一人称の罠(小説の作法)

 一人称の罠っていうか。人称で分類することの罠ですね。
 私はこの「人称」がクセモノだと思ってます。「人称」って捉え方をするとどうしても、「一人称」「二人称」「三人称」って、別物みたいになっちゃうでしょう。
 でもそうじゃないんです。全部が別物ってわけじゃない。
 人称と視点の関係をきちんとおさえておかないと、頭の中がこんがらがって、あー、もう、わかんない! ってなります。

 小説書き始めて、ある程度経ってる。今まで結構たくさん書いてきました、という人の文章を読んでいても。
「これは視点が飛びすぎ。わかってないな」っていうの、結構あります。
 これでは、中身が面白くても台無しです。
 視点に問題があると、まず、選考では下読みで落とされます。

 プロを目指してなくても。視点が揺れてるのはよくないです。
 読んでもらった人から、話は悪くないんだけど、「なんかわかりにくい」とか「話に入り込めない」とか「人物に感情移入しづらい」とか。
 そんなこと言われる人は、人称、視点に問題があることが多いです。
 ぜひ、正しく理解して、自分の文章を見直してほしい、と思います。

 小説の書き方的なやつを読んでもわからなかったが、これを聞いてわかったぞ、という人が過去にいますので。
 実践的、わかりやすい説明ではないかと自負しております。わからなかったらすみません。ぜひその場合は、質問ください。できる限りお答えします。

■さて、まずは一人称。

 一人称なら簡単だよ。オレは、私は、吾輩は、拙者は、ってやつだろ、わかってるから。って思った方。
 そうなんですが。
 じゃあ、その場合の視点ってどこですかね?

 簡単ですね。視点はオレです。
 カメラがどっかからオレを撮ってるんじゃなくて、オレが世界を見ています。
 これ、最近はyoutubeなんかで、「自分のおでこにレンズつけて撮ってアップした」って画像が多いから、イメージしやすいんじゃないでしょうか。
 あのレンズに映った映像の描写&主人公の状態や感情なんかで物語が綴られてるのが一人称ですね。

 では、ケンという男性を主人公にした物語をどうぞ。

 オレは歩いている。信号が赤になる。片側二車線の交差点。横断歩道の向こうの人が手を振っている。友達のハナコだった。え、なんでこんなとこにあいつがいるんだろう、とオレは思った。あいつは、週末は旅行に行くって言ってたのに…。
「ケン! 偶然だね!」
 信号が変わると、ハナコが笑いながらオレのほうへ走ってきた。

 適当に考えた文です。これは誰がどう見ても、一人称です。
 では、これが三人称だとどうなるか?

(ここまで無料:1045字 このあと有料:残り2252字 ※改行と空白は除く)

ここから先は

2,313字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?