する際や、解除させないために、お客様を脅かして困惑させること

こういった行為をした場合、お客様は契約を取り消すことが出来てしまいます。
お客様には真摯に説明をして、あなたのサロンの技術を遺憾無く発揮してください!

5.特定商取引法に違反した場合

契約書を渡さなかった場合や、禁止行為をしてしまった場合には、下記の処分・罰則を受けることになります。

【処分・罰則】
●行政処分
・業務改善指示
・業務停止命令
・業務禁止命令
●刑事罰
・罰則の対象
 ※罰則:懲役または罰金、もしくはその両方が科されます

行政処分を受けた場合、店名が公表されてしまいます。
サロンの信用に大きな傷がつく事態となり、お客様が離れていく危険性がとても高いです。
実際に処分を受け店名が公表されたサロンが、立ち直ることができず倒産・廃業となるケースもあります。
エステティックサロンに限らず、お客様と密接に関わる事業では、お客様からの信頼こそ大きな財産です。真摯に説明を重ね、高い技術を提供するためにも契約書や禁止行為についてしっかりと把握されることをお勧めします。

6.クーリング・オフと中途解約のルール

契約を締結した後、お客様から「やっぱりサービスを受けないことにしました」と言われることもありますよね。
せっかく頑張って営業したのに、お客様からそう言われるとがっかりしてしまいますし、できれば契約を続けてほしいと思うのはサロンを運営する皆様の当然のお気持ちだと思います。
ですが、契約を無理に続けさせようとすれば先ほどのように重い処分や罰則が科される場合が有りますよね。
また、特定商取引法ではお客様からの「やっぱり止める」という主張をできるだけ認めるためのルールも設定されています。
お客様からの申し出をきちんと対応するためにも、「クーリング・オフ」「中途解約」のルールについてもぜひ押さえておいてください。

クーリング・オフはすっかり私たちの生活に浸透した言葉だと思います。
ただそのルールは意外と曖昧に覚えている方が多いのではないでしょうか。特にサロン側はそのルールをしっかり把握して誠実に対応することがサロンの信用に繋がります。
クーリング・オフと中途解約のルールについてみていきましょう!

(1)クーリング・オフ

たとえ契約書を交わした後でも、お客様は契約書を交わした日から数えて【8日間以内】であれば、書面を送ることで契約を解除することができます。
これをクーリング・オフと言います。
※書面=どのような形式のものでも大丈夫です。ただ、確実にクーリング・オフするためには、特定記録郵便や内容証明郵便を利用することを推奨いたします。

クーリング・オフをお客様に行われた場合、既にサービスを提供していてもその代金の支払いを求めることはできません
もし事前にエステコースの料金を支払ってもらっていた場合には、その全額を返還する必要があります。

(2)中途解約

クーリング・オフの期間を過ぎてから、お客様から契約を解除したい(「やっぱり止める」という申し出)をすることを中途解約と言います。
サロンとしては「え、今更?!困るなぁ」と思うかもしれません。
ですが、これも消費者(お客様)が特定商取引法で認められた権利です。サロンとして適切に対応しましょう。

中途解約の場合には、サロンがお客様に対して違約金を請求することができます。
ただし、違約金の上限は法律で決まっています。
請求できる違約金の上限金額は
「2万円または契約残額の10%のいずれか低い方」
です。
もしこの金額よりも多く、既に料金を受け取っている場合には返還が必要となりますので、ご注意ください。

7.今日のまとめ

文字の多い記事だったので、今回の記事を簡単にまとめますね。

脱毛サロン記事まとめ

エステティックサロンは美容業界の中でも特にお客様の肌に直接触れることが多く、金額も高額になりやすいです。
ぜひ皆様にはこれまで通り真摯にお客様と向き合ってください。
そのために、どのような法律でどのような書面を用意しなければならないかを知ることはサロンを守るうえでもとても大切です。
皆様のサロン経営の一助となれましたら幸いでございます。

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行政書士法人 全国理美容コンサルティング
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