変わらないもの
「変わらないね、アンタは」
レンズの向こう側で目をほそめ、ふわりと笑う彼女とは
小学生のころからの付き合い。
もう3年ほど連絡をとってなかったけれど、「大学を卒業する前にもう一度会いたい」と思いつきで連絡をしたら、すぐに会うことが決まった。
久しぶりに会うというのに、昨日の続きのように話が盛り上がる。
息がぴったり合って、会話のテンポも良い。
地元から都会に出て、スターバックスでお茶をしながら
会わなかった期間の出来事をお互いに話す。
私たちのお決まりのコース。
彼女は昔から勤勉で、高校からは偏差値の高い学校に通っていた。
大学では中国語を専攻し、留学もしたらしい。
「就活はね、語学を生かしてもいいんだけど、広告関連の仕事に応募しようと思ってんだ。」
話をきいていたら、なんだか彼女がとても遠い存在に感じた。
「なんかすごい、知らないうちに大人になったね」
「そうかな?そんなに特別なことはしてないんだけどね。それより、アンタはこの3年なにやってたの?」
「ん?私はね……」
***
この3年間でいろいろなことがあった。
大学での勉強についていけずくじけそうになり
身についていないフランス語を使って、アジアの学生と交流をするためにモンゴルへ行った
付き合っていた恋人には大切にしてもらえず、べつの女の子に乗り換えられ
バイト先では、お客さんからストーカーされたりもした。
たくさんの経験から学びがあって、落ち込んでは立ち上がることを繰り返した。
あらゆる人に支えられて、意見をもらって
考え方だって変わったと思う。
今までの私とは違う……。
何度も荒波を乗り越えて、前に進む船のような感覚。
1つ波を越えるたびに、"大人"になっているつもりだった。
しかし、彼女から見た私はそうではないらしい。
「――っていうことがあってね、でもここは冷静に対処しようと思って我慢したの。」
「ふふふ。そうかー。なんか昔から変わらないね、アンタは」
「え?なによいきなり。結構大人になったと思わない?」
「全然変わってない。安心したわ」
「なによー」
「まぁまぁ、これからもそのままでいてよ。その方がいいから」
「いいや、私はカッコイイ大人の女性になるの!キャリアウーマンになるんだから」
「それは好きにして」
「もー、話ちゃんと聞いてってば!」
風が少し冷たくなったころ、彼女とは別れた。
少しは変わったと思ったんだけどな……。とつぶやきながら、帰りのバスを待つ。
考えても答えはでなかった。
「誘ってくれてありがとう。また会おう」
彼女から連絡が入り、今日会えてほんとうによかったなと胸がいっぱいになった。
ふと、学生時代に「また明日」と帰り道で別れるときの感覚を思い出した。
つぎに彼女に会うのは、何年後だろうか。
そのときまでに話すネタを増やしておかないと。と思いながら、バスに乗った。
webライター/元(現)ダメンズウォーカー 辛い恋愛をやめて、女性が美しく気高く生きられるような情報や クスッと笑って心温まる出来事を発信中。たまに博多弁。アイドルとアニメが大好き。