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内製化や外注など業務の実施形態の分類と使い分け

内製化や外注など業務の実施形態について、IT業界にいる私の目線で分類、使い分けを考えてみたのでシェアします。

業務の実施形態の分類と特徴

業務の実施形態を分類してみました。

内製

自社で業務を行う内製は、さらに2つのパターンに分けられると考えます

  • 中央集権型内製
    … 専門の部署が存在し、その業務が一か所で行われる形態です。

  • 自動化・セルフサービス化
    … システムが必須となる業務の形態で、業務を特定の部署が一括で請け負うのではなく、各社員がシステムを利用して、自分で申請を行ったり、自動で行われるようにする業務です。なお、この形態であってもシステムの管理などは必要なので、その部分に中央集権型内製の要素は残ります。

外注のパターン

業務を自社の従業員以外に実施させる外注は、さらに2つのパターンに分けられると考えます。

  • アウトソーシング・業務委託型(請負・準委任契約)
    … 専門知識を持つ外部の業者に委託する形態です。

  • 人材補填型(派遣契約)
    … 派遣業者から人材の補填を行い一次的な人材不足を補填する形態です。委託先の社員は委託元の管理化で業務を行います。

なお、ここで契約形態を前面に出していないのは、実態として、業務委託であっても委託元のオフィスに常駐し、委託元の社員の指示に従って業務を行う、実質的には派遣契約的な動きをすることも珍しくないためです。実態として委託元の管理化で業務を行うのか、移譲されているのかで分類をしています。

内製 or 外注

内製と外注の妥当な比較軸は下記2点だと考えます。

  • 社内にノウハウや専門知識がたまるか
    (内製は〇、外注は×)

  • 人材需要の変動に対するリスク許容度
    (内製は×、外注は〇)

この手の比較において、コストや業務の品質を上げるパターンがありますが、それは一概には言えないと思います。

コストについては、外注の方がコストを抑えられるかもしれませんが、委託元にその業務に関する知識がなければ価格が適正かを判断することができず割高なコストを払うことも珍しくありませんし、内製化することでノウハウがたまり業務が効率化され、それにより将来コストを抑えることができるようになるかもしれません。

品質についても、知識ゼロから社員が自分で勉強するより専門業者に任せた方が高まる場合もあれば、自社業務をよく知らない外部の業者に任せた結果品質が下がるかもしれません。

そのため、コストや品質については場合によるとしか言えず、具体的な業務にのレベルまで落ちた後で、どの方法でやる場合はどっちが高い・安い、品質が高い・低い、という議論ができると思います。

使い分け

現時点で私は次のように使い分けるべきだと考えています。

コア業務

利益を生み出す・競争力の源泉となるコア業務については、明らかに左上の中央集権型がよいでしょう。この領域ではノウハウや専門知識を蓄積する必要があります。

また、人事などのバックオフィスについてもここになりえます。採用や教育といった重要な領域はこの形態で行うべきでしょう。一方、住所変更、休暇申請などの定型業務は後述の非コア非専門業務 = 単純作業の領域に押しやるべきでしょう。

非コア専門業務

非コアかつ特定の領域の専門知識が必要な業務、特に業界全体で共通の基準があるような法律・監査対応といった業務は、アウトソーシング・業務委託型が効果的と言えます。

非コア非専門業務 = 単純作業

残った領域である、コア業務でもなければ、特別な専門知識が必要なわけでもない、行ってしまえば単純作業については、右側の二つの自動化・セルフサービス型と人材補填型をコストに応じてうまく使い分ける必要があると考えます。

この際、上述のように、具体的な業務に応じてどちらかコストメリットがあるかを判断する必要があります。

最近は、定型業務はシステムで自動化しよう!といった風潮が強く、その代表格としてRPAやノーコード・ローコードプラットフォームがもてはやされていますしかし、実際にはこうしたシステムは開発コスト、運用維持コスト、統制コストなどがかかるため、業務の発生頻度や、業務の変更頻度などによっては最適ではありません

そこで、昔ながらの人材補填型も重要な選択肢です。業務の発生頻度は低いが、対応が必要な業務や、頻繁にルールや法律が変わるような領域では、システム化しているとそのたびに改修コストがかかりますが、人手でやっていれば、ある程度柔軟性を保つことができます

コア業務でも左上に振り切れない事情

もう一つ言及しておくべきことは、コア業務であっても左上に振り切れない事情があるということでしょう。

アメリカのテック企業では、コア業務・事業の成長にために一気に人を雇い、成長か鈍化したり市場状況が悪くなったら整理解雇を行います。

ジョブ型雇用が一般的なアメリカではこれは簡単ですが、メンバーシップ型雇用が一般的な日本では、仮にコア業務の成長が鈍化し人材の余剰が生まれたとしても、簡単には解雇できず、他の職種で活用することなどを求められます。そのため成長期であっても簡単には大量雇用ができません。

日本は解雇が難しいといわれてしまうのか。その理由は、法律ではなく、やはり日本の「無限定な」雇用慣習にある。本来解雇とは、「仕事がなくなる(整理解雇)」か、「その仕事が全うできない(能力解雇)」ときに起きる。欧米的な職務限定型雇用であれば、自分が契約しているポストがなくなるか、それが全うできなければ、解雇の事由となりうる。だから、本来は、解雇が簡単なのだ。逆にいえば、それが理論上たやすいがために、欧州諸国では厳罰を法律化して制限している。一方の日本は、職務を限定していない。とすると、「現在就いている仕事がなくなっても、他に異動させることで対処すべし(=整理解雇が難しい)」となる。同様に、「現在就いている仕事が全うできないなら、他の仕事に異動させろ(=能力解雇が難しい)」ともなる。

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その結果、コア業務であっても左上の形態に振り切れない力学が働いている、ということも抑えておく必要がありそうです。

以上です。


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