西表島の神々

西表島から東京に帰ってきて、1週間が過ぎたころ、
渋谷のスクランブル交差点を渡りながらふと思い出した。

あなたの悠々と優雅に水中をすべる姿を。
西表の海に住む亀の姿をした神々を。

そして、憧れるのです。
交差点の真ん中で、群衆の一人と化したちっぽけな私は、
佇んでいるだけで存在感あふれるあなたのようになりたいと。

そして、恋焦がれるのです。
都会の灼熱の太陽の光に肌を焼かれながら
無機質なアスファルトと次第に心が一体化していく自分を見失わずに、
躍動感あふれるあなたのように生きたいと。

友達とビール片手におしゃべりに興じながらも、
ぽっかりと空いたガランドウの心を
手持無沙汰に戸惑う私は、
きっとあなたを愛おしく思うことでしょう。

あるがままの自分を受け入れ生きるあなたの姿を。
どんどん仕事に忙殺され焦り追われる私は、
何度もあなたを思い出すことでしょう。

毅然と淡々と生きる、あなたのようになりたいと。
人にも物にも事にもとらわれず、惑わされず、
何が起きても、どっしりと岩のように動じない心を重しに
悠然と泳ぐあなたのようになりたい。

また、来年会いに行きます。
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カメラマンの星野道夫さんがエッセイ「旅をする木」で
アラスカのヒグマを都会の真ん中で時々思い出し
今、東京で自分が生きている同じ時間にあのヒグマが
生きていることが不思議だった、と書いていて、
発想を得ました。

ゆったりとした時間を過ごす
大自然の真ん中に生きる野生動物たちの姿は、
毎回、東京に帰ってきて次第に忙殺され何も感じなくなっていく
自分の心に密かに生きていて、私を取り戻す存在になっています。
だから、常に楽しく躍動感ある人生を歩めるのかもしれません。
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