あの宮崎駿監督でさえ取材をする(小説の作法)

 『もののけ姫』を作る為に、ジブリの皆さんは屋久島へ行ったと聞きます。
 宮崎駿監督は、凄い才能をもっています。しかし、素晴らしいアニメを描く能力があっても、ゼロからじゃ作れないわけですね。
 ――いや、ゼロからじゃないんですよ、考えてみると。ナウシカを作ってるから、ああいう森的なものは描けるはずなんです。
 だけど、「まだ足りない。取材が必要だ。」と判断されたんですね。
 取材なしでは描けなかった。彼ほどの人物であっても、です。

 取材というのは、現地に行くことだけではありません。
 人から話を聞いたり、本を読んだり、音楽を聴いたり、料理を食べてみたり、そういうの全部が取材です。情報を取り入れる。知る。理解する。そういうの全てひっくるめて「取材」です。「勉強」って言う方もいます。

 アニメに限らず、マンガも小説も、作家さんは、とにかく取材熱心、勉強家です。私が接した数名の方もそうでした。編集者さんもそう言います。
「すごいな、と思える作家さんは、みなさんきちんと勉強していらっしゃる方が多いですね。」って。
(えー、ライトノベルなんてたいして取材しないで書けるでしょ、と思われる人いるかもしれませんが。
 たとえば四十代男性がイマドキの十代の娘を描くんですよ。相当調べてますよ。
 あとは「名古屋在住なのに渋谷の話を描く」「東京生まれなのに今度の作品の舞台は田舎」なんてこともあり。やっぱり調べないといけない。)

 いや、ほんと凄いです。
 たとえば「江戸時代の機織り娘」を書こうと思ったら、その地方のその時代のことだけじゃなくて、日本の機織りの歴史のみならず、世界の機織りの歴史、現在の機織り機械、工場、布の文化、糸の流通経済――。
 ええ!? そんなの作品内に絶対使うわけないでしょ、ってことまで調べあげ、学ばれている。

 最近は出版不況だからか、そこそこ売れてる作家であっても、出版社がバンバン取材費出してくれるなんてことはないそうです。編集者さんもたくさん作家を担当して大変、資料集めは頼りっぱなしってわけにはいかない。
 そんななか、お金も労力も使って取材する。
 なぜか。理由はただひとつ。そうしなければ描くことはできないから。

 さあ、みなさんも取材しましょう。
 といっても、時間とお金の制約があります。
 西洋風の物語を書きたいからって、現地へ行くのは難しくても。
 映画を見る、旅番組を見る、親や友達、先生、図書館だのyoutubeだの、使えるものはいっぱいあるはずです。

 一生懸命書いてるのに何がいけないの? と思っているあなた。
 一生懸命、取材して、勉強してますか?
 想像や、ちょこちょこってネット検索した知識なんて、絶対バレる。本当ですよー、怖いですよー。

 何か自分の中にないものを描こうと思ったら、取材、勉強が必要です。
「ファンタジーを書いてる。姫は城に暮らしているんだけど、実は城の内部をまったく知らず、想像できていない」
 そんなあなた。編集者さんや作家さんは、そういうの見抜きますよ。
 読者もね、見抜く人は、見抜きます。
 取材しないとどうなのか? どの辺が見抜かれるのか? っていう具体例はまた後日、載せようと思います。

(1234字:無料)

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